【連載】公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 分析テーマ
個別テーマについての検討状況|第5回報告書(2006年1月〜3月)④
- 公開日: 2010/1/1
【4】患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した医療事故
平成16年10月1日から平成18年3月31日の間に報告された医療事故事例のうち「事故の概要」の中から「患者取り違え」、「部位間違い」のコードで選択されていたもの、及びそれ以外のコードが選択されていたものの中から、その報告内容が、患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連するものは33件であった。この33件のうち、事例の内容が明らかに手技の誤りや薬剤の取り違えによる事例15件を分析対象から除き、18件について分析を行った。
(1)患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した医療事故の現状
患者取り違え、手術処置部位の間違いに関連した医療事故の概要と背景・要因を図表Ⅲ-9に整理した。
また医療事故の発生状況を取り違えの種類で「患者取り違え」、「部位間違い」、「左右間違い」の3つに分類し横軸に、発生場面を「検査」、「手術」、「治療・処置」、「その他」の4つに分類し縦軸としたマトリックス表として整理した(図表Ⅲ-10)。
さらに取り違えの種類を、報告様式の「発生要因」のコード選択により整理した(図表Ⅲ-11)。
① 検査の場面
検査の場面での医療事故事例は5件であり、すべてが患者取り違えであった。そのうち3件は採血に関連するものであり、いずれも違う患者の血液データが報告され、再採血や不要な治療の実施を行っている。また、病理標本に関連する事例が2件報告されていた。
② 手術の場面
手術の場面で医療事故事例は9件であった。そのうち患者取り違え事例は、他の患者の手術のために用意した眼内レンズを使用した1件であった。部位の間違いは5件であり、その内4件が除圧椎間の誤認など椎間部位に関連するものであった。また、手術部位の左右の間違いが3件報告されている。部位や左右の間違いを予防するために、手術部位をマーキングするルールを決めている取り組みがあった。
③ 治療・処置の場面
治療・処置の場面での医療事故事例は2件であった。注射液の患者取り違えが1件、ドレーンチューブ挿入処置の左右の間違いが1件である。
④ その他の場面
その他、輸血の場面での事例が2件報告されている。いずれも血液型の違う他の患者の輸血と取り違えて実施した事例であった。
(2)患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連したヒヤリ・ハット事例の現状
第17回ヒヤリ・ハット事例収集(注1)において報告され、分析対象として選定された事例および、第4回報告書において掲載対象外であった第16回報告事例のうち分析対象として選定された事例256件の分析を行った。
医療事故と同様に取り違えの種類で「患者取り違え」 、「部位の間違い」、「左右の間違い」の3つに分類したものを縦軸に、また取り違えの発生場面を「検査」、「手術」、「治療・処置」、「その他」の4つに分類したものを横軸としたマトリックス表として整理した(図表Ⅲ-12)。
事例の内容では、検査の場面でのヒヤリ・ハット事例が最も多く、149件であった。その他として、受付や診察の案内や配膳(ミルクを含む)での場面での患者取り違え、IDカードに関連した患者取り違えなどが報告されている。
本報告書では第16回、第17回ヒヤリ・ハット事例収集において報告された患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した記述情報のうち主な事例121件を図表Ⅲ-13に示す。
参照:第5回報告書(PDF形式)患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した医療事故
情報提供:公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部
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