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【連載】看護師のための輸液講座

第19回 本格的な在宅静脈栄養の実施方法

  • 公開日: 2010/12/13
  • 更新日: 2020/10/21

本格的な在宅静脈栄養法って、普通の在宅静脈栄養法とは違うの?という疑問が出てくるかもしれませんね。もちろん、タイトルを決める時点でかなり考えてみたのですけど。本格的な在宅静脈栄養法とは、「とりあえず家に帰そうや」という程度ではなく、何年でも管理できる技術をもって実施する、という意味だと受け取ってもらえば幸いです。
本邦では、お国の方針として在宅医療が推進され、病院における在院日数を短縮するためには「とりあえず退院させなくては。そのためには在宅静脈栄養法も一つの方法だな」という感じで実施されている場合も多いようです。その考え方の甘さから、カテーテル感染を初めとする合併症が発生して、在宅医療が継続できなくなる患者さんも多いと聞きます。10年、20年と家で生活できるようにするのが、本格的な在宅静脈栄養法のはずなのです。

まずは用語から

すでに解説したかもしれませんが、在宅静脈栄養法の略語はHPNです。Home Parenteral Nutritionの頭文字をとってHPNです。在宅IVHと言っている方もまだ多いようですが、正しい用語はHPNであると覚えてください。要するに、高カロリー輸液のことはIVHではなくTPNと呼びましょう、というキャンペーンを私が開始してから既に10年以上になりますが、まだIVHという用語が使われています。本当、どうしたらIVHという用語はなくなるのでしょうね。それが在宅IVHという用語にも残っているのです。学会や研究会で在宅IVHと呼んでいる方の発表は、私は、正直、あまり信用しないようにしています。なぜか?本格的な在宅静脈栄養法について、たぶん、論文などを読んでいないと思われるからです。もちろん英語はhome parenteral nutritionです。IVHという用語で検索をかけると、intraventricular hemorrhage(脳室内出血)の略語、ということになります。栄養管理の領域では、勉強している方はIVHという用語を使わなくなっています。ということは、きちんと在宅静脈栄養法について論文を読んだりして勉強している方は、在宅IVHという用語は使わず、HPNという用語を使うようになっているのです。在宅IVHという用語を使っている方にはかなりきつい言い方かもしれませんが、まずはHPNという用語を使うことが、「本格的な在宅静脈栄養法」を実施するためには重要なことのように思います。

本格的な在宅静脈栄養法のIVH用語

HPNの適応は?

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十分に経口摂取ができない方は、すべてHPNの適応になりえます。もちろん、腸管が使え、経腸栄養で十分に管理できる方は在宅経腸栄養(home enteral nutrition:HEN)を実施すべきであることはいうまでもありません。ただし、経口摂取は可能であっても消化吸収に問題があって、経口摂取だけでは栄養状態の維持が困難な場合、などもHPNの適応としています。
現在、大勢のがん患者さんがHPNで在宅へ移行しています。なかなか自分や介護者(家族など)で管理することはむずかしいので、訪問看護を受けたり、在宅専門のクリニックなどで管理されたりしている方が多いようです。しかし、訪問看護師さんや開業医さん、在宅専門のクリニックの医師がHPNについて、高いレベルの管理ができているのでしょうか。こういう書き方をすると、叱られるかもしれませんけどね。 私が診ているHPNの患者さんは、短腸症候群やクローン病の若い方が多いのです。全員、自分で管理できています。一番長期管理になっている患者さんは、もう10年以上になります。完全に経口摂取ができない患者さんはいません。経口摂取を併用している患者さんばかりです。中には成分栄養剤(エレンタール)しか飲んでいない患者さんもいるのですが。
とにかく、HPNの適応となる患者さんはたくさんいます。単に在宅へ移行させるためだけが目的ではなく、きちんとした栄養管理を行ってQOLを上げたい、そう思える患者さんです。しかし、実際にはシステム上の問題などでHPNが実施できないことが多いように思います。

HPNに用いるカテーテルは?

現在のところ、全員が完全皮下埋め込み式カテーテル(ポート)を用いています。1年前まで、体外式カテーテルであるブロビアックカテーテルを用いていたクローン病患者さんがいましたが、HPNから離脱できています。このクローン病患者さんは、なぜ、ブロビアックカテーテルを用いていたのでしょうか?自分でポートに針を刺すことがいやだったからです。自分で自分の胸に針を刺すって、やはり、怖いし、できたらやりたくない処置ですよね。
また、ポートを用いている患者さんは、全員、夜間のみ輸液を投与しています。いわゆる間歇的輸液法です。昼間はポートをヘパリンロックしています。当然ですが、生食ロックではありません。夜、入浴し、その後、自分で輸液ラインを輸液、ヒューバー針に接続し、ポートの部分を消毒し、自分で針を刺して輸液を開始します。そして翌朝、ポートをヘパリンロックして輸液ラインから解放されるのです。

ヒューバー針

適応としては、本来、ポートは間歇的輸液法に用い、ブロビアックカテーテルは持続投与法に用いるべき、という考え方があります。実は、この選択方法が安全なHPNを実施するためには正しいと思っています。もちろん、ポートもブロビアックカテーテルも間歇的輸液法、持続投与法、どちらに用いてもいいのですが。
本当に短期間、癌末期の患者さんに対するHPNなどでは、入院中に用いている、いわゆる普通の体外式カテーテルを用いることはできます。しかし、可能ならば、ポートかブロビアックを用いたいものです。なんらかのトラブルが発生するリスクが高くなるからです。昔のことになりますが、まだ、ポートもブロビアックも日本に導入されていない頃、普通のシリコーンカテーテルでHPNを実施していた患者さんがいます。ものすごく丁寧な管理をされていた女性で、このカテーテルを7年間使用していました。これは、本当にすごいことです。きちんと管理すれば、普通のカテーテルでも何年も管理できる、ということを意味しているのでしょう。

HPN選択基準

輸液法

輸液はどうする?

輸液は、院外の調剤薬局で無菌調剤をしていただき、宅配してもらうというシステムを利用しています。患者さんは、ビタミン剤を輸液投与直前に自分で輸液バッグに混注します。ビタミンや微量元素が入ったキット製品もありますが、私は、輸液量、カロリー量、アミノ酸量、ビタミン、微量元素などを、一人ひとりにとって最適な量を考えておりますので、ビタミンや微量元素が配合されたキット製品は使っていません。単純な糖電解質液とアミノ酸液のダブルバッグを使用して輸液量、カロリー量、アミノ酸量などを決定し、ビタミンと微量元素は一日必要量を確実に投与できるようにしています。

トラブルは起こらないのか?

HPN開始時にきちんと指導してから退院していただきますので、患者さん達はHPNの技術を完璧にマスターしています。もちろん、どんなトラブルが起こる可能性があるのか、そういう場合はどう対処すればいいのか、指導しています。トラブルが発生すれば病院に連絡してくるようなシステムになっています。しかし、これまでに本当に慌てさせられるようなトラブルは発生していません。月1回、外来でカテーテルや全身状態をチェックしています。血液検査は3ヶ月~半年に1回程度しか行っていません。
トラブルとしては、一番厄介なのがカテーテル感染症です。しかし、それも夜中に急に対処しなければならない、ということではないので、外来時間中に受診していただくことで対処できています。ルート閉塞、血液の逆流など、緊急のトラブルはほとんど発生していません。すごい!ということではなく、この程度の管理を患者さんが実施できるのでなければ、HPNは実施してはいけないのかもしれません。幸い、私が実施しているHPNの患者さん達は、全員、管理レベルが高いのでトラブル発生率がきわめて低いのでしょう。

カテーテル感染が起こった場合はどうする?

4年から5年に1 回くらいの頻度で感染が起こります。感染が起こりますという表現が正しいのかどうかわかりませんが。ある意味、仕方ない発生頻度かもしれません。1年や2年で感染すると、私に、手を抜いているんじゃないか、と、叱られる?こともあるから、緊張して管理してくれているのでしょうか。
輸液投与開始後30分から1時間で38度以上の高熱が発生した場合、カテーテル感染を疑います。それほど高い発熱ではなくても、輸液投与を開始すると発熱する、という場合もカテーテル感染を疑います。これらは患者さんからの申告による場合がほとんどです。 こういう場合でも、すぐにはカテーテルを抜去しません。まずはポートから逆血させて血液培養を行います。その結果で、抜去する必要があるのかを判断します。細菌や真菌などが検出された場合、普通は直ちにポートを抜去するのですが、私は、いろいろ考えて対処しています。 まず、検出された細菌の感受性試験をチェックし、感受性のある抗生物質でポートをロックする、という手技を行ってみます。アルコールロックという方法を実施する場合もあります。しかし、これらの方法がすべての症例に対して有効かというと、なかなかこれで治療できるカテーテル感染はありません。この方法はantibiotic lock techniqueとして外国では論文として報告されています。アルコールロックも報告されています。本邦では私が論文を書いています。これで治療できたら、そのまま、カテーテルの使用を継続します。

この方法で治療できない場合でも、ポートを抜去してしまう、という方針ではありません。なぜか?こういうふうに簡単に?単純に?ポートを抜去すると、今後のポート留置に問題が生じる可能性があるからです。
現在行っている方法は、同じ経路でカテーテルを入れ換え、ポートの位置は移動させるという方法です。この方法でカテーテル感染の治療にもなっています。なぜか?ポートは全体が皮下に埋め込まれていますので、カテーテル感染はポートとカテーテルの内腔に生じているはずです。ですから、同じ経路で入れ換えることによってカテーテル感染の治療にもなるはずだと思っています。

ポート入れ替え

ポート留置部位

カテーテル感染予防対策

ポートを適切に留置することができたら、それでカテーテル感染は起こさない?それは間違った考え方です。輸液の管理、輸液ラインの管理をきちんと行うことによってカテーテル感染は予防できます。輸液はクリーンベンチで無菌調製したものを使うようにしなければなりません。ビタミン剤の混注操作を完全に無菌的に行う必要があります。輸液ラインは一体型を使い、輸液とカテーテルを接続するだけでよい、というシステムにしなければなりません。複雑な操作をしなければならないシステムでは、カテーテル感染を予防することはできないでしょう。もちろん三方活栓は組み込むべきではありませんし、ニードルレスシステムも正しい使用法をきちんと指導しなければなりません。インラインフィルターも組み込まれた一体型輸液ラインを使用する必要があります。インラインフィルターは、対称膜で構成されたものを使用してください。Candida albicansは仮性菌糸を伸ばすことによって非対称膜で構成されたフィルターを貫通します。Candida albicansは高カロリー輸液中で増殖することができます。 とにかく、患者さんが単純な操作で無菌管理ができるシステムを採用することが重要です。

自分で針刺しを行っている様子

持続投与ジャケット

輸液ラインと輸液ポンプ

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2020/10/12