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【連載】ナースのための褥瘡ケア

第5回 体位変換&ポジショニング

  • 公開日: 2009/7/8
  • 更新日: 2020/3/26

▼体位変換・ポジショニングについて、まとめて読むならコチラ
体位変換とポジショニング


体位変換について

 第5回は、体位変換について考えます。

 私たち健康な人は、寝ているときに痺れや痛みを感じて無意識に寝返りをうち、体の向きを変えています。しかし、褥瘡発生する患者さんの多くは、痺れや疼痛の感覚が鈍麻になったり、身体的能力が低下して自力で寝返りを打つことができないために、圧迫を解除できず褥瘡発生に至ってしまいます。

 以前より、看護・介護の教科書では体位変換の頻度は2時間ごとと記載されているものが多くみられました。しかし、2時間ごとに体位変換をしていても褥瘡を発生する方もいます。逆に、3時間ごとの体位変換間隔でも褥瘡発生しない場合もあります。

 褥瘡の発生は、骨突出の程度や栄養状態、活動性などなど、対象者の身体状況と、体圧分散寝具の使用の有無や体圧分散寝具の種類によって、リスクが大きく異なりますので一概には言えません。患者さんの皮膚の状態をよくアセスメントし、発赤などができていないかを観察しながら個別に合わせたケアを工夫することが大切です。

 では、臨床現場では何を指標にケアを考えていくのか疑問が生じたときのため、ガイドラインがありますので、ガイドラインを用いて体位変換について考えてみましょう。

体位変換イメージイラスト

『褥瘡予防・管理ガイドライン』

 今年、日本褥瘡学会では、「褥瘡予防・管理ガイドライン」を発行したことは前回もお話しましたが、今回はガイドラインの中から『体位変換』の項目をご紹介します。

 ガイドラインは、臨床で生じた疑問に対して迷った時の指針ですので、ガイドラインの内容を守っていれば褥瘡の発生が必ずしもなくなるわけではありませんが、疑問が生じたときに立ち返って検討することができる材料となりますので、内容の理解をしていきましょう。

褥瘡予防・管理ガイドライン
表 褥瘡予防・管理ガイドライン

>>次ページは「CQ1:ベッド上では、何時間毎の体位変換が有効か」

CQ1:ベッド上では、何時間毎の体位変換が有効か

【推奨】
 マットレスを使用する場合は、基本的には2時間ごとに(2時間を超えない)体位変換を行ってもよい。

 海外の研究で、体位変換の時間をマットレスの種類別に比較検討したものがあります。「減圧マットレスを使用した場合と減圧効果のないマットレスを使用した場合で、それぞれ2~4時間毎の体位変換を行った結果、減圧マットレスを使用したほうが褥瘡発生は低下した。」と示されています。

上の図が減圧マットレスを使用した場合、下が標準マットレスを使用した場合の模式図

 上図を見てください。上の図が減圧マットレスを使用した場合、下が標準マットレスを使用した場合の模式図です。

 標準マットレスでは、骨の突出部で身体を点で支えており、骨の突出部に体圧が集中してかかります。減圧マットレスを使用すると、より広い面積で身体を支えることができ骨突出部に集中していた体圧を分散することができます。上記の研究では比較された2種類のマットレスにおいて、このような体圧分散効果の違いがあったものと思われます。ですので、マットレスを適切に選択することが大切になります。

CQ2:ベッド上の体位変換では仰臥位、側臥位以外にどのような体位変換が有効か

【推奨】
 30度側臥位、90度側臥位ともに行ってもよい。

 この元となった研究は、やはり海外の研究からきています。「30度、90度、仰臥位ともに褥瘡(発赤)の発生には変わりがなかった」という結果ですが、欧米人と日本人の体格が異なるため、解釈には注意が必要です。

 90度の側臥位をとると、身体の下側になった腸骨や大転子が圧迫され、褥瘡が発生してしまう危険が示唆されました。そのため、30度の側臥位を取ることが推奨されてきました。ある程度臀筋の発達した方が30度の側臥位を取れば、腸骨・仙骨・大転子の骨の突出した部位を圧迫せず、身体を保持することができるため推奨されてきたわけです。

臀筋が発達している場合

 しかし、日本の現状を見てみると、患者さんの多くは痩せて骨の突出が激しい方です。痩せた方が30度の側臥位をとると、逆に骨突出部位が圧迫されてしまうこと、痩せてたるんだ皮膚にずれの力が加わることがあり、現在はだれにでも推奨されるという認識ではなくなりました。 また、30度の側臥位は安定性がなく、安楽な体位ではないことから、患者自身が少しずつ移動してクッションを外し、好みの姿勢に戻ってしまうことは現場でよくみられる光景ではないでしょうか?

 側臥位は30度・90度などにかかわらず、患者の安楽な姿勢を保持し、褥瘡(発赤)のできない頻度での体位変換を行うことが推奨されています。 また、体位変換のクッションを用いる際にも、身体からずれにくいように、カバーに付属の布(フラップ)が付いていて、身体の下に挟みこむようにして使用できるものもあります。身体のずれを防ぐことができます。

やせている場合

 側臥位を取る際には、肩・胸郭・骨盤に捻じれが生じないように、クッションを当てます。小さなクッション一つで、背部のみを支えるとクッションの当っていない腰部が捻られ、安楽ではない状況になってしまいます。身体が捻じれていないか、ポジションをとった後に確認するようにしましょう。

クッションを用いて身体全体を支える方法

 また、細長いクッションを用いて身体全体を支える方法もあります。上手に使用すれば、頭から足まで一つのクッションで安定して支えることができます。

クッションを用いて身体全体を支える方法②

CQ3:体圧分散用具を利用する場合、何時間毎の体位変換が有効か

【推奨】
 厚みのあるフォームマットレスを使用する場合には、体位変換間隔は、4時間を超えない範囲で行ってもよい
 ※対象者が本邦の褥瘡患者とは体格も異なり、使用している体圧分散マットレスも本邦にはないものであり、安易に適用することにはリスクが伴い、褥瘡を予防することを保証しないことに注意を要する。

 2層式エアマットレスを用いる条件下で左右側臥位と仰臥位での体位変換間隔は、4時間を超えない範囲で行ってもよい。

 この推奨項目の根拠も欧米の研究データをもとにしています。

 標準マットレス使用で2時間毎/3時間毎の体位変換をしたグループと、体圧分散マットレス使用で4時間毎/6時間毎に体位変換をしたグループの4グループ間の褥瘡発生率を比較しました。

 結果は、Ⅰ度(発赤)の発生率には差がなかったのですが、体圧分散マットレスを使用した4時間毎の体位変換のグループでは、Ⅱ度(水疱・びらん)以上の褥瘡の発生が少なく、Ⅳ度(筋層に至る)の褥瘡は発生しなかったとの報告がありました。

 標準マットレスしか使用しなかった場合や、体圧分散寝具を使用しても6時間体位変換しなかった場合などは褥瘡が発生したわけです。この研究で対象となったのは欧米人なので、日本人の体格とは異なりますから、そのまま適応することはできませんが、体圧分散用具の効果が確認された研究の一つです。

 また国内の研究から、2層式エアマットレスを使用した研究で、左右側臥位と仰臥位の3方向の体位変換で、2時間、4時間、5時間の間隔で、骨突出部の皮膚発赤の有無と体圧値を比較した研究があります。

 2時間、4時間では、発赤なし、5時間では50%の方に発赤と認めたとの報告があります。

 また、同じく国内の研究から、2層式エアマットレス、単層式マットレス、標準マットを使用して比較した研究では、2層式のマットレスでの褥瘡発生が優位に低かったとの報告があります。

 痩せて骨突出の激しい日本人の身体の褥瘡発生を予防するには、独立2層式のエアセル構造のマットレスが有効です。ですので、体圧分散マットレスは使用したほうがよく、単層式よりも2層式のマットレスで、4時間を超えない範囲での体位変換を行うことが推奨されるわけです。

 しかし、この方法で100%褥瘡を防げることを保証しているのではありませんので、皮膚の観察を毎日行い、褥瘡が発生していないか、発赤が生じていないかなどを見極めることが何よりも大切なケアです。

 2層式マットレスでは、骨突出部に圧が加わったとしても、エアセルがつぶれてしまうことがないので、底付きが起きにくい構造となっています。ギャッジアップ(頭側挙上)を行う際でも、底付きが起きませんので、褥瘡発生を防止することができます。

完全独立2層式のエアセル構造のマットレス

ポジショニングの実際

 ポジショニングの目的は、褥瘡予防のみならず、筋緊張の緩和や拘縮予防などの目的もあります。

 よくご相談を受ける2つの姿勢のサポート方法についてご紹介したいとおもいます。

【仰臥位の保持】
 (円背など)円背や拘縮がある方などで、仰臥位がなかなか取れない方の相談を受けます。その際は、C型のクッションや大きなクッションを使用して、仰臥位をサポートします。

 円背や拘縮がある方が仰臥位をとることができれば、胸郭が徐々に広がって、呼吸機能を保つことも期待できます。

ポジショニングの実際

【上肢の拘縮予防】
 また、上肢に麻痺があるなどの場合も拘縮が生じることがあり、ひどくなると上肢で胸郭を圧迫することもあります。V型のクッションで上腕全体を支え拘縮を予防しましょう。

V型のクッションで上腕全体を支え拘縮を予防

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2020/10/30