「プライマリ・ケア看護師(仮称)」とは?どうやったらなれますか?
- 公開日: 2015/11/10
治療のシーンが病院から在宅・地域にシフトしていくなか、看護師は患者や利⽤者のプライマリ・ケアを担う役割を期待されています。そのような背景を受けて、⽇本プライマリ・ケア連合学会が⽬指しているのが“プライマリ・ケアを担う看護師”です。本記事ではプライマリ・ケア看護師(仮称)について解説します。
そもそも、「プライマリ・ケア」って何ですか?
プライマリ・ケアとは、「患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップの構築によって、家族及び地域という文脈の中で責任を持って診療する臨床家によって提供される、統合された、受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである」と定義されます1)。
重症度の高い複雑な疾患を治療する病院ではなく、誰もがかかる風邪などの疾患や、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を主として治療する診療所などの規模の小さな医療機関を中心とします(地域ケアを担当する保健センターなどもプライマリ・ケアの機能を果たします)。
世界的にみると
ヨーロッパ諸国、カナダやオセアニア諸国など、国際的にみても、住民は看護師も含めたチームとしてのかかりつけ医をもち、そのかかりつけ医に継続的に診てもらうプライマリ・ケアの仕組みが主流です。
欧州など、プライマリ・ケアをヘルスケアシステムの主体とする国々の中では、診療所*1に勤務する看護職*2がプライマリ・ケア機能を担っています。
*1:公的機関が中心, 複数のGPや看護師、リハスタッフが勤務
*2:NP・CNSレベルからRN(ここが中心)、無資格者まで多様
デンマークのGPクリニック
ナースの診察室(マイナーイリネス、予防接種、健康診査、慢性疾患定期検査と療養指導を行う)
トリニダード・トバゴ、PHCCで看護師による糖尿病教育・定期検査
なぜこの制度が必要となったの?
生活環境が改善され、医学も進歩し、感染症を主とした時代から生活習慣を原因とする慢性疾患を主とする時代へと、疾病構造は変化しました。また、高齢化も進んでいます。
これには、専門とする診療科を中心にしか診ない専門医では対応は困難で、総合的かつ包括的に、疾患や症状を生み出す心理社会的背景を把握した上で全身を診ることのできるプライマリ・ケア医が重要となります。
また、日本では、2017年度から第19番目の専門医として総合診療専門医(プライマリ・ケア医)の養成が、先進国の中では最後に始まります。そうなると、この時代、この制度に対応できる看護師も必要となってきます。
【日本にもプライマリ・ケア制度が必要というスタンス】
- ● 日本のプライマリ・ケアを支える看護師の専門性は検討されてこなかった
- ● キャリア・パスや卒前・卒後教育が制度的に不十分
- ● 国際的にも、看護師の活動がプライマリ・ケアを支える
- ● 総合診療専門医の養成開始:ペアで動ける看護師の存在が必要
上記のような背景から、わが国においても戦略的に看護師を機能強化・養成する必要性があります。
その方向性としては、
- ● 看護師の役割の強化
- ● 看護師の教育の整備
- ● 看護師への業務委任
- ● 看護師は、プライマリ・ケア・センターでの重要な役割を担う(図1)
となります。
「プライマリ・ケア看護師(仮称)」って?
プライマリ・ケア看護師(仮称)の役割は、上記の定義と同様、地域で患者・家族の健康を、継続的に責任をもって支える役割を持ちます。