第7回 子どもに現れる反応(前編)
- 公開日: 2011/8/30
子どもは、親の病気やそれに伴う生活の変化に巻き込まれたとき、子どもなりに「これまでと違うこと」を察知します。子どもに過大な不安を抱かせないためには、親の病気を伝えていくことが必要となるでしょう。それと同時に、子どもが親の病気についてどう感じているか、子どもの心の変化を把握し、不安の要素を取り除いていくことが必要です。
親ががんになると、子どもの生活は激変する
家族の誰かががんになった場合、子どもを含む家族全体に危機が訪れ、多かれ少なかれ何らかの影響を及ぼします。そしてその危機に対し、家族一人ひとりがそれぞれの方法で反応します。危機の大きさや反応の仕方は、幼い子どもを養育する家族、学童期の子どもを育てている家族など、家族の発達段階に応じてさまざまです。
がんと診断された患者さんは、病気と向き合い、治療を続け、そして治療の副作用やその他の症状をもちながら生活していきます。また、通院や入院治療中は、患者さん自身をはじめ、配偶者などのほかの大人も、家族の互いの役割を補う必要があるため、日々の生活を送ることで精一杯になりがちです。
そのような中で、通常であれば目が届く子どもの様子・変化も、それまでのようには把握できなくなります。また、「話しても分からないから」と、子どもたちはがんや治療に関する話し合いの場から、外されてしまうことがどうしても多くなります。このような家族の変化は、子どもの生活環境を変え、大きな影響を及ぼします。
「なぜママじゃないの?」突然の変化に子どもは……
ケースを一つ紹介します。
いつもは保育園の送り迎えはFさんが行っていましたが、抗がん剤治療の開始に伴い、嘔気や倦怠感が強くなったため、送り迎えを近所に住む義母にお願いすることにしました。
子どもたちには特に知らせず、「しばらくはおばあちゃんと一緒に行こうね」と伝えていました。子どもたちは、当初は義母であるおばあちゃんと大人しく出かけていましたが、あるときから「ママがいい!」と駄々をこねるようになりました。
このケースを子どもの視点に立って考えてみましょう。子どもたちにしてみれば、ある日突然、保育園の送り迎えがおばあちゃんになりました。「なぜ、ママじゃないの?」「いつまでおばあちゃんなの?」「ぼく(わたし)のことが嫌いになったの?」などの思いが抱かれているかもしれません。
子どもの理解力に合わせて、「なぜ、ママが行けないのか」「しばらくはおばあちゃんが送り迎えをするけれど、体調がよくなればまたママができること」などを子どもにも説明することが必要になるでしょう。このように、子どもに生活環境が変わる理由を説明して、不安が少しでも軽減されるようかかわっていくことが大切です。
さまざまなストレスにさらされる子ども
親ががんなどの病気になったとき、子どもにどのような変化が起こるのでしょうか。
これまでも説明してきましたが、特に幼少の子どもは『僕が約束を守らなかったから、お母さんが病気になった』というように、自分の言動が原因で親の病気や死が引き起こされると考える傾向があります。これにより、子ども自身が罪悪感をもつことがあります。
また、年齢を問わず病気や治療の過程で、子どもは「自分に対して関心を向けてもらえない」と感じて、怒ったり、逆にいい子になろうとするなど、行動面、心理面での変化が見られます。
一般的に、子どもは親が病気になることで、混乱したり、不安を抱くようになります。「授業に集中できない」「同級生とちょっとしたことでもめてしまう」など、学校生活で何らかの変化が見られるようになるといわれています。子どもたちの不安は、患者さんのがん診断時から始まるため、医療職による診断時からの子どもへのかかわりが重要となります。
さらに、子どもの年齢が上がるにつれ、塾や学校、部活などの交友関係も広がってきます。親ががんになった場合は、それらに加え、日常生活が変化します。
例えば、定期的に病院を訪問する(つまり、訪問時にしか大好きなお父さん、お母さんに会えなくなる)、十分に親に甘えられないなど、子どもらしく生活することができなくなるため、子どものストレスは増すばかりです。
(『ナース専科マガジン』2010年9月号より転載)
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