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【連載】大切な人を亡くす子どもへのケア

第12回 社会的・心理的援助を行うMSWの役割(後編)

  • 公開日: 2011/10/4
  • 更新日: 2020/10/21

前回に続き、終末期を迎えた母親と子どもたちとのかかわりの事例から、堂園メディカルハウスの副院長であり、MSW(メディカルソーシャルワーカー)である堂園文子さんが、社会的・心理的支援を行うMSWの役割についてまとめます。


事例――最期のときに向けて、子どもたちに伝えること

8月20日、Aさんの兄と子どもたちに、医師とMSWから、「悲しいけれど、もう1週間もたないと思われる」ことを話しました。

その際、「亡くなる前のご様子」という用紙をとともに、意識や体の状態について話したうえで、「長く生きてほしいと思うより、1分1分を大切にしてほしいこと」「そのときはゆっくりと時が過ぎていくように安らかになるだろうこと」「最期まで耳は聞こえるから、優しい別れの言葉をかけてあげてほしいこと」などを伝えました。

そして、Aさんとの最期の過ごし方について、「楽しかった思い出を話したり、将来の自分の夢を話してあげるとお母さんの心が落ち着くこと」「死ぬのはいなくなるのではなく、遠くに行って見えなくなるけれど、子どもたちをお母さんはずっと見守ってくれること」「息が苦しそうに見えるのは、舌がのどのほうに下がっているためであること」「子どもたちの頬をお母さんの手に触れさせてあげると安心できること」などを話しました。

その夜、子どもたちは、お母さんへの手紙をレポート用紙に数枚ずつ書きました。

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「お母さんとたくさん話したこの数日間も、一緒にいられる今の時間もとても幸せ。私はもう大丈夫。私たちを愛してくれてありがとう」(長女)。「お母さんは本当によく頑張った。僕はお母さんから元気と勇気をもらったよ。お母さんはもう頑張らなくていいから、ゆっくり休んでね。僕も悔いのないように生きていく」(長男)。次女からは、「ママは、姿が見えなくなってもずっと私の中に生き続けてくれる…ありがとうね。大好き。ママのようになります」。

3人の手紙が枕元に置かれた明け方、Aさんは大出血により、永眠されました。

MSWには学校と連携をとる役割もある

事例のように当院では、子どもと家族が患者さんの部屋に泊まり、家族の大切な時間を過ごしてもらうことが多いです。子どもは病室から学校に通ったり、学校を休むことになりますが、パートナーを看病中の親(母親が病気の場合は父親)にとっても大変な局面ですから、MSWが代わりに学校へ子どもの状況を話しに行くこともあります。

親の入院中から、子どもにはお見舞いやお手伝いなどで精神的・身体的負担がかかるため、学校の宿題が滞ったり、疲れて居眠りするなど、目に見える変化がある子どももいます。ところが、学校の先生と話してみると、学校ではそんな姿は見せなかった、なにげなく過ごしていたということが意外に多く聞かれるのです。そのぶん、子どもは頑張っているということです。

喪が明けて子どもが登校したときの対応として、先生方にお願いするのは、「よく頑張ったね」と声をかけてほしいということです。「お母さんが心配するから、頑張りなさい」とは決して言わないでほしいということ。そして、病気や死のこと、また親との思い出を話せる雰囲気をつくることも大切です。それは、大切な人を亡くした子どもにかかわる、周りの大人の多くに言えることかもしれません。

MSWの主な役割は、社会と患者さんの生活との調整ですが、子どもをもつ患者さんに関していうと、このほかに親権の問題に関する手続きがあります。例えば、患者さんが亡くなるために、子どもの親権が別れた元夫に移ることを避けたいという意向がある場合、それを弁護士を通して文書に残しておくという必要があります。

そのほか、子どもと一緒に懐かしい場所に旅行をして、思い出づくりをしたいというような場合には、旅館などと交渉してプランをつくったりという役割をすることもあります。

介助を促せる関係づくりを一般の看護師に期待

一般病棟での看取りは、ホスピスとは異なりますから、大切な人を亡くす子どもに対して、看護師にできることにも制約があるといわざるを得ません。それでも何かしたいという看護師の方々にアドバイスできるとしたら、一つあります。

それは、お見舞いなどに訪れる子どもと顔を合わせるときには、子どもの顔を見て、必ず一言、言葉をかけていただきたいということです。「こんにちは」「お名前は何ちゃんっていうんだっけ?」「お母さん、具合よさそう?」などという声かけで、顔なじみの人として子どもが感じるようなります。ちょっとの声かけの積み重ねのなかから、ある日「お母さんに何かしてあげたいんだけど」という声が聞かれるかもしれません。

親を亡くした子どもの心に、つらい感情として後々まで残るのは、「何もしてあげられなかった」という思いです。もし病室で、子どもが手持ち無沙汰にしていたら、子どもにできる介護のお手伝いを考えてあげてはいかがでしょうか。例えば、「足をさすってあげてみる?」でもいいですし、氷しか受け付けなくなった患者さんのために、「氷を口に入れてあげて」など。

当院では、家庭用のかき氷器を置いて、お子さんにお手伝いをしてもらっています。子どもを看取りに参加させてあげることも、大切なケアの一つなのです。

(『ナース専科マガジン』2010年11月号より転載)

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