2要因実験計画|“実験計画”の考え方②
- 公開日: 2026/1/8
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「実験計画の考え方①」では、1要因の実験計画の例を通して、実験計画の基本的な考え方を紹介してきました。本稿では、もう1つ要因を加えた2要因の実験計画について考えていきます。こうした実験計画を立てる際の論理的な考え方は、研究だけではなく、看護実践においても重要です。そこで、後半のセクションでは実験計画と看護過程との共通性から、実験計画を組み立てる考え方を学ぶ重要性についても考えていきたいと思います。
1.2要因の実験計画を考える
2要因実験計画の基本的な考え方
研究の目的によっては、1要因だけではなく、2要因以上のデザインを検討する必要性が生じる場合があります。今回は2要因の実験計画について、「実験計画の考え方①」で扱ったユニフォームの色(独立変数)と好感度(従属変数)の例を用いて考えていきます。基本的な考え方は、1要因の実験計画と変わりありませんが、2要因以上の計画になってくると、交互作用という考え方が重要になってきます。
「実験計画の考え方①」では、1要因(色)、3水準(白・ピンク・紺)の独立変数が、好感度に影響するのか検討するための実験計画を考えました。ここでは、2要因の実験計画(参加者内計画)の例として、ユニフォームの色の効果が、ユニフォームのスタイル(パンツタイプかワンピースタイプ)によって異なるのではないかということにも関心があったとします。この場合の実験デザインでは、色要因(白・ピンク・紺の3水準)の他に、スタイル要因(パンツ・ワンピースの2水準)を組み込む必要があります。2要因の実験計画になると、要因同士の組み合わせによって実験条件が増加します。今回の例の場合は、色要因3水準とスタイル要因2水準の組み合わせにより条件数は全部で6条件になります。
ここでは、実験参加者の個人要因を統制するために、各参加者には6条件すべてについて評価してもらい、それぞれの従属変数を測定する場合を考えます。つまり、この場合は色要因もスタイル要因も参加者内計画となります。実験では3色それぞれのパンツタイプとワンピースタイプのユニフォーム画像を用意し、その画像を実験参加者にランダムに呈示することになります(図1)。
図1 2要因(2×3の6条件)参加者内計画
※上記の例は2要因ともに参加者内計画ですが、その他、2要因ともに参加者間計画というデザインや、1つの要因は参加者間計画、もう1つの要因は参加者内計画といったデザインも考えられます。参加者間計画と参加者内計画を組み合わせた実験デザインは混合計画と呼ばれています。1つの例として、スタイル要因は参加者間計画、色要因は参加者内計画という実験デザインが考えられます。この場合、ある実験参加者はパンツタイプの3色のユニフォームそれぞれについて評価し、別の実験参加者はワンピースタイプの3色のユニフォームそれぞれについて評価するということになります。
2要因以上の実験計画で現象への理解を深める
2要因以上の実験計画で、特に重要になってくるのが交互作用という考え方です。色要因、スタイル要因ともに参加者内計画とした結果、以下のグラフ(左)のような結果が得られたとします(図2)。このグラフから何が読み取れるでしょうか。白色やピンク色の場合は、パンツタイプでもワンピースタイプでも好感度の評定にあまり差がないように見えますが、紺色の場合には、パンツタイプの方がワンピースタイプより明らかに高く評価されています。このようにある要因(色)の効果のあり方が、他の要因(スタイル)によって異なるとき、この2つの要因には交互作用があると考えられます。一方で、この2要因に交互作用がない場合には、右のグラフのように、色による評価の違いがスタイル要因に影響されず、水準間で平行に近い結果になります。交互作用がある左のグラフの場合、もしスタイル要因を組み込まずに(つまり、パンツタイプとワンピースタイプを分けずに)、色要因だけで検討していたら、紺色の評価は白色よりも平均値がやや低い結果になりますので、看護師のユニフォームとして、スタイルの違い を問わずに白色が推奨されることになります。しかし、スタイル要因を組み込むことで、パンツタイプは紺色、ワンピースタイプは白色の好感度が高いという結果が得られるため、1要因で分析した場合の結果と2 要因で分析した場合の結果では、読み取ることのできる内容が異なったものになります。
図2 交互作用あり(左)となし(右)の結果の比較
このように実験計画を立てることによって、明らかにしたい事柄について理解を深めることができます。もし、ユニフォームの印象を知るために、実験計画を立てずに、白色のユニフォームだけの印象を評価してもらった場合(あるいは、パンツタイプだけの印象を評価してもらった場合)、そのデータから得られる知見は限定的です。一方、実験計画を立てることで、色による違いやスタイルによる違い、そしてそれらの要因の交互作用の有無に言及することができ、病院に勤務するスタッフのユニフォームカラ-の選定に役立てる等、多くの知見が得られるでしょう。
2.実験計画と看護過程との共通性
実証的な研究において実験計画を論理的に組み立てるための考え方を学ぶことは、研究を実施する上で必要であることは言うまでもありませんが、実験計画の考え方は、日常的な看護実践における看護過程との共通点も多いため、看護学生や現場で活躍する看護師など、多くの人の参考になるかもしれません。
看護過程は、患者さんの状態をアセスメントし、看護診断をした上で、看護計画を立て、それを実施し評価するという一連のプロセスから成り立ちます。普段から現場で働く看護師は、患者さんの観察を通して、看護計画を立てながら、どのような看護介入(実験計画で言うところの独立変数)が、患者さんの状態(実験計画で言うところの従属変数)に影響したのかについて自然と考えていると思われます。
例えば、仰臥位姿勢で臥床していることが多い患者さんが腰痛を訴えていたとします。看護師は、その痛みの部位や程度などを評価した後、痛みを軽減させる方法を考えることでしょう。鎮痛薬が頓服として処方されている場合は、それを使用することを考えるでしょうし、体位変換をすることによって、痛みを軽減できないかとも考えます。そして、患者さんが強い痛みを訴えている場合には、臨床現場ではその両方の介入(鎮痛薬と体位変換)を同時並行的に実施することもあるでしょう。もし、この患者さんにとって、痛みを緩和する最適な姿勢は何かについて知りたい場合、看護師は完全側臥位、45度の側臥位、30度の側臥位など、患者さんの痛みを評価しながら、さまざまな姿勢を試すことが考えられます。この手続きは、まさに姿勢という要因について、3水準(完全側臥位、45度、30度)を操作し、従属変数である痛みの程度を評価するということになります。しかし、完全側臥位を試した後に、鎮痛薬を内服し、45 度や30 度の側臥位に姿勢を変えた場合、45 度や30 度での痛みの軽減は、姿勢によるものか、薬の影響によるものか判断できなくなります。そこで、患者さんが体位変換の痛みに耐えられるのであれば、少しだけ鎮痛薬の使用を待ってもらい、さまざまな姿勢を試してもらうことが、最適な姿勢を見出すきっかけになるかもしれません。これは、まさに、独立変数の従属変数への影響を明らかにするために必要な剰余変数の統制に相当します。
このように看護過程において、看護師は独立変数(姿勢)を操作し、従属変数(痛みの程度)を測定し、剰余変数(鎮痛薬のタイミング)を統制するということを行います。もちろん、実際の現場では、経時的に患者さんの状態は変化し、看護介入をする看護師も交代するため、実験のように剰余変数を完全に統制することは難しいとしても、臨床現場という複雑な状況下において、どの要因が患者さんの健康状態に影響を及ぼしたのかを探る思考プロセスは、実験計画の考え方と共通していると言えるでしょう。
図3 看護過程と実験計画
3.まとめ
2 要因以上の実験計画であっても、基本的な考え方は1 要因の実験計画と変わりありません。ただし、2要因以上になると交互作用という考え方が重要になってきます。要因を増やしすぎると、結果の解釈が難しくなる場合もあります。そのため、研究目的に常に立ち戻りながら、焦点を当てるべき要因について考え、計画を立てるとよいでしょう。
近年では、看護研究において、視線や身体の動きの計測や、自律神経系活動などの生体情報計測など、さまざまな装置を利用したデータ収集ができるようになっています。しかし、どんなに立派な装置を使ったとしても、実験計画なしにデータを測定するだけでは、得られた結果から言及できる内容は限局的になります。そのためにも、実験デザインを考えることは重要です。また、研究に関心がない看護師や看護学生においても、実験計画を立てる思考プロセスから得られる学びは、看護実践において役立つものだと考えられます。
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参考文献
●南風原朝和:心理統計学の基礎-統合的理解のために.有斐閣,2002.
●高野陽太郎・岡隆,編:心理学研究法-心を見つめる科学のまなざし〔補訂版〕.有斐閣,2017.
●古谷野亘・長田久雄:実証研究の手引き-調査と実験の進め方・まとめ方-.ワールドプランニング,1992.
