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【連載】公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 分析テーマ

個別テーマについての検討状況|第17回報告書(2009年1月〜3月)④

  • 公開日: 2010/1/5

【4】患者取り違えに関連した医療事故

 患者取り違えに関連した医療事故について、平成16年10月から平成21年3月31日まで、85件の報告があった。その内訳を図表Ⅲ-2-20に示す。
 
図表Ⅲ-2-20患者取り違えに関連した医療事故の発生件数

 

 このうち平成16年10月から平成18年9月30日までに報告された事例については、第5回報告書から第7回報告書において個別テーマとして取りあげた。
 
 その後の報告を、本報告書分析対象期間(平成18年10月1日から平成21年3月31日まで)とし、患者取り違えに関連した医療事故59件の分析を行った。本報告書分析対象期間に報告された患者取り違えに関連した医療事故の概要を図表Ⅲ-2-21に示す。
 
図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要

図表Ⅲ-2-21患者取り違えに関連した医療事故の概要
 
 本報告書の「患者取り違え」は、ⅰ患者Aを患者Bと誤認し、患者Aに患者Bの処置等を実施した(以下「患者同定の間違い」とする)、ⅱ患者Aの同定は正しいが、患者Bの処置等を患者Aに実施した(以下「処置等の取り違え」とする)の2つの分類をあわせたものを示すこととする。

 なお、第5回報告書から第7回報告書においての個別テーマは「患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した医療事故」としたが、今回は「患者取り違えに関連した医療事故」とした。「手術・部位の間違いに関連した医療事故」については追って報告する。
 

(1)患者取り違えに関連した医療事故の現状

① 患者取り違えの発生状況
 本報告書分析対象期間に報告された59事例において、患者取り違えの発生状況を、「薬剤」、「輸血」、「手術」、「治療・処置」、「検査」、「 栄養 」、「療養上の世話」、「その他」を縦軸に、医療従事者の業務段階を横軸として整理した。件数の多かった上位3つは、薬剤の患者取り違えの実施段階が21件、輸血の患者取り違えの準備段階が6件、検査の患者取り違えの実施段階が5件、であった(図表Ⅲ-2-22)。
 
図表Ⅲ-2-22患者取り違えに関連した医療事故の発生状況

② 患者取り違えが発生した背景・要因
 患者へ処置等を実施する際に、まず第一段階として患者を同定しているかを確認し、第二段階として薬や処置の内容がその患者のものであるのかを確認する。本報告書分析対象期間に報告された59事例において、ⅰ患者同定の間違い、ⅱ処置等の取り違え、の2つに分類し、患者の取り違えが発生した主な背景・要因を分析した。

ⅰ患者同定の間違い
 患者同定の間違いに関するものは12件あり、ひとつの医療事故から複数の背景・要因について報告された。その中で多かったのは、ルール違反に関すること、取り違えを誘発しやすい環境に関することであった。
 
 ルール違反は、患者確認(名前を声に出す、患者に名乗ってもらう、ベッドネーム、リストバンドなどを見る)を怠った、復唱のルールを守らなかった、食札と処方箋・内服薬は確認したので大丈夫だと思い、患者と食札の確認を怠った、などがあった。
 
 確認の工程の第一段階は患者同定、第二段階は処置等の内容がその患者のものであるのかの確認であるが、勘違いや思い込み、あるいは焦りなどにより、確認の工程の第一段階である患者同定を怠り、「○○さんである」という前提で確認の工程の第二段階を行っていることが伺える。事故発生後に確認の工程を振り返り、「確認しているつもりでしていなかった」ということに気付いている。

 取り違えを誘発しやすい環境は、同室に同姓同名の患者がいたことや同じ処置が必要な患者がいたこと、患者の前で別の患者の指示が出されたため、患者を間違えたことがあった。

 この他、患者に難聴があり違う名まえを呼ばれても「はい」と返事をしたなど、患者側の要因もあった。
 
ⅱ処置等の取り違え
 処置等の取り違えに関するものは47件あり、ひとつの医療事故から複数の背景・要因について報告された。その中で多かったのは、ルール違反に関すること、取り違えを誘発しやすい環境に関することであった。

 ルール違反は、確認の工程の第一段階の患者同定の確認後、第二段階の薬や処置の内容がその患者のものであるのかの確認が守れなかったということである。患者同定の確認をすることで、第二段階の確認への意識が薄くなってしまう現状が伺える。また、業務の中断後、どこから業務を再開するのかが明確でないものや、確認の具体的方法が明確でないものもなどがあった。

 取り違えを誘発しやすい環境は、ものの配置が背景・要因となるものが多かった。処置台が乱雑で、整理・整頓されていなかった、患者の注射箋と薬剤とを別の場所に置くようになっていた、など作業環境の整理整頓の重要性を伺うことができるものがあった。また、複数患者の注射器をまとめて1つのトレイに入れてワゴンで運んでいた、1人で同時に3人の患者の処置の準備をした、など作業効率の向上と安全の確保を両立することの難しさを伺うことができる背景・要因もあった。
 
③ 患者取り違えの発見の契機
 本報告書分析対象期間に報告された59事例において患者取り違えを発見した契機は、「実施後、後片付けをしていて自分で気付いた」、「他のスタッフが気付いた」といった実施後の発見や経過観察の過程での発見や、「前回の検査結果と比べて同一患者と思えない結果だった」という患者の状態を評価したことによる発見もあった。また、「患者あるいは家族から指摘を受けて発見した」と、患者や家族も事故の防止や発見に関わっていることが報告された。

④ 患者取り違えを防ぐ取り組みの現況から見えること
 本報告書分析対象期間に報告された59事例において、患者取り違えの報告の中で、確認のルールはあるが、「確認がされなかった」、「不十分な確認であった」と事例を振り返っている。次に、取り違えにおける不十分な確認の内容と患者の取り違えを防ぐ取り組みである「確認」に対する医療機関の取り組みの現況を分析した。

ⅰ取り違えにおける不十分な確認の内容
 指示出しや患者に実施する直前に、何らかの「確認」をしたが、結果的に患者が同定されなかったことや患者と処置等が照合されなかったということが「不十分な確認」として報告されている。
 
 「不十分な確認」の内容は、オーダリング画面に表示された患者氏名の最後の文字で判断した、ホッチキスで止めてあった複数の薬袋のうち、1番上の薬袋の氏名で確認した、マニュアルでは輸血と伝票と患者カルテで確認することになっているが、カルテを使用しなかった、などがあった。また、緊急における確認の役割分担が明確でなかった、ルールがなく確認の方法がスタッフ個人に任されていた、忙しい状況で患者を待たせており焦りがあった、準備段階での確認で「確認は済んでいる」という意識があった、などがあった。
 
 医療現場は複数の業務が同時に進行し、さらにその業務は患者の状況に応じた変更や修正が必要となり、最初に計画した業務は刻々と変化する可能性がある。そのためひとつの業務に集中できず、また業務の変化に対応できず、不十分な確認となる現状がある。
 
ⅱ医療事故後の医療機関の取り組み
 患者取り違えを起こさないために、医療機関の中には「目で確認、指差し確認、声だし確認する」といった確認の取り組みや、PDAを導入し、機械的に患者認証ができる仕組みを構築しているところもある。また、「患者に名乗ってもらうことを外来案内で表示し、患者に協力を得る」ことや、「薬袋や点滴ラベルに記載されている患者氏名を患者自身にも目視で確認してもらう」といった患者参加の取り組みや、「患者に名乗ってもらうだけではなく、さらにベッドネーム、リストバンドで確認する」という対策をとっているところもある。
 

(2)患者取り違えに関連したヒヤリ・ハット事例の現状

 第29回および第30回ヒヤリ・ハット収集事業において、記述情報のテーマにあげられた患者取り違え、手術・処置部位の間違いに関連した事例の中から患者取り違えに関連した事例について分析を行った。患者取り違えに関連した事例の発生状況について、「薬剤」、「輸血」、「手術」、「治療・処置」、「検査」、「栄養」、「療養上の世話」、「その他」と事例の概要を縦軸に、「指示出し」、「指示受け・申し送り」、「準備」、「実施」、「実施後の観察及び管理」、「その他」と医療従事者の業務段階を横軸とし図表Ⅲ-2-23に示す。
 
図表Ⅲ-2-23ヒヤリ・ハット 患者取り違えの発生状況
 
 報告された事例の中から53件の事例概要を図表Ⅲ-2-24に示す。

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)

図表Ⅲ-2-24ヒヤリ・ハット事例 記述情報(患者取り違え)
 

(3)患者取り違えに関連した医療安全情報の提供とその後の報告の現状

 患者取り違えに関連した医療安全情報として、平成19年10月医療安全情報No.11「誤った患者への輸血」および平成20年12月医療安全情報No.25「診察時の患者取り違え」を提供した。

① 医療安全情報No.11「誤った患者への輸血」
 輸血に関連した医療事故の中から、輸血用血液製剤を接続する際に、患者と使用すべき製剤の照合を最終的に行わなかったために誤った患者に輸血を投与した事例6件について、情報提供を行った(集計期間:平成16年10月から平成19年6月30日まで)。平成19年10月の情報提供後、平成21年3月31日現在まで、同様の事例は1件(本報告書図表Ⅲ-2-1No.33)であった。
 
② 医療安全情報No.25「診察時の患者取り違え」
 患者取り違えに関連した医療事故の中から、診察時、口頭で患者氏名を確認したにもかかわらず患者を取り違えた事例3件について、情報提供を行った(集計期間:平成16年10月から平成20年8月31日まで)。平成20年12月の情報提供後、平成21年3月31日現在まで、同様の事例の報告はなかった。
 


参照:第17回報告書(PDF形式)患者取り違えに関連した医療事故
情報提供:公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部


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