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【連載】看護師のための輸液講座

第6回 輸液剤の使い分け

  • 公開日: 2009/7/29
  • 更新日: 2020/3/26
  • # 注目ピックアップ
  • # 輸液製剤

輸液剤の使い分け

今回のタイトルは『輸液剤の使い分け』としました。
しかし、『これって、ナースにとってそれほど必要な知識なの?』と思われる方もおられるのではないでしょうか。 確かに、輸液を処方するのはドクターです。ナースではありません。 だから・・・?
しかし、輸液を輸液ラインに接続して投与するのは、ほとんどの場合、ナースです。そうなんです。 実際に輸液を投与するのはナースなのです。 それなのに、輸液剤についての知識がないということは、かなり危険です。 輸液の中身を知らずに投与するって、医療のプロとしてはかなり寂しいと思いませんか?

輸液剤の分類

輸液剤の使い分けは、本当はむずかしいのですが、高度に電解質バランスがくずれている場合や腎機能に異常がある場合以外は、体が自然に調節してくれますので、それほど厳密に考えなくても大きな問題は起こりません。 とにかく、体液の電解質濃度を健常域内に保つために輸液は行われます。 ということは、体液の電解質濃度を知っておく必要があることは言うまでもありません。

体液の電解質組織

輸液剤は、電解質輸液剤、栄養輸液剤、血漿増量剤に大きく分類することができます。

輸液剤の種類

電解質輸液剤は血漿の浸透圧との関連で等張性と低張性に分けられることを覚えてください。
しかし、血漿の浸透圧はいったいどのくらいなのか、ご存知ですか?

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健常人では285±5mOsm/Lです。これも知っておいた方がいいでしょう。 また、高張電解質輸液剤というのは、ほとんどの場合、単一の電解質液で、補正用として使われる、と理解しておけばいいです。

輸液剤の種類

さて、輸液剤は非常に多種類が発売されています。 ジェネリック医薬品としての輸液剤もありますので、本当、種類は非常に多いのです。 しかし、基本的な輸液剤の種類はそれほど多くありません。

輸液剤の種類

(1) 等張性輸液剤

細胞外液補充液とも呼ばれ、生理食塩水と、いわゆるリンゲル液などを指しています。
電解質による浸透圧が血清とほぼ同じであることが特徴です。
これらは投与されると血漿と組織間液(細胞外液)に分布しますので、細胞外液が増加することになります。

1. 生理食塩水
組成は0.9%NaClで、154mEq/LのNaとClのみで構成されています。
細胞外液のNa濃度(145mEq/L)に近いのですが、Clは血清(114mEq/L)よりも高濃度ですので大量に輸液すると高クロール性アシドーシスを引き起こす危険性があります。
1Lの生理食塩水には9gの食塩が含まれていることになります。

2. リンゲル液など
生理食塩水に、生理的に必要なKやCaなどを加えて電解質組成を血清に近づけた組成となっています。 細胞外液補充液として最もよく用いられています。
Naは130mEq/L、Clは109mEq/Lです。手術、外傷、出血など、細胞外液が不足した時に用いられます。
製品としては生理食塩水、ラクテックD、ソリタ、ハルトマン、ヴィーンF&D、ポタコールRなどがあります。 血漿中にはアルカリ成分として重炭酸が含まれています。従って、本来は重炭酸を配合した輸液剤が最も生理的なのですが、技術的に困難であったため乳酸や酢酸が含まれた輸液剤が使用されてきました。
乳酸と酢酸のどちらが有効か?
乳酸は肝臓のみで代謝され、酢酸は全身の筋肉でも代謝されますので、肝機能障害がある場合は酢酸の方が有利だと考えられますが、臨床的に、酢酸の方が優れているというデータは出ていません。
最近、酢酸や乳酸の代わりに重炭酸を用いた輸液剤(ビカーボン)が発売となっています。 やや高価なのですが、重症症例や大量に細胞外液補充液が必要な場合にはよく用いられるようになり、有効性も証明されています。

市販の細胞外輸液補充液

(2) 低張電解質輸液剤

体液より『電解質濃度が低い』輸液です。
実際には糖(ブドウ糖など)を配合して浸透圧を血漿と等しくしています。
しかし、糖は代謝されて『水』になりますので、結果的には体液より浸透圧の低い液を投与したことになります。 その『水』が含まれているため、投与された輸液は、細胞外液だけでなく細胞内液にも分布します。
低張電解質輸液剤
低張電解質輸液は維持輸液とも呼ばれ、1号輸液から4号輸液まで分けられています。
市販の低張電解質輸液
しかし、実は、この分類は日本独自のもので、日本でだけ通用するものです。

1. 1号輸液、開始液(ソリタT1号)
細胞外液補充液を2/3に薄めた液に相当します。
すなわち、ラクテックのNa濃度が130ですので、ソリタT1号のNa濃度は〔130×2/3〕で計算される86.7に近い90mEq/Lという組成になっています。 電解質もかなり多く含んでいますが、かつ自由水もある程度含んだ液となっています。
脱水の性質がわかっていない段階でも大きな問題が起こらない、という意味で『開始液』と呼ばれます。 脱水状態では尿量が減少してKが高くなっている可能性があります。 1号輸液にはKは含まれていませんので、安全に輸液を開始することができる、ということになります。
要するに、Kが含まれていないので、血中K濃度がわかっていない時でも安全に投与できる輸液、という意味があります。 逆に、Kが高い場合にも用いられている輸液です。

2. 2号輸液、細胞内修復液(ソリタT2号)
1号液の投与によって体液が補給され、尿が出始めたら電解質濃度の是正へと方針が移ります。 2号液は1/2~1/3生食の電解質濃度に調製されていて、細胞内電解質であるK、Mg、Pが含まれているのが特徴です。 利尿がついた後の低K血症や細胞内電解質が不足する脱水に用いられるので、『脱水補給液』とも呼ばれています。

3. 3号輸液、維持輸液(ソリタT3号)
電解質濃度が生食の1/3~1/4と低く、その分だけ水分が多く、自由水も補給することができるという特徴があります。 基本的には、水分・電解質の一日必要量が組成の基準となっています。 通常2000mL程度の補給で成人が一日に必要とする電解質と水分をまかなうことができますので維持輸液と呼ばれるのです。 最もよく用いられる輸液です。 ただしKが20mEq/L含まれていますので、高K血症の場合には注意が必要です。

4. 4号輸液、術後回復液(ソリタT4号)
3号輸液に比してKを含んでいない、総電解質濃度が低いという特徴があるため単純に考えれば、3号輸液を用いたいが、Kを入れたくない場合や手術後に尿量が不十分な場合に適応があります。
また、細胞内への水分補給効果が大きいことも特徴です。
以上が電解質輸液の組成に関する理論的な根拠です。
電解質輸液剤の種類と使用目的

輸液剤の使い分け

それでは、実際にはこれらをどのように使い分けるのでしょうか。
まず、外来などで血液検査の結果が出ていない場合に輸液が必要と判断されたら、1号輸液を使用します。 これは、脱水状態に陥っていればKが高くなっている場合がありますし、どのような脱水状態であるかがわからないからです。
細胞外液補充液や維持輸液を使用している場合もあるようですが、理論的にはこれは間違いです。 その後、検査データが判明すれば3号輸液に変更すれば安全な管理ができます。
なぜ2号輸液を使用しないかというと、最近は薬剤部での在庫の面などで2号輸液を採用していない施設が多いことも一つの理由です。 現実的には3号輸液で2号輸液の代用ができると考えてもいいと思います。 ただし、細胞内液の電解質組成として重要なPが含まれていませんので、脱水や高度の低栄養状態に陥っている場合には注意が必要です。
最近はヴィーン3Gなど、MgやPを含んだ3号輸液も開発されています。  日常臨床でいわゆる点滴をする、という場合は、食事摂取が不十分であるとか、脱水状態に陥っているという状況のことが多いようです。 この場合、3号輸液がよく使用されますが、電解質組成には注意しておく必要があります。Kに対する注意も重要です。 
とにかく、輸液剤の選択においては、何でも3号輸液、という考えを捨てることです。 割り切った言い方をすれば、輸液を開始する場合には1号輸液、電解質に大きな異常が生じていなければ3号輸液に変更する、出血などに対する輸液は細胞外液補充液、という原則だけわかっていれば、大きな問題は生じないはずです。

周術期の輸液

今回は話題にしませんでしたが、末梢静脈栄養を行うための輸液剤(アミノ酸加糖電解質輸液、PPN製剤)に関する知識も必要です。 この製剤は、糖、アミノ酸だけでなく、ほぼ維持輸液と同じ組成の電解質が含まれていることを知っておいてください。 ソリタT3号とPPN製剤を交互に投与する場合がありますが、実は、これらのPPN製剤に電解質が含まれていることを知らないから?なんて思ったりもします。
本気でPPNを行う場合には、カロリー投与量やアミノ酸投与量を優先して考えればいいのです。 必要な電解質も、維持輸液としての考え方で補充できます。
もう1点、ナースとして知っておきたい輸液の知識があります。 静脈炎に関する知識です。
静脈炎の発生要因にはさまざまなものがありますが、輸液の浸透圧も一つの要因です。とりあえず、糖濃度が高い方が浸透圧は高く、静脈炎を起こしやすいと理解していただけば結構です。 10%糖濃度の輸液を投与していて、静脈炎を繰り返して輸液ルートを頻回に入れ換えしなければならない患者さんがいたとしましょう。 5%糖濃度の輸液(ソリタT3号など)に変更すれば静脈炎は起こりにくくなるはずです。
なぜ、10%糖濃度の輸液が必要なのか、患者さんの立場にたって考えてみてあげてください。 主治医は『少しでもカロリーを多く入れたいんだ』と言うかもしれません。 でも静脈炎を繰り返すのであれば、そっちの方が患者さんにとっては苦痛です。 別の対処法を考えてあげたい、のではありませんか?こういう点でも輸液に関する知識は重要なのです。

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