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【連載】患者の語りから学ぶ 看護ケア

第8回 「この痛みが先生が言ってた浮腫」!?症状を表す言葉と患者さんの感じ方のギャップに注意!

  • 公開日: 2015/7/19

医療者が患者の治療・ケアを行ううえで、患者の考えを理解することは不可欠です。しかし、病棟業務の中では、複数の患者への治療や処置が決められた時間に適切に実施されなければならないことが日常的です。また、心身が辛い中で療養している患者は、忙しそうに働いている看護師に対して、自分から治療上の悩みや困難さを訴えるのも勇気のいることでしょう。

そこで今回、患者の病いの語りをデータベース化しているDIPEx-Japanの協力のもと、看護師が患者に対応する上で知っておくべき患者の気持ち・考えを解説します。


症状の出現のしかた、感じ方は患者によって異なる

リンパ浮腫は腋窩リンパ節や骨盤内のリンパ節を郭清した時に生じる恐れのある術後の後遺症です。浮腫と言っても患者さんによって症状の始まりは異なります。患者さんによっておかしいなと気づくポイントも異なるものです。

乳がんで手術をしたあと、リンパ浮腫を発症した患者さんが語る症状のはじまりについて見てみましょう。

39歳で乳がんの診断を受けた女性(インタビュー時46歳)

インタビュー動画

手術後1年ぐらいしたときに、えー、右手のほうに、何ていったらいいでしょうね、あのー、痛み、ピリピリとした痛みが走ったんです。

それで、主治医の先生に、「痛みが走るんです」っていうふうに言ったら、「うーん、肋間神経痛みたいなもんかな」っていうふうにはじめ言われたんですけど、どうも自分ではそうじゃないような気がして。

で、また、次回の、あの、定期検診に行ったときに先生にお話ししたら、もしかしたらリンパ浮腫かもしれないっていうようなことを言われたんですよね。

リンパ浮腫って、手術の説明のときにも、もしかしたら、あの、リンパ節を郭清しているのでむくむかもしれないっていうふうに言われてたんですけど、むくむっていうのはもうはれ上がるっていう状態だと思っていたので、こんな痛みとか、その、ピリピリ感とか、何かあるっていうふうな感じはわからなかったんですね。

「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン 乳がんの語り」より

48歳で乳がんと診断された女性(インタビュー時58歳)

インタビュー動画②

手術前に、乳がんの人で、術後のその腕が腫れるっていうようなことをちゃんと聞いて説明は受けていたんですけれども、まだ、退院して間がなかったんですけども、ちょうどお昼寝をしていて、ぱって起きたら何か腕がむくんでいたんですけど、「ああ、手術した側の手を下にして寝ていたのかな?」って思って。

それが、すぐ、あの、リンパ浮腫っていうふうに結びつけなかったんですね。あの、説明受けて知っていたのに、知識はあったのに。

で、あくる日になったらすぐ引いていって、ま、熱も持っていないし、ただ、ちょっと、むくんでいる感じなのが引いてて、それが、リンパ浮腫っていうのは、そのときは、わからなかったんです。

「NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン 乳がんの語り」より

このように、「ピリピリとした痛み」という一見、浮腫とは関係なさそうな症状から異変に気づく場合もあります。そのほか、半袖の服を着ていて、片方だけきつくて気付いたという人や手を握ったときにぼーっとした感じがしたという人もいました。

患者さんが身体の異変に気づくポイントは人それぞれ異なります。どのような訴えに対しても、慎重に耳を傾け、経過を見ていくことが早期発見につながるのではないでしょうか。

また、事前に術後リンパ浮腫について説明を受けていても、腕の腫れと手術とをすぐに結びつけず、診断まで時間のかかった人もいました。

通常、看護師は、退院時に術後の後遺症の予防や症状が出現した時の対応について説明すると思いますが、なるべく患者さんの記憶に残り、生活の中で実践できるように、具体的な例をあげ、わかりやすい説明を心がける必要があります。

実際にリンパ浮腫を経験している患者さんの話を聞いてみると、生活に密着したさまざまなことが見えてきます。目の前にいる患者さんから得た情報は次の患者さんに活かすことができます。患者さんの話に耳を傾けることは、自分の看護実践能力を高めることにもつながっていくのです。


健康と病いの語り ディペックス・ジャパン(通称:DIPEx-Japan)

英国オックスフォード大学で作られているDIPExをモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

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