外来での待ち時間への苦情
- 公開日: 2011/12/18
患者さんからの待ち時間への苦情は、外来をやったことがあれば一度は経験があることではないでしょうか。
どうすることもできない苦情のように思いがちですが、できることはあるはず。今回は、待ち時間への苦情を受けた際の対応法と改善策について解説します。
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看護師のコミュニケーションとマナー
まずは、不快な思いをさせていることに謝罪しましょう
まず、苦情にしっかりと耳を傾けるようにします。たとえほかの業務があっても、途中で話を終わらせたり、口を挟んではいけません。最後まで聞いた後で、患者さんに不快な思いをさせている事実に対して素直におわびしましょう。
謝る前に、待ち時間が長い理由を話し出す看護師もいますが、とにかくおわびが優先です。医療従事者は何かと忙しいため、「こちらも精一杯やっているのだから仕方がないでしょう」という気持ちになってしまうこともあると思いますが、それをそのまま伝えるのは、自分たちの問題を相手に押し付けることになり、最も悪い対応といえます。
アメリカでは、医療現場で起きた事故や不具合に関して、何よりもまず事実を明らかにし、関係者が誠意をもって謝ることが徹底されつつあります。この態度によって、医療訴訟を減らすことができているというデータもあります。
患者さんの苦情の大小にかかわらず、謝罪の態度を示すことが大切です。
待ち時間の苦情がなぜ多いのか、その理由を考える
誠意あるおわびの後は、状況説明と情報提供を必ず行います。このケースの場合は待ち時間に対する苦情ですが、それらが多い理由を考えてみたことはありますか。
「自分より後に来たように見える人が呼ばれたのに、自分はまだ呼ばれない」「今、何人待っていて、あとどのぐらい待てばいいのかさっぱり見当がつかない」など、待っていることそのものよりも、状況がわからないことへの苛立ちのほうが大きい場合が多いのです。情報提供がいかに大切かがわかります。
近年では、診察券の受付時に番号札を発券し、電光掲示板によって順番を表示するシステムを取り入れている病院も増えてきましたが、思いついてすぐに導入できるものではありません。しかし、工夫次第で同様の効果を生むことはできます。
例えば、手作りカードとポストを診察室前に設置し、診療科ごとの受付時に患者さんにカードを配布。診察の順番が回ってきたら患者さんがカードをポストに入れるようにします。ポストには中が見える窓がついており、現在受診している人の番号がわかるという仕組みです。経過がわかれば、待ち時間を見越して用事を済ませる患者さんもいるかもしれません。
「うちの病院では無理」とあきらめずに、できることから取り組んでいきましょう。また、診察内容によっては順番が入れ違うこともある旨を掲示しておく配慮も必要でしょう。
我慢できる「待ち時間」と我慢できない「待ち時間」
一口に「待ち時間」と言っても、その種類はさまざまです。
まず「最も待ちたくない時間」は、会計のための時間や薬をもらうための時間。診察や治療は終わっているので、一刻も早く病院を出たいと思うのが普通です。それに対し、本来の目的である診察を待つのは、患者さんには比較的「待てる時間」になります。
ただし、それが何分待つのか、何のために待つのかわからない場合は、一転して「最もつらい待てない時間」になってしまいます。「待てない時間」が長くなればなるほど、患者さんのストレスは大きくなります。患者さんの心理を理解し、可能な限り負担を取り除く配慮が必要です。
苦情への対策が看護師の負担軽減につながることも
こうした取り組みは、実は看護師の負担軽減にも一役買うことになります。患者さんからの苦情が減れば、ほかの業務にかけられる時間が増え、全体として丁寧な仕事ができるようになります。さらには、万一苦情があった場合にも、その患者さんの話を聞く時間をしっかり確保することが可能になります。患者さんのためと思って行うことが、ひいては自分たちの働く環境の改善にもつながるというわけです。
苦情を受けるのは気持ちのよいものではありません。しかし裏を返すと、現場の不備な点や改善すべき問題などを教えてくれる、非常に大切な情報源ともいえます。
一つの苦情は、その陰に隠れている数多くの苦情の一端かもしれません。苦情の予防対策を十分に練ったうえで、上司やスタッフ間の縦の関係を整え、さらには他部署への報告により情報の共有を図るなど、院内全体のサービスの向上につなげていく意識も大切といえるでしょう。
こじれてしまったら「3変法」で対処
待ち時間に限らず、看護師が苦情を受ける機会は少なくありません。場合によっては、こじれてしまうこともあるでしょう。
相手の感情が高ぶってしまって通常の話し合いがもてないような場合、3つの「変」を上手に取り入れます。それは「場所」「人」「時間」を変えるということです。
上司に取り次ぐ、応接室など静かな場所や個室に案内する、日時を決めてこちらから改めて訪問するなど、物理的・時間的な間合いをとるのです。間合いをとることで、患者さんの気持ちが落ち着いたり、気分が変わることはよくあることです。また、特別な応対をされたと感じ「大事に扱ってもらった」と感情が治まることもあります。
ある程度話を聞いても状況に変化がみられない場合は、タイミングよくこの3変法を取り入れてみましょう。
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