「新たな認定看護師制度に関する説明会」開催ー2020年度から始まる新たな認知看護師教育の概要ー
- 公開日: 2019/7/16
日本看護協会が進めてきた認定看護師制度の再構築。2018年11月に新たな制度設計と認定看護師分野が公表されていますが、詳細については検討が続けられてきました。そして2019年度に入り、制度の内容がほぼ確定しました。5月には東京と大阪で「新たな認定看護師制度に関する説明会」が開催され、日本看護協会常任理事の荒木暁子さんが制度についての説明を行いました。そのなかから制度の概要についてまとめます。
より時代のニーズに合った認定看護師を育成するため、特定行為研修をプラス
新たな認定看護師制度では、教育課程に特定行為研修のカリキュラムが組み込まれます。1996年、医療の高度化・細分化に伴う看護の専門分化が進むなかで誕生した認定看護師ですが、高齢化や疾病構造の変化、さらに病院中心から地域・在宅へと医療提供体制が移行するのに伴い、求められる役割が変わってきました。
これからの認定看護師に期待されるのは「急性期医療から在宅医療までを支え、地域・施設間の連携に寄与できること」。日本看護協会が、このような役割を果たせる認定看護師を育成するために着目したのが特定行為研修です。特定行為研修を導入することで、臨床推論力と病態判断力の強化にも力を入れた新たなカリキュラムが構築されます。
新たな認定看護分野は19分野になり、2020年度から教育がスタート
新たな認定看護師制度でも資格の名称は「認定看護師」で変わりません。ただし、特定行為研修を修了した認定看護師という意味において「特定認定看護師」という通称を使用しても構わないことになっています。
認定看護分野については、これまでの21分野が見直され、統合および名称変更が行われて19分野になりました(表1)。小児から高齢者までの複雑化する疾病を抱える人たちに対し、急性期から慢性期まで幅広い医療に対応できるように、また地域へと広がる医療ニーズに応えられるようにという観点から再編されたものです。
表1 統合・名称変更後の認定看護分野一覧
教育は、2020年度に14分野(後述)でスタートする予定です。そして、翌21年度には新たな制度による認定看護師が誕生。それと同時に現行制度からの移行手続きも始まります。残りの5分野(呼吸器疾患看護、在宅ケア、手術看護、腎不全看護、生殖看護)については、2021年度教育開始予定、翌22年度に認定開始となります。一方、現行の認定制度については、認定審査は2029年に終了しますが、更新審査は継続して行われます(図1)。
図1 現行の認定看護師制度と新たな認定看護師制度の今後のスケジュール
例えば、現在「救急看護認定看護師」の資格を有する看護師が、新たな認定看護師制度に移行あるいは現行制度で更新する場合は次のようになります(図2)。まずは現行制度により更新する場合は、これまでどおり更新審査を受けて資格を継続します。資格の名称も変わりません。また、新たな認定看護師制度に移行する場合は、特定行為研修を受講したうえで移行手続きを行い、名称は新たな認定制度による「クリティカルケア認定看護師」に変わります。認定看護分野の追加研修等は必要ありません。その後の更新審査についてはこれまでと同様です。
図2 ある認定看護師の移行と更新のイメージ(統合した分野の場合)と移行時のポイント
教育時間数は増加するも、eラーニングの導入で受講しやすさを確保
新たな認定看護師教育は、特定行為研修を組み込むことで現行教育よりも時間数が増加します(表2)。そのため、集合研修にeラーニングを併用することで、なるべく受講者の負担軽減につなげるようにしています。
表2 新たな認知看護師教育の概要
*新たな認定看護師教育には、この時間数とは別に特定行為区分別科目における実習の時間が追加されます。
また、実際の分野別の教育時間数と特定区分別科目は表3のようになっています。現在は2020年度に教育が始まる14分野となっていますが、残りの5分野については、2019年度末までに内容が確定します。
表3 新たな認定看護師分野14分野の教育時間数と組み込む特定行為区分別科目
特定行為研修を修了した認定看護師の現状と活動の広がり
今回の説明会では、認定看護師の特定行為修了状況についても説明がありました。2018年9月末時点で特定行為研修を修了した認定看護師は1205名(厚生労働省)。受講者の多い特定行為区分は、「栄養および水分管理に係る薬剤投与関連」「創傷管理関連」「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」「血糖コントロールに係る薬剤投与関連」です。また、日本看護協会が実施する同研修を修了した認定看護師においは、総数が371名(2019年3月)で、「皮膚・排泄ケア」「感染管理」「救急看護」の認定看護分野での研修修了者が多くなっています。
また、特定行為研修を修了した認定看護師のその後の活動の変化についても語られました。皮膚・排泄ケア認定看護師の場合、重症褥瘡に対するデブリードマンや陰圧閉鎖法などにより重症化予防を図れるようになります。ICU勤務の集中ケア認定看護師は、急変予測ラウンドの実施や病棟看護師等と連携した患者管理を行い急変回避が可能になります。このような患者ニーズに対応するタイムリーな実践のほか、地域での退院後訪問指導や施設・在宅サービス利用者の身体管理も行えるということです。