【連載】公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 分析テーマ
個別テーマについての検討状況|第13回報告書(2008年1月〜3月)
- 公開日: 2010/1/4
【1】薬剤に関連した医療事故
平成20年1月1日から平成20年3月31日に報告された医療事故のうち、薬剤に関連した事例26件について分析を行った。
(1)薬剤に関連した医療事故の現状
薬剤に関連した医療事故事例の概要は図表Ⅲ-2-1の通りである。
薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階に分類し、事故の内容と併せて薬剤に関連した医療事故の発生状況を整理した(図表Ⅲ-2-2)。
① 指示段階
指示段階における事例は9件であった。そのうち、薬剤処方の際誤って10倍量指示した事例が1件、薬剤量を示す単位「mg」と「本」を間違え過量投与となった事例が1件、腫瘍用薬の過量投与が2件、禁忌薬剤の使用に関する事例が2件あった。
薬剤処方入力の際の過量投与の防止策として、上限量を超過した場合は、「警告」の画面表示に加え、処方医のIDとパスワードの入力を行わない限りオーダーができないシステムにしている医療機関がある。
② 指示受け・申し送り段階
指示受け・申し送り段階における事例はなかった。
③ 準備段階
準備段階における事例は9件であった。そのうち、グリセリン液が入っている容器とエタノールが入っている容器を取り違えて浣腸した事例が1件、インスリン100単位が10mLだと思い投与した事例が1件、輸液ポンプの流量設定を間違えた事例が2件、内服薬投与の際の薬剤取り違えが1件、配合注意の薬剤に関する事例が1件、散剤分包の際に薬剤量を間違えた事例1件あった。
④ 実施段階
実施段階における事例は5件であった。そのうち、注射を実施する際に他の患者のカルテを見たため薬剤量を間違えた事例が1件、投与経路を間違えた事例が1件、別の患者の薬剤を投与した事例が2件あった。
⑤ 実施後の観察及び管理段階
実施後の観察及び管理段階における事例は3件であった。そのうち、メシル酸ガベキサートの点滴投与中における血管外漏出が1件、薬物アレルギーに関する事例が1件あった。
⑥ その他
その他の事例はなかった。
(2)薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の現状
第26回ヒヤリ・ハット事例収集において、医療機関が警鐘的と判断し報告した事例の中から薬剤に関する事例について分析を行った。また、第26回ヒヤリ・ハット事例収集において、記述情報のテーマにあげられた禁忌薬に関する事例について分析を行った。
① 薬剤に関連する事例
医療事故と同様に薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の発生状況を整理した。薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階として縦軸に、事例の内容を横軸にとりマトリックス表として整理した(図表Ⅲ-2-3)。
また、報告された事例の中から30件の事例概要を図表Ⅲ-2-4に示す。
② 禁忌薬に関する事例
禁忌とは、「患者に投与しないこと」を意味するが、医療機関から報告された禁忌薬に関する事例をもとに、本報告書で扱う禁忌薬を
ⅰ) 患者の原疾患や既往歴、患者の体質などにより患者に投与しない、または、投与しないほうがよい薬剤
ⅱ)併用してはいけない、または、併用しないほうがよい薬剤
ⅲ)配合が不適である、または、配合しないほうがよい薬剤
とした。
禁忌薬が準備、投与等される段階を経時的に「指示」、「指示受け・申し送り時」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階として縦軸に、事例の内容を横軸にとりマトリックス表として整理した(図表Ⅲ-2-5)。
また、報告された事例の中から22件の事例概要を図表Ⅲ-2-6に示す。
参照:第13回報告書(PDF形式)薬剤に関連した医療事故
情報提供:公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部