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がん患者さんへのアピアランスケアを学ぼう!|2025年2月開催セミナーレポート【PR】

  • 公開日: 2025/5/22
  • # 注目ピックアップ
  • # がんの副作用ケア

アピアランスケアとは

先生のカット

 アピアランスケアは、医学的、整容的、心理社会的支援を用いて外見の変化に起因するがん患者さんの苦痛を軽減するケアと定義されています。近年、治療を続けながら社会生活を送る患者さんが増えています。また、分子標的薬や免疫療法薬では、皮膚という見える部分に症状が現れる一方で、皮膚症状の出現は薬が効いている証拠であり、薬剤を中止することは難しく、長期間許容して共存していかなければなりません。これらの薬物療法の発達と、近年の人々の美意識の向上等を背景に、がんの治療と社会生活との両立をサポートする医療のニーズと必要性が高まっています。

がんのアピアランスケアに関する国としての取り組み

 2023年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画では、「誰1人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」1)との全体目標のもと、がん予防、がん医療、がんとの共生という三本柱が設定されました。がんとの共生の中でサバイバーシップ支援の1つとして、「拠点病院等を中心としたアピアランスケアにかかる相談支援・情報提供体制の構築」がかかげられています。これにより、対策は急速に進んでいます。例えば、横浜市と国立がん研究所センターが共同で作成した、がん患者さんが悩むことが多い髪、爪、皮膚などのケア方法をわかりやすくまとめられているリーフレットや、がん診療にかかわる医療者向けの手引きも作成されています。

がんのアピアランスケアの現状

 私の勤務する都内のがん拠点病院(都立駒込病院)も2023年11月から院内にアピアランスケアセンターを設立し、患者さんへの情報提供を開始していますが、まだまだ認知度が低く、開設後からの総受診者数はまだ40名足らずです。

 一方で、がん患者さんは今も、困っています。がん拠点病院内にアピアランスケアの相談窓口ができたことは、とても大きなことですが、メインのがん治療がひと段落するとがんの拠点病院に行く機会は激減します。しかし、髪が生えてくるといわれている時期になっても髪が生えてこない、保湿を頑張っても爪がボロボロで取れそうといった困りごとを実感するのは日常に戻ってからになります。外出や人と会うのが不安、外見の悩みだけでの診療予約は取りづらい、がんを治療している病院の医師の転勤で主治医が替わると、外見に関する相談はしにくいという意見も聞かれます。これらの実情から私は、患者さんとがんの治療病院との2者間体制ではなく、そこに町のアピアランスケアクリニックが加わる3者連携の体制がよいのではないかと思うのです。がんの治療病院ともつながりつつ、地元で不安のない生活を送ることこそが「がんと共に生きる」ことなのではないでしょうか。

クリニックでの取り組み

 私は、私が生まれる前に乳がんで乳房を全摘した母から、日常の困りごとなど、さまざまなことを見聞きして育ちました。母の胸には大きな手術傷がありましたが、縫い痕がどこの病院でも褒められるきれいな傷だと言って自慢する母を見て、傷跡が患者さんのその後の人生にいかに大事なものかを学びました。そして医師となり、傷跡の治療に携わりたいと思い、形成外科を専攻、特に乳房再建に邁進しました。2017年に乳房再建クリニックで勤務していた際、美容部門を担当することになり、傷跡を見られたくない、エステに断られたなど、デリケートな事情がたくさんあることを知り、がん患者さんの美容医療のニーズや重要性をひしひしと感じ、2024年2月、アピアランスケアと保険診療、形成外科、皮膚科を併設したクリニックを開業しました。

 当院では、主治医からの紹介状持参を推奨のもと、がんの治療に影響しないアピアランス医療を提供しています。忙しい方にも寄り添えるよう、夜間や土日も受診できるようにしています。がん拠点病院との連携を深め、学会活動などを通して仲間を増やしていきたいと考えています。

クリニックでの事例紹介

 1例目は、皮膚のくすみや色素沈着で、とても多いケースです。殺細胞性抗がん薬は、皮膚の正常細胞にもダメージを与え、バリア機能が破綻、メラニン細胞も刺激してくすみが蓄積します。EGFR阻害薬では、表皮の萎縮、分泌の抑制、汗、皮脂が出にくくなるといった症状がみられます。これらの皮膚症状には、保湿が最大の防御策であり、治療です。保湿してくださいと言うだけでなく、1FTUで手のひら2枚分など、具体的に指導することが大切です。さらに患者さんと一緒に塗ってみることで、患者さんの理解も得られますし、患者さんとのよい関係の構築や安心感を得てもらえるのではないかと思っています。

 2例目は、乳がんの術後化学療法終了から4カ月目の方で、第一足趾の爪が剥がれかかって猛烈に痛い、ほかも二枚爪で取れそうで取れないと困っていらっしゃいました。そこで爪を除去し、グラインダーで段差を削り、保湿し、食い込んだ爪にはテープ療法を行いました。3カ月後、痛みはなくなり、二枚爪も一趾を残すのみとなりました。

 3例目は持続性ホルモン療法誘発性脱毛症の方です。乳がんの全摘4年後に局所再発し、ホルモン療法を開始したところ、薄毛が進行したのです。来院時、頭頂部の地肌が広範囲に露出しており、中央部の毛髪はふわふわとした軟毛になっていました。内服と外用薬で治療し、2カ月後、髪が太くなり、地肌の露出範囲もぐっと狭まりました。

 4例目は、乳房再建後、傷跡に小さな潰瘍ができ、インプラントに到達するのではと心配になって来院された方ですが、潰瘍の治療により1カ月後には閉鎖しています。また、ドレーン孔の肥厚性瘢痕の強いかゆみで来院した方は、「メインの傷ならまだしも、小さい“血抜きの管の傷”は主治医には言いづらい」とおっしゃっていました。切って縫い直してほしいと希望されましたが、縫い直しの保険適用の条件に合わないため、ステロイドテープやリザベンなど、保険診療での治療を行いました。

 5例目は皮膚腫瘍、できものです。どこの皮膚科でも対応できる症状なのですが、当院まで来られたのは、皮膚転移が心配だからとのことでした。またウィッグをとらなければ診察できない部位や手術痕の近くにあることと、疾患を知られたくないため、近所の医師には見せにくい、といった事情で来院されました。

 最後は美容医療です。旅行に行く、または会社に行くから気合を入れたい、綺麗になりたいと、医療脱毛、フォトフェイシャル、ピアスといった施術を希望される方も来院されます。このような前向きな一歩のための相談に触れると、私もとても嬉しくなります。

アンケート調査から・今後の展望

 都立駒込病院との共同研究の調査では、たった1回の診察でも、症状への不安が軽減していました。また症状が生活に及ぼす影響についての結果からは、緊急性はないが影響がないわけではなく、どこかで解決したいと思っている様子が見えてきました。さらに再度受診したいか、同様の症状の人に受診を進めるかについては、かなりの高得点でした。

 アピアランスケア医療は、がん治療中、治療後の方を対象とした皮膚に関する医療の提供を行う新しい分野ですが、ニーズは高く、専門のクリニックとして、やりがいに満ちた分野だと思います。居心地がよく、町医者といつものスタッフが、行き届いた心遣いと安定感を提供し、人生の伴走者として寄り添う場所を目指しています。自分らしさを追求する患者さんは、未来の自分だと思い、日々勉強させていただいています。そしてアピアランスケア医療を、より専門性のある分野として高めていきたいと思っています。

引用文献

1)厚生労働省健康局がん・疾病対策課:第4期がん対策推進基本計画について(2025年3月18日)https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001091843.pdf




敏感肌にも使えるミノンシリーズ

ミノン全身シャンプー泡タイプ

第一三共ヘルスケア_ミノン全身シャンプー泡タイプ


顔、身体、頭が一本で洗える泡タイプの全身シャンプー。バリア機能を守って洗う「植物性アミノ酸系洗浄成分」配合。弱酸性、無香料。


[医薬部外品]販売名:ミノン全身シャンプーW
500mL、400mL(つめかえ用)



ミノン全身保湿ミルク
ミノン全身保湿クリーム

第一三共ヘルスケア_ミノン全身保湿ミルク


敏感肌、バリア機能が乱れやすい肌を支える全身に使える「塗るミノン」。広い範囲のケアにはべたつかないミルクタイプ、乾燥のつらい部位にぴたっと密着感のあるクリームタイプ。


[医薬部外品]販売名:DSミルクz
200mL、400mL、320mL(つめかえ用)
販売名:DSクリームz
90g


詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/


がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ


第一三共ヘルスケアのはだカレッジ画像

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hada-college/hcp/

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