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【連載】代表的な電解質異常を学ぼう!

低カリウム血症・高カリウム血症|原因・症状・治療・看護のポイント

  • 公開日: 2014/7/28

カリウムの調整機序

血清カリウムの正常範囲

ポイント1 細胞内外でカリウム濃度差が大きい

カリウムは細胞内液の主要な陽イオンで、体内カリウム総量のうち98%が細胞内液に存在し、細胞外液に含まれる量はわずか2%です。

また、細胞内液のカリウム濃度は約100mEq/lと高いのに対し、血清カリウム値は3.5~5.0mEq/lと、細胞内外の濃度比が数十倍と大きいため、細胞内外のカリウム移動によって容易に血清カリウム値は変動します。

例えば、0.1pHの変化で血清カリウム値は0.6mEq/l動きます。この移動に影響を与える因子としては、以下4つなどがあります。

  • 酸塩基平衡状態(pH)
  • インスリン
  • カテコールアミン
  • 浸透圧
  • 例えばpH値が変動したアシドーシスでは、過剰な水素イオンが細胞内に入り、カリウムは細胞外液に出ていくため、高カリウム血症を引き起こします。

    一方、アルカローシスは低カリウム血症を引き起こします。また、インスリンは細胞外液から細胞内液へのカリウムの移行を促進し、カテコールアミンはβ受容体を介してカリウムの細胞内液への移行を促進します。

    ポイント2 副甲状腺ホルモンの亢進減退で調節

    私たちは1日に約40~80mEqのカリウムを経口摂取し、これがまず消化管で吸収されて細胞外液に入り、最終的には95%以上が尿中に排泄されます。従って、カリウム代謝の恒常性のほとんどは、尿中カリウム排泄の調節によって規定されています。

    この調節は主に腎臓の皮質部集合管におけるカリウム分泌によって決定されます。

    ここでのカリウムの分泌量を調節する因子には、

  • カリウム摂取量
  • アルドステロン
  • 集合管の尿流速度
  • Na到達量
  • 非再吸収性陰イオンの存在
  • などがあります。

    血清カリウム濃度異常の背景を捉えるには、低カリウム血症は摂取不足か腎性喪失、腎外性喪失かを考えればよく、高カリウム血症は腎機能低下時での摂取過多か、腎からの排泄低下を考えればよいことになります。

    近年、カリウムの調節系に影響を与える薬剤が多く使用されるようになっています。特にレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)という血圧上昇にかかわるホルモン系に影響する薬剤は、持続性の血清カリウム異常をきたすので注意が必要です。

    図1 RAASのメカニズムと阻害する薬剤

    RAASのメカニズムと阻害する薬剤

    薬剤性のカリウム異常の原因薬剤

    低K血症
    サイアザイド ループ利尿薬 甘草 緩下剤 副腎皮質ステロイド インスリン 炭酸脱水酵素阻害薬

    高K血症
    ACE阻害薬 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬 β遮断薬 スピロノラクトン NSAIDs KCI投与 ヘパリン シスロスポリン

    【関連記事】
    カリウム異常はなぜ起こる?
    カリウムはどうやって排泄されるのか?
    「カリウム濃度異常」への輸液療法|インアウトバランスから見る!

    低カリウム血症

    低カリウム血症の原因

    低カリウム血症は、血清カリウム値が3.5mEq/l未満と定義されています。多くの場合、血清カリウム値の正常範囲は3.5 ~ 5.0mEq/lと非常に狭く、そのためカリウムのわずかな減少でも重大な結果を招くことになります。

    低カリウム血症の主な原因は、

    1. ●カリウムの摂取不足
    2. ●体外へのカリウム喪失
    3. ●細胞外から細胞内へのカリウムの移動

    の大きく3つに分けられます。

    ①は食事などにより、適切なカリウムの経口摂取がされていない場合です。腎臓は尿中へのカリウム排泄をゼロにはできないために、カリウムの摂取不足が低カリウム血症の原因になることは少なくありません。

    ②は下痢や嘔吐、潰瘍性大腸炎などによる消化管からのカリウム喪失と、利尿薬やグリチルリチンなどの薬剤による影響もよく知られています。

    ③はインスリンの投与によるインスリン過剰、アルカローシス、低カリウム血性周期性四肢麻痺、バリウム中毒などがあります。

    特に代謝性アルカローシスによって低カリウム血症が起こることは多いです。一方、低カリウム血症がありアシドーシスとなるのは、下痢か腎尿細管性アシドーシスに限られます。

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