痰のアセスメント(貯留部位の特定)5つのポイント
- 公開日: 2014/5/25
「痰が多量にあるのはわかっているのに、吸引してもあまり引けない」という経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。アセスメントが苦手という人は、特に痰の貯留部位の特定が難しいと感じているようです。
聴診にばかり頼らず、触診や視診も合わせて総合的にアセスメントを行うことが大切です。
今回は痰のアセスメント5つのポイントについて紹介します。
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1 肺野をきちんと理解する
患者さんにぜろつきがあり、痰の貯留が疑われるとき、貯留部位の特定を聴診のみで行っていませんか?
聴診だけでなく、合わせて触診や視診を行うことで、痰の位置をより正確に確定できます。そのとき、大切なのは肺野をきちんと理解しておくことです。
少なくとも、前面から上葉・中葉・舌区、後面から下葉というように、体表面から把握できるようにしておきましょう。
肺の区分
胸部の体表解剖(簡便法)
2 触診で痰の位置を把握する
触診の際には、手のひら全体で左右の胸郭をしっかり押さえます。
呼吸に伴う胸郭の動きを手のひらで感じ、動きのタイミング、拡張の度合い、左右の差を安静時と深呼吸時で確認します。
通常の胸郭の動き(吸気時)は、上部肋骨は前に動き、下部肋骨は横に動きます。
痰が貯留している肺野では、胸郭の動きが少し遅れて感じます。
気道に痰が貯留していれば、それに伴って振動が胸壁へ伝わるため(ラドリング)、これも確認します。
3 視診では、呼吸パターンを把握する
触診と同様、視診でも胸郭の動きがスムーズに行われているか、また左右差や動きの遅れがないかなどを確認します。
無気肺の場合は、肋骨の動きが悪くなります。
また、正常な呼吸の場合はあまり使われることのない頸部の呼吸補助筋(胸鎖乳突筋、斜角筋群など)を用いた呼吸になっていないか、吸気時に肩が上っている(鎖骨上窩の陥没)といった努力呼吸が行われていないかを確認します。
さらに、呼吸数や呼吸パターンの変化を見逃さないようにすることも大切です。成人の正常な呼吸回数は14 ~ 20回/分、呼吸パターンは、吸気:呼気=1:1.5 ~ 2.0ですが、痰により気管が狭窄したり、閉塞したりすると、呼吸回数の増加や、呼出に時間がかかるようになるため、呼気の延長が認められるようになります。
4 正常音を知っておく
聴診器で上から下に向かって、頸部・前胸部・側部・背部の順に、左右を比較しながら、
- ●音が聞こえる場所
- ●音の強さ
- ●音の性状
を聴いていきます。同一部位で最低2呼吸分を聴取します。
呼吸音の聴取位置
正常な呼吸音の特徴:気管支音
正常な呼吸音の特徴:気管支肺胞音
正常な呼吸音の特徴:肺胞音
5 副雑音で痰の性状を予測する
グーグーといういびきに似た音(ロンカイ音)が頸部気管支から胸骨縁周辺で聞こえる場合
中枢に近い気管に粘稠度の高い固い痰が存在します。
ブクブクという水泡のような音(コース・クラックル)が肺野全体で聞こえる場合
気管支に粘性の低い痰が存在します。
痰の貯留によって副雑音が発生している場合、痰を喀出すると、副雑音が消失し、肺胞音が聴取できるようになります。
しかし、それでも呼吸音が減弱したり、消失している場合は無気肺になっている可能性も考えられます。
(『ナース専科マガジン2014年6月号』より改変利用)
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