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【連載】治療の継続を安全に支える! 外来がん化学療法の看護

抗がん薬の曝露予防と対策

  • 公開日: 2018/5/22

抗がん薬の曝露は、患者さんだけでなく医療者にとっても大きなリスクです。そのため、運搬・保管から廃棄するまで、抗がん薬を扱うすべての場面で注意が必要です。その業務を担うことの多い看護師は、曝露への対策をきちんと習得し、的確な判断と対処ができるようにしましょう。


曝露とは

 がん化学療法(以下、化学療法)に用いられる薬剤は、患者さんだけでなく医療者にも危険を及ぼすものが多く、Hazardous Drugs(HD)といわれています。米国国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health :NIOSH)は、HDのことを「現状において職業上の曝露によって健康被害をもたらすことが知られている、もしくは疑われている薬品」と定義しており、①発がん性、②催奇形性またはほかの発生毒性、③生殖毒性、④低用量での臓器毒性、⑤遺伝毒性、⑥前記基準によって有害であると認定された既存の薬剤に類似した新薬、という①~⑥の項目のうち、1つ以上に該当するものとしています。ここには、抗がん薬だけでなく、抗ウイルス薬やホルモン誘導体、免疫抑制薬なども含まれます。

医療者への影響

 1970年代以降になると、HDを取り扱う医療者について、尿変異原性や遺伝子損傷、染色体異常などが報告されています。

 また、HDの職業性曝露による健康に及ぼす有害事象には、急性症状と長期的な影響があるとされています(表3-1)が、十分には明らかにされていないのが現状です。
急性症状とは、短期的な影響として現れて曝露の回避により改善するもので、悪心・嘔吐、頭痛、めまい、脱毛、過敏症などがあります。一方、長期的な影響は、実証することは難しくなりますが、流産、先天性異常、不妊症、白血病、その他のがんのリスク増加が挙げられています。

HDの職業性曝露による有害な健康影響
日本がん看護学会,他編:HDの職業性曝露による健康への影響.がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン 2015年版.金原出版,2015,p.16.より引用一部改変

曝露の経路と機会

 HDの職業性曝露は、吸入や経口摂取、皮膚接触などを経路として起こることが知られています。HDの調整や投与を行う医療施設内では、安全キャビネットの前の床やテーブルの上、椅子とその肘置き、ベッドテーブル、外来診察室のカウンター、輸液ポンプの前面、輸液スタンドの下の床、外来化学療法中の患者さんが使用する便器の前の床、電話の受話器、電話台、エアコンのフィルターなどからHDが検出されたことが報告されています。
また、HDは薬剤そのものだけでなく、投与された患者さんの尿や便などの排泄物、汗や血液などの体液にも含まれます。そのため、気づかないうちに曝露している可能性があります。

曝露予防の考え方

 曝露の予防を考えるとき、その実施については、個人の努力や責任と考えがちですが、そうではありません。組織全体で考え、行っていくことが重要です。その柱として、ヒエラルキーコントロールという概念を押さえておきましょう。

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