第5回 亡くなった後、口腔ケアはどうする?
- 公開日: 2013/10/6
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エンゼルケア(逝去時ケア)とは?目的・手順など
家族の意向に寄り添って最期のお別れの場面を創出する「エンゼルケア」が、多くの病院や施設で実践されるようになってきています。よりよい死後ケアにつなげるにはどうすればよいのか、よくある疑問・悩みについて、エンゼルメイク研究会代表:小林光恵さんに話を伺いました。
――死後ケア時に、口腔ケアは必須だと聞きました。その理由を教えてください。
小林光恵さん(以下、敬称略) “におい防止”のために必要です。お口の中が汚れていると、看護師のみなさんの手から離れた後(家に帰られた後)、早い段階で臭気に変わってしまうことがあるからです。ご家族が困惑なさいます。
――確かに、ご家族はおつらいでしょうね。
小林 ある事例では、帰宅後に臭気が生じて室内に広がり、かけつけたお見舞いの方に入室してもらえなかったということがありました。隙間がないマンションで、臭いが充満してしまったようです。
家族が気にしてしまったというのもあるでしょうが、口内が汚れたままだと、それくらいの臭いになってしまうこともあるということです。
――最近、病院で口腔ケアに力をいれていますが、確かに病室の匂いも変わってきました。
小林 ご遺体の口腔内は、汚れたままだとさらに強い臭気になりやすいので、口腔ケアは特に大切です。
――では、どういうケアをしたらいいのでしょうか。
小林 できる範囲で“汚れを取る”ことが第一です。それぞれの現場でできる範囲の口腔ケアをこころがけてください。汚れをガーゼで拭うなど、できる範囲で行えばいいと思います。基本的には、意識のない方のマウスケア(その中でも、汚れを取る対応)に準じて行えばよいのではないでしょうか。
――出血の心配はないのでしょうか。
小林 確かに、汚れを無理に取ろうとして、それが出血のきっかけになってしまう場合もあります。ご遺体の血液は急激に凝固因子を消費する関係などで、一度出血してしまうと止血しづらくなるようなので、なるべく刺激のないように汚れをとることが大事です。
そのために薬剤などを使うという方法もあります。例えばオキシフルやオキシドールなどの過酸化水素水は、消臭・消毒の効果もありますし、汚れも取れやすくなるようです。
――口腔ケアのタイミングも教えていただきたいです。
小林 まず、死後硬直は顎関節部分の筋硬直からはじまるということを覚えておいてほしいです。顎関節硬直は平均でいうと死後3時間後からはじまるのですが、臨終前に下顎呼吸を経た方や、急死した方などは、早ければ死後1時間くらいではじまります。
それを加味して、保清のうち口腔ケアだけは早めに行うなどの段取りの検討も必要です。硬直がはじまる前のほうが、口を開けたり閉じたりがスムーズだからです。
――早めに行うという判断は、私たち看護師で決めてしまっていいのでしょうか。
小林 はい。ただ、ナースのみなさんから、家族が到着していないのにやっていいのか、とか、在宅の場合は死亡確認をしていないのにケアをやってしまっていいのか、という声もあります。
――確かに、すぐにやっていいのか迷うことがありますね。
小林 その辺は、職場で話し合って「そんなとき、どうするか」の約束事を作っておくことが大切だと思います。家族との信頼関係があれば、「死後ケア」としてというよりも、保清行為として「お口だけ先にきれいにしておいてよろしいでしょうか」という形で進めるのもいいでしょう。
※本記事は、株式会社医学書院のWEBマガジン「かんかん!」の連載記事をもとに再構成したものです。
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