清潔ケアへの拒否が強い患者さんへのケア、どうする?【PR】
- 公開日: 2024/1/10
清潔保持ケアへの拒否が強い人に対する、短時間でできる効果的なケア方法はありますか。また、白い粉がふく皮膚に対する清潔・保湿ケア方法を教えてください。
清潔ケアの目的を患者さんに説明し、その必要性を理解したうえでケアを受けられるようにします。日々の清潔ケアにプラスアルファで保湿ができるように工夫します。白い粉がふいている場合は、刺激の少ない温タオルやお湯でのケアから始めます。
拒否の理由を探り、いつもの清潔ケアの中に保湿ケアをプラスする工夫を
患者さんが清潔ケアを拒否する場合、まずその理由を探る必要があります。理由がわからないままに、ケアをする側の一途な思いだけで進めようとしても、うまくいきません。保湿剤を塗られるのが嫌なのか、ケアに時間がかかるから嫌なのか、それとも金銭的負担が心配なのか。拒否する理由をリサーチし、それをふまえてケアの方法を選択し、少しずつでもケアを受け入れてもらえるようなアプローチをします。清潔ケアの目的や効果、方法などを、患者さんの理解度に合わせてわかりやすく伝え、必要性を理解したうえでケアを受けられるよう援助していきます。
患者さんがケアを拒否するという問題を、自分だけですべて解決しようとしないという姿勢も大切です。拒否が強い場合は無理強いせず、ご家族や介護者など患者さんを取り巻く方々と相談、協力、連携しながら、誰がどんなアプローチをするのが一番受け入れやすいのか、どんなケアがよいかを模索することも必要です。
短時間で行えるケアの方法としては、保湿剤入りの入浴剤をお湯に溶かして清拭したり、保湿剤入りの洗浄剤を用いるのもおすすめです。これまでのケアのやり方を変えることなく、保清と保湿が一緒にできます。入浴剤などはまずは試供品を使って、効果を実感してもらうのもよいでしょう。
皮膚バリア機能が破綻している状態と捉え、ケアを行う
皮膚に白い粉がふいているのは、皮膚が乾燥して角質層の表面が剥がれているためで、皮膚バリア機能が破綻している状態といえます。まずドライスキンの原因が、年齢的なものなのか、体調不良や睡眠不足などの背景があるのかをアセスメントします。皮膚バリア機能が破綻していると、外部からの刺激を受けやすく、感染しやすくなり蜂窩織炎や、おむつをしている方なら IAD(失禁関連皮膚炎)、点滴や透析をしている方ならテープによるスキントラブルなどを起こしやすくなります。患者さん本人がドライスキンに何ら支障を感じていない場合、ただ保湿をと言ってもなかなか受け入れてもらえませんから、ドライスキンによるリスクや保湿の必要性を丁寧に説明し、理解を促すことが大切です。白い粉がふいていても、傷になっていないのであれば、まずはお湯をかけたり、温タオルで拭いたりして、しみていないかといった反応を確認します。洗浄剤や保湿剤にはさまざまな種類がありますが、一度にいろいろ使わず、ひとつずつ発赤や痛みが生じないかを確認しながら、ステップを踏んで、刺激の少ないケアを進めていくとよいと思います。
処方であれば、〇〇をもらってくださいと言えますが、市販の保湿剤の場合、どれがよいと言いづらいです。在宅なので、コストがあまりかからない保湿剤を使用したいと思いますが、どのように勧めるとよいのでしょうか。
剤形ごとの長所・短所を理解し、皮膚の状態に合っていて長く使えるものを提案します。
長所・短所を把握する
まず保湿剤について、処方で入手できるものと市販のものにはそれぞれどんなものがあるのか、クリーム、ローション、フォームといった剤形の長所と短所を理解しておく必要があります。そのうえで、患者さんの皮膚がどんな状態で、どの部位にどんな保湿剤を使うのがよいかをアセスメントし、剤形を決めていくとよいでしょう(表1・2)。
保湿剤に対して、ベタベタするという先入観をもっている方もいますので、まずは自宅にある患者さんやご家族が使っている化粧水やローションを用いて、手のひらや足につけて少しマッサージしながら保湿をして、効果を感じてもらうようにしています。しみないし、気持ちがよいと感じて、保湿に興味をもってもらえたたら、次の段階として個包装のサンプルなどを使いながら、保湿剤をおすすめしています。
表1 保湿剤の剤形ごとの特徴
軟膏 | クリーム | ローション | |
基剤 | ・油 | ・水と油を混ぜた乳化剤 | ・水と油を混ぜた乳化剤 ※水分量がクリームより多い |
刺激性 | ・弱い | ・軟膏に比べて強い | ・軟膏に比べて強い |
べたつき | ・強い | ・水を含むため伸びがよく、べたつきにくい | ・軟膏やクリームに比べて、べたつきにくい |
皮膚吸収 | ・クリームより遅い | ・吸収されやすい | ・軟膏より吸収されやすい |
使用に適した患部 | ・どんな状態の患部にも使える ・刺激が少なく、皮膚の弱い人にも使える |
・主に乾燥した患部に使用 ・ジュクジュクした患部、傷がある部位には適さない |
・軟膏やクリームが塗りにくい、頭皮など有毛部に適している ・ジュクジュクした患部、傷がある部分には適さない |
長所・短所 | ・保湿力が高く、皮膚を保護する | ・さらっとした使用感から夏場は軟膏からの使用変更もある一方で、汗で流れやすい | ・伸びがよく、さらっとした使用感。水分が多く気化しやすいため、夏場など汗をかくときの身体にも使いやすい |
表2 主な市販の保湿剤
ヘパリン類似物質 | ワセリン | 尿素 | |
商品名 | ・ヒフメイドシリーズ ・ヘパロイド油性クリーム ・ヘパソフトプラス ・イハダドライキュア乳液 |
・白色ワセリン ・プロペト ・サンホワイト ・ヴァセリン ・イハダ薬用バーム |
・ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム ・尿素10%クリーム ・尿素スキンクリーム |
作用機序 | ・モイスチャライザー:皮膚に浸透し水分保持 | ・エモリエント:皮膚の表面に膜を貼り水分蒸発を防ぐ | ・モイスチャライザー:皮膚に浸透し水分保持 |
特徴 | ・保湿作用は大 ・水分保持力が高い ・価格が高い |
・刺激が少ない ・べたつき感がある ・価格が安い |
・ガサガサした手足の角質、皮膚の厚い部分の水分保持 ・炎症がある部位にはNG |
処方してもらう場合には細かく要望を伝えることも必要
医師に保湿剤を処方してもらう場合、安価で刺激が少ないためワセリンやプロペトなどが第一選択として処方されがちですが、患者さんがベタつくのを好まないなら、その旨を伝えて別のものを処方してもらいましょう。どんな部位に使いたいか、どんな剤形がよいかなど、具体的に伝えると、医師も処方しやすいと思います。
市販のものを購入する場合、価格や入手のしやすさ、使用感などを総合して、使いやすいものを選ぶように伝えています。保湿は長く続けることが大切ですから、患者さんだけでなくご家族も一緒に使えるものを選ぶのもよいでしょう。高価なものを買っても、続かなければ意味がないので、安価でたっぷり使えるものがよいと思います。ただし、必ずしも安いものでなくてもよいというご家庭もありますから、特定の商品名を提案するのではなく、手に入れやすく、続けやすいものをと伝えるようにしています。
敏感肌にも使えるミノンシリーズ
ミノン全身シャンプー泡タイプ
顔、身体、頭が一本で洗える泡タイプの全身シャンプー。バリア機能を守って洗う「植物性アミノ酸系洗浄成分」配合。弱酸性、無香料。
[医薬部外品]販売名:ミノン全身シャンプーW
500mL、400mL(つめかえ用)
ミノン全身保湿ミルク
ミノン全身保湿クリーム
敏感肌、バリア機能が乱れやすい肌を支える全身に使える「塗るミノン」。広い範囲のケアにはべたつかないミルクタイプ、乾燥のつらい部位にぴたっと密着感のあるクリームタイプ。
[医薬部外品]販売名:DSミルクz
200mL、400mL、320mL(つめかえ用)
販売名:DSクリームz
90g
詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/
がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ
薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。