第1回 「特定行為に係る看護師の研修制度」って何ですか?
- 公開日: 2016/1/13
- 更新日: 2021/1/6
平成27年10月1日に特定行為研修制度がはじまりました!
特定行為研修制度は、これからの超高齢化社会に向けて、チーム医療のキーパーソンとなる看護師を育成するために創設されました。制度については、厚生労働省のHPに詳細な情報が載せられていますが、制度の話だけではわかりにくく、実際に臨床現場でどのような変化が期待され、どのように活用できるのか、ピンと来ない部分、イメージしにくい部分があると思います。
「特定行為研修が始まったのは知ってるけど、自分には関係ないな~」という方から、「実は、自施設でも研修を始めることを考えている」、「特定行為研修に参加してみたいけど・・・」という方まで、とりあえず、研修の是非より、知っておいても損はないかも~という感じでご覧ください。
今回は、制度の理解と、解釈のヒントになるようなことをご紹介しながら、「特定行為研修」をもっと身近に感じていただき、制度活用の可能性を考えていただくきっかけになれれば・・・という意図で執筆しました。
特定行為研修制度とは?
大まかに言うと、“医師の判断を待たずに特定行為を活用して、患者に対応する看護師を育成する制度”になります。研修内容の標準化、特定行為の定義、研修機関の登録、研修修了者の登録などを行い、今後の医療等を支えていく看護師を計画的に養成していくことが目的です。
そもそも特定行為研修制度ができた理由は?
2025年には、日本は、超高齢化社会になり、病院で治療を受けるよりも、在宅医療を受ける人が多くなることが予想されています。
今よりももっと在宅医療をすすめていくには、いちいち医師が往診して患者を直接診なくても、医学的な教育を受けた看護師が医師の判断を待たずに、「手順書」によって 一定の診療の補助(脱水時の点滴など)を行うことが求められています。
また、病院などにおいても医師が四六時中患者に直接関わることができない場合もあるため、医学的判断ができる看護師が患者にタイムリーに対応できる看護師を育成する方法として、「特定行為研修」ができました。
どんな看護師を育成しようとしているの?
ひとことで言うと、“医師の思考を理解できる看護師”になるかと思います。
この研修を修了した看護師には、手順書に基づいて、患者の状態を判断して、特定行為をすることが求められています。そのためには、患者を自分の力で診察した上で現在の患者の状況をアセスメントし、臨床推論をしながら判断しなければなりません。
これは、実は、講議を受けただけでは到底できず、たくさんの患者を診ることを行い、自分の所見のとり方、そして判断を繰り返し、妥当性を確認、検討することではじめてできることになります。
これまでの看護教育や、臨床での教育に無かった新たな教育内容になると思います。
今まで、患者の状態を見たときに、「なんとなく大丈夫」、「なんか変」と思っていたことが、医学的な知識を学ぶことで、根拠をもって判断できるようになります。
特別な資格がとれるの?
「特定行為研修」を受けたからといって、特別な資格がとれるわけではありません。
「手順書に基づく特定行為」は、看護師の「診療の補助行為」の範疇になりますので、「看護師」には、変わりありません。
例えば、認定看護師や専門看護師は、日本看護協会が認定している資格で、認知度が高い資格になっていますが、法律的な制約はありません。しかし、この「特定行為研修制度」は、昭和23年に制定された保健師助産師看護師法の内容に加えられた大きな意味を持つものです。つまり、法律が大きく変わったことになります。
この研修を修了しても、業務の独占ができるわけではありません。つまり、研修を受けた看護師だけしか特定の医行為ができなくなるということではないです。そうなると、今まで通り実施していたことができなくなり、現場がスムーズに動かなくなることが懸念されているからです。
ただ、研修を修了した看護師の呼び名がないと、困る場合もあるので、「特定行為に係る研修制度を修了した看護師」を短く略して、「特定看護師」と呼んでいる場合もあります。呼称する場合には何の問題もないといわれています。
どのくらいの人が研修を受けられるの?
厚生労働省では、2025年まで10万人の「特定行為研修修了者」を輩出し、病院、療養施設、訪問看護ステーションなどで活躍できるように、特定行為研修を推進しています。
これからの10年で10万人となると、1年で1万人の計算になりますね。20年前に始まった認定看護師制度でも、現在16,000人弱ですので、相当数の研修修了者の育成が求められていることがわかります。
どこで研修をうけられるの?費用は?
特定行為研修は、厚生労働大臣が指定する指定研修機関で行います(表1)。
特定行為研修を行う指定研修機関は、厚生労働省のウェブサイトに載っています。
表1 特定行為研修を行う指定研修機関
所在都道府県 | 指定研修機関 | 区分数 |
---|---|---|
北海道 | 北海道医療大学大学院看護福祉学研究科看護学専攻 | 13 |
岩手県 | 岩手医科大学附属病院高度看護研修センター | 1 |
栃木県 | 自治医科大学 | 19 |
埼玉県 | 上尾中央総合病院 | 7 |
東京都 | 日本慢性期医療協会 | 7 |
東京都 | 東京医療保健大学大学院看護学研究科看護学専攻 | 21 |
東京都 | 国際医療福祉大学大学院医療福祉額研究科保健医療学専攻 | 21 |
東京都 | JADECOM-NDC研修センター | 21 |
東京都 | 日本看護協会 | 11 |
愛知県 | 愛知医科大学大学院看護学研究科看護学専攻 | 21 |
愛知県 | 藤田保健衛生大学大学院保健学研究科保健学専攻 | 21 |
京都府 | 洛和会音羽病院 | 5 |
奈良県 | 奈良県立医科大学 | 7 |
大分県 | 大分県立看護科学大学大学院看護学研究科看護学専攻 | 21 |
入学要件、受講可能な項目、費用等は、それぞれの医療機関で異なりますので、各教育機関のHPをご覧ください。