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【連載】ナースのための接遇セミナー

第5回 【ナースの接遇】クレーム対応の考え方

  • 公開日: 2014/2/17
  • 更新日: 2020/10/21

怒りなどのマイナス感情をもつ患者さんには、どう接したらいいのでしょうか。いわゆるクレームにつながりやすい場面で、医療人として適切な対応をとるための基本の考え方と心構えのヒントを紹介します。


▼看護師のコミュニケーションとマナーについて、まとめて読むならコチラ
看護師のコミュニケーションとマナー


こんな「場面」は身に覚えがありませんか?

Episode1 長い待ち時間に怒る患者さん

 ──待合室で「順番はまだか」と繰り返し訴える患者さんがいます。「順番でお呼びします」と伝えた際には、「予約なのに、なんでこんなに待たせるんだ!」と強く怒鳴りました。改めて、「新患の患者さんの影響で、予想以上に時間がかかっている」ことを伝えましたが、もう待ちきれない様子。

説明を繰り返しても、納得してもらえそうにはないこんなとき、あなたならどうしますか?

Episode2 間違えたのは患者さんだけれど……

 ──検査を受けるため、窓口に訪れた患者さん。名前と診察券を確認しましたが、今日の検査者リストには入っていないようです。「今日のご予約ですか? 予約日をお確かめいただけませんか?」と言うと、「えっ、そんなはずはないが」とのこと。ナースが改めて確認すると、その患者さんの検査日は翌日であることがわかりました。「明日の予定になっていますが……」というと、患者さんは、いかにも怒った表情でプイと帰ってしまいました。

ナース側の間違いではないものの、かなり後味が悪い……。どのような対応をすればよかったのでしょうか?

問題に発展しやすいクレームとは?

 クレームの種類には、主に3つの種類があり、それぞれの場合に分けるとわかりやすいです(図1)。

クレームの種類
図1 クレームの種類
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 (1)は、自分自身の行動により起こった不手際(ミス)で相手を怒らせてしまうというものです。例えば、問診時に医師に伝えてほしいと要望があった内容をうっかり伝えそびれてしまった場合など。このようなケースでは、自分自身がすぐに非を認め、詫びることができます。

 (2)は、自分自身が原因ではなく、事務、医師、技師など、他部署の人の行動やシステム上の原因で、不満が寄せられたというもの。そして、(3)は、患者さんご自身の思い違いにより発生するもの。

 これらの3種類の中で、(1)は、ミスの状況が自分自身ですぐわかるので、その旨を詫び、対処できるのですが、(2)と(3)は、状況もわかりにくく、ミスの原因についても「自分が悪いわけではないのに、なぜ怒られなくてはならないの?」という心の反応が生じ、なかなか率直にお詫びしにくいことがあります。

相手の非よりまず、身内に非がないか?

 エピソード1は、どこのクリニックでもよくあるケースだと思います。図1の(2)のケースにあたりますが、対応する際には、「お待たせして大変申し訳ありません」と、まず一言添える必要があります。

 最近は“予約制”の導入が進み、期待を寄せて来院する患者さんも多いはずです。ところが、予約制といっても必ずしも時間通りに進むわけではありません。そこで、予約制であっても時間通り診療ができるという保証が難しい場合が多いことを、予約時に予め情報として簡単に伝えておくと、患者さんの心づもりができて、クレームをある程度は防げるのではないかと思います。

対応例【予約を取る際】

 「当院は予約制となっておりますが、新患や急患の方の対応で時間がかかってしまうケースもございます。そのような場合は大変申し訳ありませんが、最大で2時間お待ちいただくこともございますので、この後のご予定は少し余裕をもたれたほうがよろしいかと思います」

 エピソード2は、(3)の「患者さんの思い違い」にあたる例です。本来なら窓口での対応次第で、怒りやクレームを生まずに問題は収まります。エピソード2で問題となったのは、予約を確認する際のナースの対応。「もう一度確認していただけますか?」のように、相手に間違いがあることを前提にした対応をとってはいけません。「申し訳ございません」という言葉を使い、こちらに不備がある可能性に従って、最初の対応をとるべきでしょう。

対応例【予約が見あたらないとき】

 「申し訳ありませんが、本日の予約リストにはお名前が見あたらないようです。もう一度調べさせていただきますので、少々お待ちいただけますか」このように言葉を掛けた上で、別の日に予約されていないかを確認します。

 このように対応すれば、待っている間に患者さんが自らの誤りに気付くかもしれません。そして来院日の間違いが明らかになったら、「せっかく足を運んでくださったのに」という気持ちで言葉を掛けます。行動としては、上司や他部署に連絡して、検査を今日に変更してもらえないか調整を図れたら、さらによいでしょう。窓口でこのような丁寧な対応があれば、たとえ検査が受けられなくても、患者さんの気持ちは治まるのではないでしょうか。

相手がもたらすマイナス要因に「合わせない」「つられない」

 クレーム対応の場面ではよく、「冷静な対応を」などと言われます。要するに、感情的にならないよう、落ち着いて対応すべきということですが、実際にはかなり難しいことが現場を見ていて実感されます。

 普段の何気ない日常場面でも、笑顔で対応されると、こちらも自然につられて笑顔が出ますし、緊張感のある人にはやはりその緊張が伝わり、こちらの表情も硬くなってしまいます。通常は、相手につられてしまうものなのです。

 そこで医療人としては、プロ意識を高め「いい意味でのマイペースを保つ」ということをコツとして実践していただきたいのです。

 相手が感情的になって怒鳴っていても、こちらはいつも通りの状態をできるだけ穏やかに保つことによって、売り言葉に買い言葉というような状態をつくらないようにしましょう。感情をコントロールすることは簡単ではありませんが、「医療のプロならつられない」と心に決め、意識的に行動していくことが大切です。

 最近は稀に、セクハラ的な言動をする患者さんもおり、そのような場面は、「感情をコントロールした対応」が効果を発揮する最たるもの。驚かないで冷静に対応することが、一番確実な撃退策となります。

 仕事を通じて人としての成長ができるチャンスと捉え、プロ意識を持った前向きな姿勢からやりがいへとつなげていきましょう。

好感度upのなるほどポイント

 1. ペーシング:会話のペースを相手に合わせること
 2. ミラーリング:相手の表情、表現などをそれとなく真似て、同じような雰囲気を作り出すこと
 3. バックトラッキング:いわゆるオウム返しのこと。キーワードを繰り返すことにより、相手に「自分のことをわかってくれている」という共感を伝えます。

 いずれも、「相手に合わせる」ための具体的な行動手法なのですが、経験を重ねると無意識にできるようになることもあります。例えば、共感的な態度をとることに長けた先輩の動きを真似たり、意識的に相手に合わせていくうちに、無意識にでもいい行動がとれるようになります。これらを、意識的に行っていると、コミュニケーション能力をさらに向上させることができるのです。

 もし、自分はまだまだ相手に合わせることができていないと感じたら、意識的にこの3つの手法を実践してみてください。コツがつかめれば、人と接する場面で生じるトラブルは、かなり防ぐことができるはずです。

ペーシング

 会話のペースを相手に合わせる

ミラーリング

 表情や表現などをまねて同じような雰囲気を作る

バックトラッキング

 相手の話した言葉を繰り返して共感を示す

(『ナース専科マガジン』2011年12月号より転載)

次回は「クレーム対応の活かし方」について解説します。