教えて! 在宅での保湿剤の種類と使い分けとアセスメントのポイント【PR】
- 公開日: 2023/1/24
知っておきたい在宅での保湿剤を使い分けと、皮膚のトラブルを発見した際にはどのようにアセスメントを進めていけばよいのかを解説します。
保湿剤だけでもワセリン、ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)といった種類が豊富で、軟膏状、フォーム状、スプレー状と形状も違うので、どう使い分けるとよいか教えてください。
保湿は長く継続していくことが求められます。保湿剤の特徴を理解したうえで、使用感、価格、入手のしやすさなども考慮して使い分けましょう。
保湿剤の特徴
保湿剤には、皮膚が保持する水分の蒸発を防ぐエモリエント効果と、水分を取り込んでとどめておくモイスチャライザー効果があります。エモリエント成分としてはワセリンやオリーブオイルなどで、モイスチャライザー成分にはグリセリンや尿素系、ヒアルロン酸などがあります。
剤形としては軟膏、クリーム、ローション、フォームといったものがあります。さらに軟膏は油脂性軟膏と水溶性軟膏、クリームは油中水型のものと水中油型のもの、ローションは乳白色の乳剤性のものと透明の溶液性のものに分かれます。フォームは泡で出ますがもともと液剤なので、時間が経つと液状に戻ります。それぞれに被膜性や展延性(のび)、皮膚への刺激、べたつき感などに特徴があります。
軟膏は保湿力や皮膚を保護する作用に優れ、刺激性が低いのでどんな部位にも使えますが、べたつき感があります。クリームは、乾燥した部位に使用します。じくじくしている部位や傷がある部位には適しません。のびや使用感がよい一方で、汗で流れやすいのが特徴です。傷の部分には、クリームが入っていってしまうので避けたほうがよいでしょう。ローションはクリームよりのびがよいので、頭皮など毛があるところにも使いやすいと思います。また水分が多くて気化しやすいため、汗をかいても保湿成分がとどまってくれます。
代表的な保湿剤はワセリン、ヘパリン類似物質、尿素系に大別されます。ワセリンは皮膚の表面に膜を張って水分の蒸発を防ぐことからエモリエント作用に優れ、刺激が少なく、安価で手に入りやすいものの、べたつき感があります。ヘパリン類似物質は特にモイスチャライザー作用に優れ、ワセリンと比べても水分保持時間が長いのですが、かなり高価です。尿素系は皮膚に浸透して水分を保持するモイスチャライザー作用に優れ、特にかかとなど角質の厚い部位への使用に適しています。その一方、角質が薄い部分ではピリピリとしみるような刺激を感じることがあります。こういったことを考慮するのが使い分けの注意点となります。
使い分けの考え方
保湿剤の選択は、使っている人の使用感を一番大切にします。自分で塗れない場合は介護者のやりやすさ、そして価格も考慮します。保湿は継続することに意味がありますから、まずは本人が一番使いやすいものを1本長く使ってもらうことを考えます。もう少し熱心な場合は、季節によって使用感で変えてみたり、部位によって使い分けてみてもよいでしょう。スキンケア目的のものなら皮膚科以外でも処方してもらえます。一般にワセリンが処方されることが多いのですが、ワセリンは使いにくいという場合は、医師に使用目的や在宅療養者とご家族の要望を伝え、ヘパリン類似物質を処方してもらったり、それが難しい場合は市販品を提案したりしています。
訪問看護を始めたばかりです。皮膚トラブルが発生した際にはどうアセスメントし、どのようなことに気をつけながらケアをするとよいのでしょうか。
トラブルのある局所だけではなく、全身を系統的にアセスメントしましょう。
全身を系統的にアセスメントする
在宅で療養している人の70%以上が皮膚トラブルを抱えていると報告されています1)。多いのは真菌感染症、湿疹や皮膚炎、IAD(失禁関連皮膚炎)です。
お尻が赤い、ただれているといった皮膚トラブルを見つけたとき、その部位をどうケアするか、診察は必要かなど、局所に関する対応にとらわれがちですが、まず全身を系統的にフィジカルアセスメントすることが基本です。排泄状況やおむつ交換の頻度、皮膚の清潔、着衣など、全身の状況や生活習慣の情報を集め、それらの関連性を紐解いていくと、ケアのヒントや答えが見つかることがあります。
在宅では、ご家族や介護者がよかれと思って行ったスキンケアが間違っていて、皮膚トラブルにつながってしまうことがあります。「清拭は熱いタオルでするのが気持ちがよい」と考えている人がいますが、熱いタオルでゴシゴシ拭けば皮脂膜が取り除かれてしまいますし、加齢とともに皮膚感覚が鈍くなることもあり、もっと熱くとエスカレートすることもあります。そのような状況で保湿が不十分だと、気づいたら皮膚が薄くなり真っ赤になっていたケースがありました。また介護者に「泡で洗うことが大切」ということは周知されているのですが、ポンプタイプの泡状の石けんで身体を洗った後にしっかりお湯で洗い流さないと、泡を拭き取るだけでは石けん成分が残り、そこに真菌や細菌が繁殖し感染症を起こしてしまうことがあるのです。
在宅療養者に介入しているのは看護師だけではありません。ご家族や介護者などさまざまな人がかかわっていて、それぞれスキンケアに関する意識や知識、スキルが異なります。良かれと思ってのケアが皮膚の生理機能を低下させないように、行ってはいけないケアの教育も大切です。スキンケアは皮膚トラブルを予防するだけではなく、皮膚に触れること(タッチング)により不安や緊張を緩め、痛みを和らげるなど、心身への安心感を与える効果もあります。看護職のものさしだけで対象をみたり、ケアを計画したりするのではなく、多職種のやり方や視点、考え方にも耳を傾けながら、看護職がパイオニアとなって皆の知識を高めるよりよい方法を考えていくとよいと思います。
皮膚をみることの大切さ
皮膚は人体における外界とのインターフェイスです。そこが壊れてしまうと身体のさまざまな機能に影響が及びます。また免疫機能の機能低下が皮膚症状として現れてくることもあります。皮膚は人間が健康に生活しているか否かのバロメーターになりますので、皮膚の状態に注目するのは大事なことだと思っています。
病院で勤務していると、配属された診療科の疾患に関する知識やケアがスキルアップしていきますし、疾患にしぼった見方がしみついていき、対象に対して「○○疾患の人」という見方をしがちになります。けれども在宅では、いろいろなところからみていくオールラウンドな視点が求められます。皮膚をきちんと観察していると、いつもと違うところのフォーカスから情報をキャッチできることもあります。在宅療養者の皮膚をきちんと観察する、それを意識化していくことはとても重要だと思います。
引用文献
1)篠田 勧,他;平成28-29年在宅医療委員会報告:皮膚科医の往診・在宅医療の実態,意識調査(平成28年度)報告書(Ⅰ).日本臨床皮膚科医学会誌 2018;35(1):124-31.
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がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ
薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。