第2回 ⺟乳ってすごい!①変化する脂肪含量
- 公開日: 2015/9/25
本連載では、医療人として、母親として理解しておきたい母乳育児について、第一人者である水野克己先生が解説します。
母乳は飲み始めから飲み終わりまでフルコース
母乳中の脂肪は、乳腺細胞からでていくときに細胞膜をまとって球(直径1~10μm)のかたちをしています。
この球は「脂肪球」と呼ばれ、乳腺腔の内壁に付着しています。
乳房がはった状態とは乳腺腔内に乳汁が充満しているため、脂肪球が付着できる表面積が広い状態です。
児が哺乳し、射乳反射が引き起こされると乳腺房を囲む筋上皮細胞が収縮し、乳腺腔内に溜まっていた母乳が排出されますが、繰り返す射乳反射により乳腺腔内の表面積は小さくなり、脂肪球は母乳中にはがれおちていきます。
このようにして授乳開始から乳腺腔内にほとんど母乳がなくなる状態に移行する際に、脂肪含量も大きく増加することになります。
母乳の脂肪含量は変化する
飲み始めの母乳は“前乳”と呼ばれ、脂肪含量は少なくさらっとしており、フルコースの前菜に例えられます。
一方、飲み終わった際に搾った母乳は脂肪含量が増え、“後乳”となります。こちらは、そのこってりした脂肪分から、しばしば、ステーキやフルコースを締めくくるデザートに例えられます。
つまり、母乳は一回の授乳の中でも脂肪含量(=熱量)が変化しており、フルコースに例えられるのです。
母乳の成分が変化すると哺乳リズムも変化する
後乳に多く含まれる脂肪は、児の脳や網膜を作る原材料となる多価不飽和脂肪酸であり、抗酸化作用のあるビタミンA、ビタミンE、骨を作ったり、免疫調節やウイルス感染予防にも重要な役割を持つビタミンD、血を止めるビタミンKも後乳に多く含まれます。
児に必要な母乳成分は“後乳”に多く含まれることから、乳房が“空”に近づくまで哺乳させることが大切であるとわかります。
児の哺乳リズムもフルコースの最中に変化します。
児が脂肪分たっぷりの後乳を飲むときは、脂肪分の少ない前乳を飲むときとちがってゆっくりしたリズムとなり、やがて満腹感を感じてみずから乳房から離れます。
5.赤ちゃんがおっぱいをのみやすいように支えましょう
鼻が乳頭のほうを向いて、頭はわずかに後ろに傾くようなポジションがとれるよう支えましょう。下顎がおっぱいに付くようにすると乳頭・乳輪を深く含みやすくなります。オープン・ザ・ワイドマウス!
人工乳は当然のことながら、飲み始めから飲み終わりまで成分もリズムも一定のため、満腹の調整が難しいのかもしれません。
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