出題基準から予想する第112回国試|直前予想

第112回の国試が目前に迫りました!
看護師の国家試験は、改定された出題基準に基づいて出題されています。
そこで、第112回の出題基準にもとづき、全10科目を「ナース専科」が予想します。
国試直前の勉強のまとめ方についてもご紹介します。
各科目の出題傾向と勉強方法
必修問題
看護師国試における「必修問題」は、看護基礎教育を修了した段階で、備えているべき基本的な知識・技能のなかでも、「必ず修得しているもの」を問うものです。社会の変化の影響を受けにくく、今回の改定においても大きな変化はありませんでした。
そのうえで必修問題で頻出となるのは、人体の基本的な構造や基礎看護技術に関する問題です。
特に今回の出題基準の改定では「感染症」について強化しています。感染防止対策の基本技術についてしっかり復習しておきましょう。
また、最後にざっと過去問を見直しておきましょう。「必修問題」は、国試全体の領域を網羅しているため、全体を見直すことで国家試験の出題範囲の概要を理解することができます。
過去問を見直すときには、問題文や解説文に含まれる言葉の意味も、わからないものがないように確認してください。これをやると、一般問題・状況設定問題を理解しやすくなります。「必修問題」は、本番直前まで見直しを反復しておきたいものです。
人体の構造と機能
「人体の構造と機能」は、看護基礎教育における「解剖学」「生理学」「生化学」「微生物学」などに相当する重要な科目です。
今回の出題基準の改定で、「人体の構造と機能」は、「疾病や治療を理解するうえで必要となる知識」を出題範囲とすることが強調されました。出題範囲がかなり絞り込まれたことになります。
特にこれまでも、日本人の死因の上位である「心疾患」「脳血管障害」「呼吸器疾患」に関係する知識は毎回問われてきました。
「人体の構造と機能」を勉強する上で重要なのは、人体の構造を図として理解していることです。最後にまとめとして、簡単でいいので、脳や心臓、呼吸器、肝胆膵などを描いてみましょう。機能についても図示できることが重要で、図示できないものは自分がわかっていないことがわかります。
体循環と肺循環、ホルモンのフィードバックシステムなどの動きを描けますか?
「人体の構造と機能」については、国試の直前まで基礎トレーニングのつもりで、毎日の学習の最初に組み入れることが重要です。
疾病の成り立ちと回復の促進
皆さんが最も苦手とする科目ではないでしょうか。特に「疾病の要因と生体反応」、「疾病に対する診断・治療についての基本的な理解」は、できる・できないがはっきり分かれます。
「疾病の成り立ちと回復の促進」は「人体の構造と機能」と関連性をもたせてあるので、「人体の構造と機能」の理解が不十分な場合は、「疾病の成り立ちと回復の促進」に必ず響いてしまいます。
特に薬物療法は、ホルモンや自律神経系、細胞に関する知識の理解が前提となるよう作問されています。「ホルモン」については内分泌と代謝異常、「自律神経系」については末梢神経系の疾患、「細胞」については萎縮や変性、壊死など細胞の障害について見直しておきましょう。
新出題基準により新たにウイルス・細菌による全身の感染症、敗血症、帯状疱疹や蜂窩織炎などの感染性皮膚疾患などが新設されているため、確認しておいたほうがよいでしょう。
健康支援と社会保障制度
社会保障制度は少子高齢化、人口減少、世帯人数の減少を背景として、その重要度が増しています。今回の改定では、保健統計や社会保障制度の根幹(憲法第25条、社会保険・社会福祉・地域保健に関わる法律)はそのまま継続となり、一方で新たな制度や法律が追加されています。
優先的に見ておきたいのは、保健統計や社会保障制度の根幹となる制度や法律です。母子保健法、母体保護法、すこやか親子21に関する過去問題などを見ておくとよさそうです。
新しい法律や制度は出題される確率は高いといえます。地域包括ケアシステム、年金制度や健康保険法の改正、介護保険制度で重視されるようになった介護予防の視点、感染症法など確認しておきましょう。
基礎看護学
基礎看護学の出題基準は、地域包括支援システムの浸透を踏まえ、看護の対象に「地域での生活者」を含めました。看護師の活躍の場も増えたので、「看護師の役割の拡大」についても追加されています。
しかし実際の出題傾向は、これまでと変わらず、看護過程や基礎看護技術、フィジカルアセスメントに関するものが中心になりそうです。ただ感染防止対策については出題される可能性がありますので標準予防策などは確認しておきたいです。
成人看護学・老年看護学
「成人看護学」「老年看護学」ともに出題基準に大きな変更はありませんでした。
これまで「成人」では、幅広い病態・疾患が出題されてきました。状況設定問題では多くのデータを判断する問題が頻出しています。しかし反面、「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」を攻略していれば簡単に解ける問題が多いのも特徴です。
「老年看護学」も同様で、「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」の知識が役立ちます。
この4科目は特に関連性の高いひとつのまとまりとして、状況設定問題などとして出題されてきそうです。
小児・母性看護学
「小児看護学」では、社会の要請を踏まえ、出題基準に「小児慢性特定疾病患者の成人期に向けての移行期医療支援」、「学校や保育所での医療的ケア児の支援」が付け加えられました。
しかし実際の問題では、依然として、小児の発達、先天性疾患や小児特有の疾患の看護、検査や処置を受ける患児への看護が出題の中心になると思われます。また、「小児」は健康管理を行う主体が家族なので、家族への援助についても出題されてくるとともに、小児が利用できる社会保障制度についても注意しておく必要があるでしょう。
「母性看護学」では、改定によって「妊娠期の診察の介助」が付け加えられましたが、何も新しいものではありません。依然として、母性看護を取り巻く環境や社会の変遷、母性看護を語るうえで重要な概念(リプロダクティブヘルス、ヘルスプロモーション、ウェルネス、母性、父性など)を正しく理解しているか確認すること、正常な妊娠、分娩、産褥経過を見直しておくことが重要です。
「小児看護学」や「母性看護学」では、正常な発達や正常な経過を問う問題が多く、実習を通して学習してきたことを振り返るとともに、経過表や一覧表などを見直しておいてください。
精神看護学
出題基準の改定に伴い、特に社会復帰に伴う「障害者総合支援法」の活用や、多職種連携に関わる問題が重視されることでしょう。しかし同時に、精神疾患・精神症状の理解と対応、薬物療法・非薬物療法の理解、患者家族への支援が出題の中心ともなるはずです。
出題基準で強調された部分は、地域包括ケアシステムと社会資源の活用です。行政と地域との連携、地域生活支援事業、就労移行支援、グループホームやショートスティなどの社会資源の定義について確認しておきましょう。
在宅看護論/地域・在宅看護論
出題基準が最も大きく変化したのがこの科目です。変化したのは、在宅看護が在宅療養者だけでなく、家族も看護の対象としたことです。その方法として、パートナーシップやチームアプローチ、ケアマネジメントの視点が重視されています。
また、こうした視点は、今後成人・老年・小児・母性・精神看護学にも及んでいくことでしょう。
地域における多様な場での看護の役割と多職種連携も注目されており、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、介護サービス事業所、訪問系・通所系・施設系・複合型サービスなどの定義をしっかり確認しておきましょう。
看護の統合と実践
「看護の統合と実践」では、基礎から専門分野までの知識を統合して臨床実践場面で応用できる能力を問われます。応用できる能力というと、「難しい」というイメージを持ちやすいのですが、実際は看護基礎教育を修了した時点での判断能力を問うので、基礎的な問題が多いでしょう。
この科目は、臨床実践現場における状況設定問題として出題されます。過去問をしっかり学習して、問題形式に慣れていれば大丈夫です。自信をもって試験に臨みましょう。
「ナース専科」は看護学生全員の国試合格を応援しています!
保健師助産師看護師国家試験出題基準とは
保健師助産師看護師国家試験出題基準は、保健師、助産師、看護師が保健医療の現場に踏み出す際に、少なくとも備えているべき基本的な知識・技能を、具体的な項目によって示したものです。
出題基準の目的は、各国家試験の妥当な内容と範囲、レベルを確保することです。
看護師国家試験については平成12年から適用され、その後、社会の変化や 看護を取り巻く状況を踏まえて、改定を重ねられています。
この記事は、廣町佐智子先生<日本看護研究支援センター 所長>の解説を元に「ナース専科」が編集を行い作成しました。