【連載】公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 分析テーマ
個別テーマについての検討状況|第17回報告書(2009年1月〜3月)
- 公開日: 2010/1/4
【1】薬剤に関連した医療事故
平成21年1月1日から平成21年3月31日までに報告された医療事故のうち、薬剤に関連した事例54件について分析を行った。
(1)薬剤に関連した医療事故の現状
薬剤に関連した医療事故情報の概要は図表Ⅲ-2-1に示す。
薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階に分類し、事故の内容と併せて薬剤に関連した医療事故の発生状況を整理した(図表Ⅲ-2-2)。
① 指示段階
指示段階における事例は4件であった。そのうち、患児に対し計算を間違えKCLを10倍量投与した事例が1件、抗生剤の処方日数を間違えたため2種類の抗生剤を投与した事例が1件、処方入力の際腫瘍用薬の規格を取り違えため過量投与となった事例が1件、当該患者にとって禁忌であることがわかっている薬剤を投与した事例が1件であった。
② 指示受け・申し送り段階
この段階における事例の報告はなかった。
③ 準備段階
準備段階における事例は22件であった。そのうち、注射器やシャーレなど別の容器に準備して使用する薬剤の取り違えが3件、名称が類似した薬剤の取り違えが3件、救急カートにある薬剤を取り違えた事例が1件、薬剤を10倍量投与した事例が2件、調剤する際の薬剤量間違いが2件、薬剤の流量設定を間違えた事例が3件、有効期限切れの薬剤を使用した事例が1件、当該患者にとって禁忌であることがわかっている薬剤を投与した事例が1件あった。
④ 実施段階
実施段階における事例は23件であった。そのうち、小児患者の血管外漏出が3件、患者を取り違えた事例が2件、高濃度のFOY(メシル酸ガベキサート)を投与した事例が1件あった。
⑤ 実施後の観察及び管理段階
この段階における事例は3件であった。そのうち患者が自己判断でワーファリンを休薬した事例が1件、アルチバ(レミフェンタニル)を急速投与した事例が1件あった。
⑥ その他
この段階における事例は2件であった。そのうち1件はメソトレキセートが調合後に白色混濁した事例であった。
(2)薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の現状
第30回ヒヤリ・ハット事例収集において報告された警鐘的事例の中から薬剤に関する事例について分析を行った。また、第30回ヒヤリ・ハット事例収集において、記述情報のテーマにあげられた化学療法に関連する事例について分析を行った。
① 薬剤に関連する事例
医療事故と同様に薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の発生状況を整理した。薬物療法を行う際の業務の流れを「指示」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」の6段階として縦軸に、事例の内容を横軸にとりマトリックス表として整理した(図表Ⅲ-2-3)。
また、報告された事例の中から34件の事例概要を図表Ⅲ-2-4に示す。
② 化学療法に関する事例
本報告書では、化学療法において腫瘍用薬(抗癌剤)の使用に関連した事例について発生状況を化学療法が実施される段階、事例の内容別に整理した(図表Ⅲ-2-5)。
また、報告された事例の中から20件の事例概要を図表Ⅲ-2-6に示す。
参照:第17回報告書(PDF形式)薬剤に関連した医療事故
情報提供:公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部