【連載】公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 分析テーマ
個別テーマについての検討状況|第15回報告書(2008年7月〜9月)
- 公開日: 2010/1/4
【1】 薬剤に関連した医療事故
平成20年7月1日から平成20年9月30日の間に報告された医療事故のうち、薬剤に関連した事例30件について分析を行った。
(1)薬剤に関連した医療事故の現状
薬剤に関連した医療事故情報の概要は図表Ⅲ-2-1の通りである。
薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階に分類し、事故の内容と併せて薬剤に関連した医療事故の発生状況を整理した(図表Ⅲ-2-2)。
① 指示段階
指示段階における事例は7件であった。そのうち、当該患者にとって禁忌であることがわかっている薬剤を投与した事例が3件、化学療法際の抗癌剤の処方間違いが2件あった。
② 指示受け・申し送り段階
指示受け・申し送り段階における事例は2件であり、ドパミン塩酸塩の含量を間違えて、投与量を計算したことにより過量投与となった事例が1件あった。
③ 準備段階
準備段階における事例は4件であった。そのうち、有効期限が切れたワクチンを使用した事例が1件、注射器に準備された薬剤に関する事例が1件、錠剤自動分包機のカセットに他の薬剤が混入していたため、患者が処方されていない薬剤を内服した事例が1件あった。
④ 実施段階
実施段階における事例は17件であった。そのうち、輸液の血管外漏出が2件、持続点滴を行うところ静脈注射した事例が1件、輸液ポンプ等の流量設定間違いが2件、注射器に準備された薬剤を取り違えた事例が3件、当該患者にとって禁忌であることがわかっている薬剤を投与した事例が1件あった。
⑤ 実施後の観察及び管理段階
この段階における事例の報告はなかった。
⑥ その他
この段階における事例の報告はなかった。
(2)薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の現状
第28回ヒヤリ・ハット事例収集において報告された警鐘的事例の中から薬剤に関する事例について分析を行った。また、第28回ヒヤリ・ハット事例収集において、記述情報のテーマにあげられた禁忌薬に関する事例について分析を行った。
① 薬剤に関連する事例
医療事故と同様に薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の発生状況を整理した。薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階として縦軸に、事例の内容を横軸にとりマトリックス表として整理した(図表Ⅲ-2-3)。
また、報告された事例の中から33件の事例概要を図表Ⅲ-2-4に示す。
② 禁忌薬に関する事例
禁忌とは、「患者に投与しないこと」を意味するが、医療機関から報告された禁忌薬に関する事例をもとに、本報告書で扱う禁忌薬を
ⅰ) 患者の原疾患や既往歴、患者の体質などにより患者に投与しない、または、投与しないほうがよい薬剤
ⅱ)併用してはいけない、または、併用しないほうがよい薬剤
ⅲ)配合が不適である、または、配合しないほうがよい薬剤
として事例の発生状況を整理した。
禁忌薬が準備、投与等される段階を経時的に「指示」、「指示受け・申し送り時」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階として縦軸に、事例の内容を横軸にとりマトリックス表として整理した(図表Ⅲ-2-5)。
また、報告された事例の中から20件の事例概要を図表Ⅲ-2-6に示す。
参照:第15回報告書(PDF形式)薬剤に関連した医療事故
情報提供:公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部