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【連載】ナースのための接遇セミナー

第6回 【ナースの接遇】クレーム対応の活かし方

  • 公開日: 2014/3/3

怒りなどのマイナス感情をもつ患者さんには、どう接したらいいのでしょうか。いわゆるクレームにつながりやすい場面で、医療人として適切な対応をとるための基本の考え方と心構えのヒントを紹介します。


▼看護師のコミュニケーションとマナーについて、まとめて読むならコチラ
看護師のコミュニケーションとマナー


こんな「場面」は身に覚えがありませんか?

Episode 説明しすぎて怖がらせることに……

 ──外来での採血の場面でのことです。看護師Aさんが担当している患者さんの血管が動きやすく、少し手間取っています。やっと血管を固定し、針を刺すというところです。

看護師A 「少しちくっとしますね」
患者さん 「……」(眉を寄せてじっとしている)
看護師A (針の刺入角度を変えながら、少し手間取っている様子)「ちょっと(針が)動きますね。痺れたりしたら、すぐおっしゃってください」
患者さん 「!」(思わず、少し身じろぎする)
看護師A 「あっ、大丈夫ですか?! 動かないでくださいね。はいっ、終わりました。」
患者さん 「ふうーっ、もう、いやでしたよ!『針が動く』とか『痺れる』なんて聞かされると、想像してしまって怖かったじゃないですか! 私実は、採血されるのが苦手なんですよ」
看護師A 「あっ、すみません。すみません……」

 ※患者さんが不安にならないよう、逐一経過の説明をしたつもりだったのに、患者さんにこのように言われて、平謝りする看護師。あなたはどう考えますか。

「察する力」を身に付ける

 エピソードのケースでは、接遇の基本行動である「接遇6原則」(見る・聴く・届ける・伝える・意識を持つ・安心感を与える)の中の、まさに「見る」ことが足りていなかったのではないでしょうか?「見る」といってもただ見るだけではなく、相手の状況を把握するために察する力を身に付けなければなりません。

 採血中、こちらが手技に気をとられて、相手の様子を見ることができないと、相手が不安や恐怖を感じていることを察知できないままクレームに発展してしまいます。

 この患者さんの場合は、看護師Aさんが血管を探すのに手間取っているときから、不安を感じていたのかもしれません。身を固くしてただ「採血がなんとか早く終わってほしい」とじっと耐えているとしたら、『針が動きます』『痺れたら……』などの説明は、逆に不安をあおることになるでしょう。

 採血がスムーズにいかないとき、看護師は、その状況を患者さんがどのように感じているかを、表情や体の様子から察することが大切です。

「念のための確認」でクレームを避ける

 「注射が苦手」というのは、なかなか患者さん自身からは言いにくいものです。このエピソードでは、「念のため確認なのですが、採血で具合が悪くなられたことはありせんか?」などと確認をしていれば、問題を防げたかもしれません。

 また途中経過を伝えると大抵は安心感を与えますが、このケースは却って不安を増長させてしまいました。相手がどういう人かによっては、伝えることを控えたほうがよいこともあるという難しい例です。

 どの患者さんにも同じ対応をしていると、どうしても「事務的・機械的」で「自己中心的」な接し方になり、クレームや人的トラブルが起こりがちです。そうなると、「自分は一生懸命やっているのに、なぜこのような目に遭わなければならないのか」と感じ、仕事がつらくなってしまいます。

 ルーチンの業務のなかでも、「この患者さんには、どのような対応するのがよいだろうか」と考えるよう心がけ、コミュニケーション能力を高めていっていただければと思います。

クレームの予防策
図1 クレームの予防策

クレームを受けたときの「心のもち方」

 現場でのクレームは、その重大性に応じて、クレームレベルⅠ(前向きクレーム)、クレームレベルⅡ(後ろ向きクレーム)、クレームレベルⅢ(アクシデント)の3段階に分けて考えています。

 クレームレベルⅠは、「またこの病院に来たい」という思いをもつ患者さんからの建設的な意見です。クレームレベルⅡは、ミスや行き違いに対して患者さんが表した怒りが解消されず、師長などが対応すべきクレーム。クレームレベルⅢは、裁判になったりニュースになるほどの問題で、現場レベルでの対応を超えたものです。

 事例1は、クレームⅠに含まれるものといえます。クレームⅠのようなものでも、患者さんから直接に話を受けた看護師は、「申し訳ありません」とつい何度も謝り過ぎてしまうことがあります。けれども、その方からすれば文句を言いたいのではなく、あくまでも良かれと思って親切心で職員に伝えていることも多々あるのです。その場合は、お詫びの言葉を伝えたあとで、「ご指摘いただきありがとうございます」「前向きに検討させていただきます」などの言葉を添えると、指摘を前向きにとらえていることが患者さんに伝わります。患者さんにとっても気持ちよく会話を終えることができることでしょう。

 ちなみに、ナースが対応するときの謝り方ですが、「ごめんなさい」では幼稚すぎます。「すみません」も丁寧さが今一つ足りないように受け取られます。「申し訳ございませんでした」と丁寧にしっかりと相手に対して気持ちを載せて心から伝えることで、相手に真摯な姿勢が伝わります。

好感度upのなるほどポイント

 医療職には、向学心が強く、努力家の人が多いように思います。その結果、自分に厳しく、知らず知らずのうちに、他人にも厳しさを求めてしまうことがあるように見受けられます。看護師の皆さんのなかにも、心当たりのある方もいるのではないでしょうか。

 誰でも人の「いいところ」より、「悪いところ」のほうが目に付きやすいといわれていますが、「自分自身を認めて褒める」という習慣を付けることにより、相手の良いところも見付けやすくなるのです。この練習をしてみませんか。

 まずは、自分自身が「頑張っている」と思うことを、1分間で具体的に書き出してみてください。「朝早く起きて子どものお弁当を作っている」というようなことでもよいでしょう。とにかく思い付くまま、たくさん書き出してみて、「頑張っている、よくやっている、えらい」と褒めてみましょう。

 その次に、自分が苦手だと思う人を「承認」してみてください。一生懸命考えてみると、1つぐらいはいいところが見付かると思います。「口調は荒いけど、仕事で困ったときには、どんなに忙しくても必ず話をきいて助けてくれる」など。

 そのような考え方の「癖」を付けると、自分自身も自信がつきますし、相手をも許容できるようになります。自分の良いところを見付けて認めることができる人は、相手の良いところ見付けやすくなるのです。その結果人間関係が良好になり、より働きやすい環境が作り出すことができるのです。ぜひ「良いところを認める」という「承認」の習慣を取り入れてみてください。看護師の皆さんには、コミュニケーション力を高め、現場で一層輝き続けていただきたいです。

(『ナース専科マガジン』2011年12月号より転載)

 「ナースのための接遇セミナー」は今回で連載終了です。

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