在宅でのスキンケアQ&A|2024年2月開催セミナーレポート【PR】
- 公開日: 2024/5/28
在宅療養者によくみられるスキントラブルとケア
在宅で療養している人の70%以上が、なんらかのスキントラブルを抱えているという報告があります1)。内訳をみると真菌感染症、湿疹や皮膚炎、IAD(失禁関連皮膚炎)が多く、そのほかにドライスキン、皮膚の浸軟、スキン-テア、褥瘡、接触性皮膚炎などがみられます。
真菌感染症は、足や爪、陰部、殿部など人に見せたくない部位に起こりやすく、保湿をしても治らず、副腎皮質ステロイド外用薬を使うと悪化することがありますので、早めの皮膚科受診が必要です。
ドライスキンは加齢により皮脂の分泌が減り、角質層の水分保持力が低下して皮膚が乾燥して起こります。皮膚のバリア機能が低下し、物理的刺激で傷つきやすく、治りにくくなっていますので、保湿と保護が重要となります。
老人性乾皮症は、加齢による皮膚のバリア機能低下が関係しています。皮膚に浅い亀裂が生じ、白い粉状に剥がれ落ちます。膝下や腰背部に多く、強い掻痒感を伴い、掻くことでさらに炎症が悪化します。保湿剤だけでは治癒しないため、副腎皮質ステロイド外用薬を用いて炎症部分を治療していくことがポイントとなります。
失禁関連皮膚炎(IAD)は、「尿または便、あるいは両方が皮膚に接触することにより生じる皮膚炎」と定義されます。皮膚が浸軟して皮膚炎が生じ、潰瘍化することがあります。IADの標準的スキンケアは清拭・洗浄・保湿です。泡を使ってやさしく丁寧に洗い、保湿剤や保護剤使用して尿や便が皮膚に付着しないようにします。
スキン-テアは、一時的な摩擦やずれによって発生した皮膚損傷です。発生したら、ワセリンや非固着性のガーゼで保護します。感染させず、二次損傷を回避することが最も重要です。
日々の疑問を解決
スキンケアの基本は、洗浄・保湿・保護です。在宅ではどういう製品を使うとよいのか、どのようにケアをしていけばよいのかと悩むことがあると思います。セミナー受講者の皆さんから寄せられた疑問点を解決していきましょう。
Q1 低コストでお勧めの保湿剤はありますか?
A 剤形ごとの長所・短所を理解し、皮膚の状態に合っていて長く使えるものを提案しましょう。
POINT
●保湿剤には処方で入手できるものと市販のものがある
●剤形(クリーム、ローション、フォーム)の長所と短所を把握する
●保湿剤はベタベタするという先入観がある
●特定の商品名を提案するのではなく、手に入れやすく続けやすいものを伝えるようにする
軟膏は刺激が少なくどんな部位にも使えます。クリームやローションは刺激が強く、傷には適しません。使用する部位や皮膚の状態等をアセスメントし、適切な保湿剤を選択しましょう(表1)。
保湿は継続することが大切なので、使用感や入手方法、価格など、療養者のニーズにあったものを勧めましょう。医師に処方してもらう場合は、皮膚の状態や療養者の希望を詳しく伝えます。自費購入になる場合は、安価でたっぷり使えるもの、ご家族も一緒に使えるものがよいと思います。
表1 保湿剤の剤形ごとの特徴
軟膏 | クリーム | ローション | |
基剤 | ・油 | ・水と油を混ぜた乳化剤 | ・水と油を混ぜた乳化剤 ・水分量がクリームより多い |
刺激性 | ・弱い | ・軟膏に比べて強い | ・軟膏に比べて強い |
べたつき | ・強い | ・水を含むため伸びがよく、べたつきにくい | ・軟膏やクリームに比べて、べたつきにくい |
皮膚吸収 | ・クリームより遅い | ・吸収されやすい | ・軟膏より吸収されやすい |
使用に適した患部 | ・どんな状態の患部にも使える ・刺激が少なく、皮膚の弱い人にも使える |
・主に乾燥した患部に使用 ・ジュクジュクした患部、傷がある部位には適さない |
・軟膏やクリームが塗りにくい、頭皮など有毛部に適している ・ジュクジュクした患部、傷がある部分には適さない |
長所・短所 | ・保湿力が高く、皮膚を保護する | ・さらっとした使用感から夏場は軟膏からの使用変更もある一方、汗で流れやすい | ・伸びがよく、さらっとした使用感。水分が多く気化しやすいため、夏場など汗をかくときの身体にも使いやすい |
Q2 スキンケアにワセリンをよく使いますが、どう使うとよい?
A ワセリンは薄く油膜を張るイメージ。つけすぎない!
POINT
●ワセリンは石油を精製して作成しており、保湿成分は入っていない
●万能ではなく、皮膚疾患があると不向きなケースもある
●皮膚の表面に油膜を張って、皮膚の中からの蒸発を防ぐことで、適度な水分を保持し乾燥から守る
●摩擦や外部からの侵入刺激を防ぐことも期待
●厚塗りや塗り重ねは蒸発を妨げてしまい、皮膚浸軟やかゆみの原因となる
●塗りすぎない。少し物足りないかなと思う程度に塗れば十分
ワセリンは安価で刺激も少ないため、よく使われています。皮膚表面に油膜でラップをするようなイメージで、スキンケアの仕上げとして使うとよいでしょう。
厚塗りは浸軟やかゆみの原因になるので、まず自分の手のひらに伸ばし、それを皮膚に当てるようにして薄く塗るとよいと思います。寒い時期は、冷えて固くなるため、皮膚にのせて、温めて柔らかくしてから伸ばすようにしましょう。
花粉症などの目の周りのかゆみにアイクリームとして、乾いた唇にリップクリームとして使うのもお勧めです。
Q3 スキンケアで困ったとき、皮膚・排泄ケア認定看護師へ相談する方法は?
A 同行訪問やテレナーシングの活用も有効です。
POINT
●近隣病院に所属する皮膚・排泄ケア認定看護師と連携できるシステムの構築
●勉強会や講習会、セミナーに参加して顔の見える関係づくり
●病院に従事する皮膚・排泄ケア認定看護師は、在宅ケアの専門家である訪問看護師と情報交換し、在宅特有のケア介入方法やご家族への支援方法を学んでいる
●日本看護協会、日本創傷・オストミー・失禁管理学会ウェブサイトに名簿掲載
●患者さんの退院調整でかかわるときに、皮膚・排泄ケア認定看護師への相談方法を明確にする
セミナーや勉強会などに参加して、皮膚・排泄ケア認定看護師と接点をもつのもよいでしょう。日本看護協会のウェブサイトなどから、近隣の病院に所属する皮膚・排泄ケア認定看護師を調べることもできます。
患者さんの退院調整でかかわるときに、その後の連携や相談方法について関係を構築しておくとよいと思います。最近は、同行訪問やテレナーシングを活用し、皮膚・排泄ケア認定看護師と連携する方法もあります。特にストーマの管理困難例や褥瘡のケアは加算も取れますので、相談しやすいと思います。それを機会に、日々のスキンケアについても相談できるようなつながりをもてるように、働きかけるとよいのではないでしょうか。
Q4 かゆみが強い方の対応、対策は?
A スキンケアにプラスして主治医に相談して外用薬を依頼しましょう。
POINT
●かゆくて掻破すると皮疹が悪化しさらにかゆくなる悪循環
●高齢者のかゆみの大半は皮脂欠乏性のドライスキンから起こる
●かゆみを感じる感覚神経線維が表皮の角質層のすぐ下にあり過敏
●スキンケアは、湿疹以外の皮膚には保湿剤の使用を習慣化
●高温・長湯や、ナイロンタオルや化学繊維の衣類による摩擦は避ける
●加湿器・濡れタオルで室内の湿度を40~60%に保つ
高齢者のかゆみの大半は、皮脂欠乏性のドライスキンから起こります。そのため、予防としてのスキンケアは非常に有効で、習慣化できるとよいでしょう。
かゆみがあり、掻いて皮膚が傷つくと、表皮のケラチノサイトからサイトカインが放出され、肥満細胞が活性化してヒスタミンを放出、かゆみや炎症が生じます。表皮に炎症が起きるとかゆみが助長され、さらに掻くという悪循環に陥ります。かゆみの感覚神経線維は角質層のすぐ下にあるため、スキンケアはかゆみを抑えるために非常に有効です。スキンケアに加えて、入浴の仕方や衣類、室内の湿度などの指導も重要です。
発赤や皮疹がなければ抗ヒスタミン薬や鎮痒薬の外用薬が、掻爬して炎症が起きている場合は抗炎症外用薬が適応になるので、主治医に状況を伝え、処方してもらうとよいでしょう。
Q5 安価で手軽な衛生材料用品はどこで売っていますか?
A 病院や往診で処方をお願いする、または自費購入となります。
POINT
●在宅療養指導管理料を算定している場合であって、真皮以上の深度を有する皮膚欠損部位に対して創傷治癒の促進・創面保護・疼痛軽減を目的として、創傷被覆材および非固着性シリコンガーゼを3週間を限度として保険算定可能。衛生材料代(ガーゼ、絆創膏代)含む
消耗品をすべて自費購入するのは、経済的な負担も大きくなります。在宅療養指導管理料の算定条件を満たせば、保険で対応できますので、病院や往診で処方してもらうことができます。
自費で購入していただく場合は、テープなら何cm幅のこういうものが必要だと、具体的にアドバイスしましょう。最近では百円均一のお店でも創傷ケア用品を扱っていますので、選択肢を狭めないように、近隣のお店を何カ所か紹介するとよいと思います。
常に消耗品は大切に使い、なくなる前に声をかけるといった気遣いも大切です。
Q6 脆弱な皮膚を傷つけずにテープを剥がすコツは?
A テープは真上に引っ張らず丁寧に剥がしましょう。
POINT
●テープを貼るときはあらかじめ使う分をカットしておいて、中央から端に向かって引っ張らずに貼る
●何度も同じ部位に貼らなければならないときは、被膜剤を使うこともある
●テープを剥がすときは、テープを180度折り返して、皮膚が持ち上がらないように手で押さえながらゆっくりと剥がす
●より優しく剥がす場合は、剥離剤を使用する
テープは180度折り返して、手で押さえながらゆっくりと剥がします。より優しく剥がす必要がある場合は、剥離剤を使うとよいでしょう。
テープが使えない場合、購入が可能であれば、アンダーラップテープやネット包帯、チューブ包帯、弾性チューブ包帯などを使用します。四肢の場合は、ガーゼを一巻きした上から固定するなど、テープが直接皮膚に触れないよう工夫しましょう。
Q7 肥満体型の方は皮膚が擦れて皮膚障害が悪化します。何かよい方法は?
A ときどき皮膚を伸ばして空気にさらし、通気性をよくします。
POINT
●皮膚同士が密着していると、細菌・真菌が繁殖して炎症や皮膚障害を起こしやすい
●清潔にして、しっかり乾かしたあとはバリア機能維持のため保湿・保護
●炎症が治まれば少量のパウダーで余分な水分・油分を吸うのもよい
●吸収性のある布を使い、衣服は木綿とし、ナイロンなどの合成繊維を避ける
●皮膚科受診し副腎皮質ステロイド外用薬、抗菌薬または抗真菌薬クリーム処方
皮膚を清潔にし、密着した皮膚を伸ばして乾かしたあと、保湿・保護をします。余分な水分や油分を吸収するため、パウダーや吸収性のある布を使います。布のかわりに厚手のキッチンペーパーを使うのもひとつの方法です。細菌や真菌の感染症に気をつけながら、皮膚の清潔を保つことが重要です。
炎症が強い場合は、皮膚科を受診し相談するとよいでしょう。
Q8 静脈うっ滞性潰瘍の治癒と悪化を繰り返す方のケア、治療遅延によるスタッフの意欲低下を防ぐには?
A 生活環境を改善することが大切。医療者だけではなくかかわるすべての方と連携しましょう。
POINT
●足の静脈の働きが悪くなることが原因(肥満・立ち仕事・体質も影響)
●足がむくみだるくなる
●進行すると皮膚は色素沈着して硬くなり傷が繰り返しできる
●軟膏・創傷被覆材・原因の治療・入院治療〔手術/陰圧閉鎖療法(NPWT)/集中的介入〕
●日常生活をチェック。スキンケアや傷の手当を支援
●難治性潰瘍はさまざまな原因が複合的に関与するためチーム連携が重要
日常生活をチェックして、スキンケアや傷のケアを行っていきます。生活習慣を改善することが大切ですが、なかなかうまくいかないこともあります。難治性潰瘍の場合は、さまざまな要因が複合的にかかわっているため、局所ケアだけでは改善は難しくなります。担当者一人が悩んだり疲弊したりしないように、療養者にかかわる職種間で情報を共有、可視化し、ご家族も含めたチームで連携してケアにあたりましょう。患者指導用パンフレットなどを活用して業務の効率化を図りながら、看護師自身のストレスマネジメントをすることも大切です。
Q9 頭皮や顔の脂漏性皮膚炎が慢性化しています。スッキリ治すには?
A 清潔保持と生活習慣の改善が一番大事! スキンケアだけではなく、早めに皮膚科医に相談しましょう。
POINT
●脂漏性皮膚炎の好発部位は、頭皮や髪の生え際、顔、腋窩など
●原因を究明する
●生活習慣の改善を試みる
脂漏性皮膚炎を治すためには、ストレスや疲労に注意しながら、規則正しい生活と、十分な睡眠、皮膚の清潔を保持することが重要です。
脂漏性皮膚炎の主な原因は、ストレス、睡眠不足、運動不足、食生活の乱れの4つです。油っぽいものや菓子類を控えたり、皮脂の分泌を減らすビタミンB2やB6を内服することもあります。
洗顔や洗髪の際のすすぎ不足や洗いすぎも要因となりますから、やさしくしっかりと洗うよう指導します。薬用シャンプーや保湿剤入りシャンプーを紹介するのもよいと思います。紫外線も避けるようにします。
症状によっては主治医に相談し、抗真菌薬や副腎皮質ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬、ビタミン剤などの処方をお願いしましょう。
まとめ
在宅でのスキンケアでは、スキントラブルの特徴を理解し、皮膚を毎日観察することが、もっとも簡便に改善につなげる方法です。スキンケア用品は、使用感や価格、購入手段など、さまざまな側面を考慮して選びましょう。スキンケアは継続することが大切です。無理なく継続できる方法を、療養者やご家族と一緒に考えましょう。
引用文献
1)柳澤宏美,他:在宅療養者における皮膚疾患実態調査 日本臨床皮膚科医会・日本看護協会との共同事業(在宅療養者の皮膚疾患状況と対応の現状).日本臨床皮膚科医会雑誌 2007;24(3):245-52.
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