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【連載】看護研究はじめの一歩

第6回 量的な分析と結果表示【看護研究】

  • 公開日: 2009/8/24
  • 更新日: 2020/10/22

量的な分析とは

量的な分析とは、身のまわりのあらゆる現象を数字で表現して分析する手法のことです。 これまで、観察法や面接法、質問紙法などについてお話してきましたが、得られたデータが数字や、数字で置き換えたものであった場合はすべて「量的なデータ」として扱います。

量的データの種類

量的データには名義尺度・順序尺度(質的尺度)、間隔尺度・比尺度(量的尺度)などの種類があります。 これらの尺度の種類を知る意義は何なのでしょうか。それは尺度によって分析の方法が異なったり限られたりするからです。 以下に、各尺度の特徴と可能な計算について(表1)に示しておきました。

各尺度の特徴と可能な計算

一次集計

一次集計は、得られたデータを概観したり、どんな特徴があるのかをみたりするために最初に行う分析です。 名義尺度や順序尺度では、度数分布(各階級に属するデータ数)、最頻値(最も頻度の高い値)などを算出します。 間隔尺度や比尺度では、可能な計算が名義尺度や順序尺度に比べて多く、平均値、最大値(データのなかで最も大きな値)、最小値(データのなかで最も小さい値)、範囲(最小値と最大値の差)、分散(データのばらつき)、標準偏差(分散の平方根)などを算出します。

看護師の皆さんは、こうして得られた結果を、あまり大切にしない傾向にありますが、一次集計結果から読み取れる情報もたくさんあるので、十分に吟味してみてください。

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二次集計

二次集計とは、研究目的に応じた分析を行うことです。

以前、「問題と目的」の部分で、文章の最後に「研究目的」をきっちり書く重要性について述べました。

研究目的をあいまいなままにすると、二次集計のときになって、どう集計・分析していいかわからなくなってしまうのです。 当センターにも、困った看護師さんたちによるSOSのメールがたくさんきます。

でも、研究目的がぼやけた上で収集したデータは、やはりどこか焦点がぼやけていて、質も悪く、分析しようにもできないことが多いです。  きちんと「研究目的」を書いておいた場合は、それが、「データを分類、要約したい」のか、「差のあるなしを確認したい」のか、「関係のあるなしを確認したい」のか、「影響要因を明らかにしたい」のか、いったいどれにあたるのか、分析の方針を明確にしましょう。

分析の方針が決まったら、次は自分たちが集めた尺度の種類について確認します。 こうして分析方針と尺度の種類が確認できると、それによって二次集計の具体的な分析方法が決まります。 (表2)にその内容について示しました。

二次集計

独:独立変数(結果にあたる変数) 従:従属変数(原因にあたる変数) 質:質的尺度(名義尺度・順序尺度) 量:量的尺度(間隔尺度・比尺度)

できれば「問題と目的」を作成する段階で、分析のイメージがもてればいいのですが、なかなかそこまでは難しいのが実情です。 分析に詳しい人に「問題と目的」や調査用紙をみてもらうようにして、分析の段階で困らないようにしていきたいですね。

カイ二乗検定

ここではカイ二乗検定について解説します。カイ二乗検定とは「統計的仮説検定」のひとつです。 「統計的仮説検定」とは一体何でしょうか。

例えばあなたが、「経験3年以上の看護師と3年未満の看護師では喫煙率に差があるのではないか」と考え、これを研究目的にしたとします。 データとして経験年数が3年以上か未満か(名義尺度)、喫煙のあるなし(名義尺度)を収集します。そして経験年数3年以上と未満で、喫煙率を比較します。それが下の(表3)です。

経験年数別に見た喫煙の有無

ぱっと見ると、なんとなく経験3年未満の看護師の喫煙率が3年以上の看護師に比べ喫煙率が高いように思いますが、偶然でしょうか。 偶然である確率が低ければ低いほど、偶然ではない確率が高まり、「経験3年未満の看護師の喫煙率は、3年以上の看護師に比べ高い」と言う確信が強くなるわけです。

このようにデータから、ある事柄についての確からしさを確率的な手法を用いて検討していくことを「統計学的仮説検定」といいます。

統計学的仮説検定の手順

統計学的仮説検定では、まず「仮説」を設定します。 通常、わたしたちは「差がある」ことや「関係がある」ことを証明することをめざして研究を始めます。 ところが、この「ある」ということを証明するのは、「ある」の程度が様々なので、仮説としてふさわしくないのです。

そこで、「ない」という仮説(帰無仮説)を設定します。 帰無仮説を支持する確率を算出して、確率が小さければ帰無仮説を捨て、その反対側の「ある」という本来の仮説(対立仮説)を支持するという手順を踏みます。 今回のケースで言うと、帰無仮説・対立仮説は以下のようになります。 帰無仮説(経験3年以上と3年以下で喫煙率に差はない) ⇔ 対立仮説(経験3年以上と3年以下で喫煙率に差がある)

さて、帰無仮説を支持する確率は、どれくらい小さければ帰無仮説を捨てられるのでしょうか。 一般に、5%以下の確率であれば、確率が低いと判断され、帰無仮説は捨てられます。 この5%というパーセンテージを「有意水準」と言います。

ここまで準備ができたら、今度はいよいよデータをコンピュータにかけます。 コンピュータで行っている計算式については、各自で統計の専門書を読み、確認するようにしましょう。 今回のケースのデータをコンピュータで検定した結果は、表4のようになりました。

分析結果

この表のなかで重要なのは「カイ2乗p値」です。 これが、帰無仮説を支持する確率(有意確率)を示しているのです。 この場合、カイ2乗p値は、 そしてはじめに設定していた対立仮説「経験3年以上と3年未満では喫煙率に差がある」が支持されることになります。 「差のあるなし」や「関係のあるなし」、「独立変数への影響因子」を確認するそれぞれの分析・検定方法は、すべてこの統計学的仮説検定の考え方にもとづいているのです。

図表の作成

分析結果が出たら、今度はそれを図表として表現します。 図や表を作成するうえで大切なのは、その図や表をみただけで、内容が分かるようなものにすることです。 そのために注意すべき点は、

  1. 表したい内容によって棒グラフ、線グラフ、円グラフ、レーダーチャートなどを使い分けること
  2. 内容を端的に表すようなテーマをつけること
  3. 縦軸と横軸の目盛や単位、凡例を正確につけること
  4. 検定結果などを組み込むことです。

下図は今回の検定結果を踏まえて、有意確率も図内に挿入してみました。 図表はたくさん作り過ぎるとうるさい感じになってしまうので、必要最小限の主要なものに絞ることも重要です。

経験年数別に見た喫煙率の比較

解説文の作成

図表と解説文はセットとなって、読む人に結果の詳細を伝えることになります。 ファッションショーで言えば、図はモデル、解説はナレーションということになります。

見る人に結果をよりよく知ってもらうために解説文は工夫しなければなりません。 図の見方や、特に注目してほしい点などを強調して解説することになります。

そして忘れてならないのが「統計のルール」を踏まえた記述を心がけることです。 以下は今回の分析結果をルールに基づき解説した例文です。

看護師200人を、経験年数3年以上(100人)、3年未満(100人)の2群に分け、喫煙率を比較したところ(図A)、経験3年以上の看護師の喫煙率は29%、3年未満の看護師の喫煙率は68%であり、経験3年以上の喫煙率が高かった(χ2(1)=30.447、p

カッコのなかに、カイ二乗検定を行った結果が色々示されています。 まずχ2ですが、これはカイ二乗検定を行ったことを示しています。

(1)は「自由度」と言います。自由度とは、カイ二乗検定の場合、クロス集計表の規模を示します。 今回のケースの場合、クロス集計表(表3)の「行」は3年以上・3年未満に分けられ2行、「列」は、喫煙のある・なしで2列になります。 自由度とは、(「行-1」×「列-1」)で示されます。

この場合では(2-1)×(2-1)=1になります。 行数・列数が増えると自由度も増え、それだけ検定がややこしくなります。  30.447は、コンピュータがはじき出した「カイ二乗値」です。

詳しい説明は省きますが、カイ二乗値は自由度とともに、カイ二乗p値を導き出すうえで重要なデータになります。 カイ二乗p値だけを文章中に含めた記述をよくみかけますが、それだけでは説得力に乏しいのです。 できればその背景としての自由度やカイ二乗値についても上記のように記述してほしいものですね。

今回は量的データの分析のほんの「さわり」について解説しましたが、これを糸口にして、統計の勉強を深められることを期待します。 次回は質的な分析について解説します。

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