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膵臓がん患者さんのケア|外科的治療と化学療法のケアと注意点

  • 公開日: 2019/11/19

膵臓がんの外科的治療とケアの注意点

術前のケア

 膵臓がんは、一般的に早期発見が極めて困難で、予後も不良であるといわれています。症状(全身倦怠感、食欲不振、腹痛、背部痛、体重減少、貧血、黄疸など)が出現している場合には病期が進行していることもあり、手術が不可能な場合もあります。

 また、手術が可能な場合でも、身体に及ぼす手術侵襲は大きいものです。看護師は、膵臓がんの告知を受け、手術を受ける患者さんの不安を理解し、安心して手術に臨めるよう支援することが必要とされます。

 当院では、手術を受ける患者さん(主に消化器系や呼吸器系のがんの手術を受ける患者さん)を対象に、術前サポート外来を受診してもらう体制を整えています。術前サポート外来は手術が決定した時点で主治医が予約を入れ、患者さんには薬剤科・麻酔科・栄養科・看護外来・リハビリテーション科の外来を受けてもらいます。

 各分野の専門家がかかわることで、より適切な指導やアドバイスを受けることができるうえ、必要であれば心療内科や医療ソーシャルワーカー(MSW)、他科受診などの調整も行っています。

 看護外来は、外科外来、手術室、患者サポートセンター所属の看護師が担当しています。それぞれの外来での内容は電子カルテで情報共有され、入院後も継続した医療・看護が受けられるようにしています。

 術前看護においては、不安なく安心して手術が受けられるよう支援することが必要と考えます。全身状態の管理や不安の軽減を図り、心身ともに万全な状態で手術に臨めるよう看護に努めます。

術後のケア

 膵臓がんの手術は侵襲の大きな手術になり、術後管理が重要となります。最も注意が必要なのは、膵液漏出や膵頭十二指腸切除術後の膵空腸吻合部の縫合不全に伴い、腹腔内に膵液が漏出することです。漏出した膵液が感染を起こすことによって、腹腔内膿瘍など重篤な合併症を起こす可能性があります。そのため、バイタルチェックだけでなく、各ドレーンからの排液(色調や性状)の変化や炎症反応などの血液検査にも注意します。

 また、切除術を行った場合、インスリンの分泌が低下することで高血糖を引き起こしたり、糖尿病を発症することがあります。血糖管理をしっかり行うとともに、糖尿病を発症した場合は糖尿病専門医の受診を促し、退院に向けインスリン注射についての指導も行います。

 ほかに、排便コントロールや食事管理も大切です。退院後の療養生活が不安なく送れるよう患者さんのみでなく、家族を交えての生活指導をしていくことが必要となります。

膵臓がんの化学療法とケアの注意点

 抗がん剤治療は術前・術後に行われるものと、手術適応でない膵臓がんに対して行われるものがあります。

 膵臓がんでの抗がん剤治療では、FOLFIRINOX療法、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法、ゲムシタビン単独療法、S-1単独療法などが行われます。これらの抗がん剤治療では、それぞれの薬剤によるさまざまな副作用が引き起こる可能性があります(表)。

 吐き気や食欲不振、味覚障害のほかに、FOLFORINOXで使用されるオキサリプラチンによる過敏症、末梢神経障害、咽頭絞扼感、寒冷刺激症状、イリノテカンによる腹痛や下痢症状などがあります。さらに、骨髄抑制によって易感染状態を引き起こすため、感染予防についての患者指導も必要です。

表 膵臓がんで行われる主な化学療法と副作用

治療法 スケジュール 副作用
FOLFIRINOX療法 2週を区切りとし、1週目の初日に点滴。2週目は休薬。 食欲不振、過敏症、末梢神経障害、咽頭絞扼感、寒冷刺激症状、下痢、脱毛、骨髄抑制、など
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法 4週間1コース。週1回60~90分の点滴を3週連続で行う。4週目は休薬。 食欲不振、末梢神経障害、発疹、発熱、口内炎、など
ゲムシタビン単独療法 4週間1コース。週1回30~60分の点滴を3週連続で行う。4週目は休薬。 白血球減少、発疹、発熱、など
S-1単独療法 6週間1コース。1日1回の服薬を4週継続し、2週休薬。 口内炎、色素沈着、など

 このように、抗がん剤治療では多くの副作用をもたらす薬剤が使用されます。そのため、抗がん剤治療に携わる看護師は、治療で使用される薬剤の特徴や副作用の理解をしておくことが大切です。

 また、抗がん剤治療は外来通院で行われていることが多く、副作用が生じた際、医療者がすぐに対応できないことがあります。したがって、患者さんやその家族に対し治療や副作用の理解を促すこと、副作用対策また副作用が出現したときの対処方法について指導します。

 そして、患者指導においては、患者さんのセルフケア能力も伸ばすことができるような支援をすることも必要です。

 治療中の患者さんや家族は、副作用だけでなく治療費のことや就労のこと、また病状悪化に対する恐怖などあらゆる不安や悩みごとが出てきます。それぞれの不安に耳を傾け、解決していくために必要であれば関連する部署へつなげることも看護師の役割だと考えます。

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