【連載】公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 分析テーマ
個別テーマについての検討状況|第6回報告書(2006年4月〜6月)
- 公開日: 2010/1/1
【1】薬剤に関連した医療事故
平成18年4月1日から平成18年6月30日の間に報告された医療事故のうち、薬剤に関連した事例20件について分析を行った。
(1)薬剤に関連した医療事故の現状
本報告書において分析対象とした医療事故事例の概要は図表Ⅲ-1の通りである。
薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」の5段階に分類し、事故の内容と併せて薬剤に関連した医療事故の発生状況を整理した(図表Ⅲ-2)。
① 指示段階
指示段階における事例は6件であった。その内訳は処方内容の薬剤量間違いが4件、口頭指示による濃度間違いが1件であった。また確認のないままの抗凝固剤の中止が1件報告された。
② 指示受け・申し送り段階
指示受け・申し送り段階における事例は、類似薬の処方指示の薬剤間違い1件であった。
③ 準備段階
準備段階における事例は3件であった。その内訳は、外形や名前が類似した薬剤間違い2件、薬剤量間違い1件であった。
④ 実施段階
実施段階における事例は5件であった。その内訳は薬剤間違いが1件であり、シリンジポンプの設定間違いによる薬剤量間違いが2件、インスリンの薬剤量間違いが1件であった。また、持続硬膜外注入の薬液追加後にショック状態となった事例が1件報告された。
⑤ 実施後の観察及び管理
実施後の観察及び管理における事例は4件であった。その内訳は検査の際に薬の中止、あるいは内服をした事例2件、抗凝固剤療法中、化学療法中の患者の容体変化が2件であった。
⑥ その他
使用期限内の検査試薬の劣化が1件であった。この事例はすでにメーカーへ報告し、改善試薬を使用している。
(2)医療事故に関連した薬剤の種類
医療事故に関連した薬剤の種類には抗腫瘍剤2件、循環器用薬3件、抗糖尿病薬(インスリン)2件などがあった(図表Ⅲ-3)。
(3)薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の現状
第18回ヒヤリ・ハット事例収集(注1)において、記述情報のテーマにあげられていた調剤の過程での事例及び警鐘的事例の中から薬剤に関連する事例について、併せて分析を行った。
① 調剤の過程での事例
調剤の過程に関連したヒヤリ・ハット事例の発生状況を整理した。薬剤の種類によって「内用薬」、「外用薬」、「注射薬」、「その他」として縦軸とし、ヒヤリ・ハットの種類を「薬剤間違い」、「薬剤量間違い」、「患者間違い」、「交付もれ」、「薬袋・ラベル間違い」、「分包器の故障・不具合」、「その他」の7つに分類した横軸とし、マトリックス表として整理した(図表Ⅲ-4)。
調剤の過程でのヒヤリ・ハットの中では、以下の4点の間違いが多く報告された。
ⅰ.薬品名が似ている
ⅱ.剤形が似ている
ⅲ.包装(ヒート)が似ている
ⅳ.薬効が似ている
② 薬剤に関連する事例
医療事故と同様に薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の発生状況を整理した。薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」の5段階として縦軸とし、事故の内容を横軸とし、マトリックス表として整理した(図表Ⅲ-5)。
第18回ヒヤリ・ハット事例収集(注1)において報告された調剤の過程に関して、主な記述情報124件を図表Ⅲ-6に示す。
また、重要事例として報告された中から薬剤に関連する事例31件の概要を図表Ⅲ-7に示す。
参照:第6回報告書(PDF形式)薬剤に関連した医療事故
情報提供:公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部