【3】パワーハラスメント(パワハラ)① 精神的な攻撃│ハラスメント対処のポイント
- 公開日: 2019/9/7
パワーハラスメント6つの行為分類
職場のパワーハラスメント(パワハラ)とは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為をいいます。
パワハラには、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係の切り離し」「個の侵害」「過大な要求「過小な要求」の6つの行為分類があります。「身体的な攻撃」については、その名称のとおり、叩く、殴る、蹴るなどの暴行のほか、書類などで頭を叩くなどの行為もそれにあたります。ここからは「身体的な攻撃以外の5つの行為を詳しくみていきます。
パワハラの代表格「精神的な攻撃」
「あなたのために言ってあげている」――パワハラの代表選手のような言葉です。このようなときは、「申し訳ないけど、頼んでいません!」と心のなかで大声で言い返して健全な心を守りましょう。
本当は心のなかだけでなく、声に出して言えたらどんなにかすっきりすることでしょう。ですが、このような言葉を吐く人に何か言っても、所詮聞く耳はもってくれませんから、やめておきましょう。
きつい言葉を放っている自分を棚に上げ、相手のためにむしろ言いにくいことを言ってあげているのよと、言われる相手に責任を転嫁しているこの状況は、非常にやっかいなものです。
このようなタイプの人とまともにかかわっても、わかり合えるものではありません。むしろ「人のことをそこまで真剣に考えられるのはどうしてなんですか。教えてください!」と、熱い質問を投げかけてみてください。そうすることで、相手はほめられて気分がよくなり、饒舌に自分の武勇伝を語り始めるかもしれません。人は1つのことしか話せませんから、いつしか話題はあなたではなく、自分の自慢話でもちきりになっていることでしょう。ひとしきり武勇伝を聞いたら「勉強になりました!またぜひ、ご指導ください!」と、さわやかに立ち去ることをお勧めします。
このように、「あなたのために言ってあげてるのよ」から始まる長時間の叱責や、後輩や同僚の前で執拗に叱られたりすることを、パワハラの6つの行為分類のなかでは「精神的な攻撃」とよびます。
部下からのパワハラもある
パワハラとは、必ずしも上司から部下へ引き起こすものではなく、背景にある職場内の優位性が関係するというところもポイントです。
例えば、部署の異動で4階から5階の病棟に新しく師長が配属された場合、新しい師長は5階病棟のことには詳しくありません。そういったときに、5階病棟のことを知り尽くしている部下が、師長に5階の事情や仕事を教えないといったことも、職場の優位性を使ったパワハラにあたります。
ここで、筆者の夫の身に起きた出来事を例として挙げてみましょう。
ある転勤先で夫の部下にあたる女性が、夫が目の前にいるのにもかかわらず、仕事の進捗状況をわざわざメールで確認してくるため「嫌だ」とよく嘆いていました。忙しさにかまけてなかなか進められていない仕事の進捗状況を「あの件はどうなっていますでしょうか?」と、わざわざメールで、しかもCCには夫の上司を入れて、確認してくるというのです。夫は「早く転勤したい」と弱音を吐いていましたが、筆者が「それってパワハラだよ。部下の立場にある人がやった行為でもパワハラってよぶんだよ」と話すと、とても憤慨して社内のハラスメント本部にすぐに訴えに行っていました。
実は、この女性部下は、夫のように他県から転勤してくる上司に向けて、このような対応をすることで有名だったのです。嫌がらせの原因は、夫がこの部下に対して目標管理面談をしたとき、目標が達成できていなかったので評価を下げるしかなく、その面談をきっかけに不満をもたれたかもしれないと、夫は言っていました。メールが面談の次の日から送られてきたところをみると、面談の腹いせに彼女には「仕事が遅い上司を、そのまた上司に報告することで懲らしめてやりたい」という本心があったと感じられます。
まだまだ知られてはいませんが、パワハラは上司の立場にない人でも起こしてしまう可能性があるものなのです。
(ナース専科2018年6月号より転載)
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