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ふるえで悩む患者さんと家族に知っていただきたい受診のコツ ~ふるえを引き起こす病気と新たな治療選択肢について~

  • 公開日: 2020/11/16
  • # 学会・セミナー
  • # 脳神経内科

2020年10月23日に、「ふるえで悩む患者さんと家族に知っていただきたい受診のコツ~ふるえを引き起こす病気と新たな治療選択肢について~」と題したプレスセミナーが行われました。ふるえの症状で受診しても疾患の診断を受けていなかったり、日常生活に支障をきたし悩んでいる患者さんが少なくありません。ふるえの原因や新しい治療法などについて、大阪大学大学院医学系研究科神経内科学 教授 望月秀樹先生の講演をレポートします。

ふるえの種類、原因

 ふるえは、本人の意思に関係なく、身体が勝手に動いてしまう不随意運動です。ふるえの種類や原因はさまざま(表1)ですが、原因疾患として多いのは、「本態性振戦」と「パーキンソン病」です。


表1 ふるえの種類と主な原因(考えられる疾患)

ふるえの種類出現するとき考えられる疾患
①安静時振戦
安静にしているときのふるえ
パーキンソン病
②姿勢時振戦
一定の姿勢をとっているときのふるえ
本態性振戦
老人性振戦
甲状腺機能亢進症など
*肝性脳症
③企図振戦(動作時振戦)
何かしようとしたときや動作時のふるえ
脊髄性小脳変性症
小脳の梗塞・出血
小脳腫瘍
多発性硬化症など
④生理振戦
寒いときや緊張・興奮したときのふるえ
正常

本態性振戦

 本態性振戦の基本的な特徴は左右対称性で、上肢、頭部、下肢の順で出現率が高くなります1)。ふるえを制御している小脳-下オリーブ核系に何らかの異常が生じることで起こると考えられていますが、本質的な原因はわかっていないのが現状です。進行速度のパターンは一定ではなく、ほとんど進行がみられない人もいれば、緩やかに進行していく人もいます。


 本態性振戦では、何か特定の動作をしようとしたとき(姿勢時)にふるえが起きるため、「字がうまく書けない」「コップの水をこぼしてしまう」「箸が使いづらい」など、日常生活に支障をきたしやすく、悩んでいる人は非常に多いとされています。


パーキンソン病

 パーキンソン病は、中脳にある黒質のドーパミン神経細胞の減少が原因で起こります。無動、静止時振戦、筋強剛、姿勢反射障害が4大症状ですが、中には静止時だけでなく、姿勢時にもふるえを認めるケース(re-emergent tremor)があります。ふるえに対しては抗パーキンソン剤の効果はほぼ得られず、本態性振戦の治療法に準じることになります。


 2020年に実施したインターネット調査において、ふるえの症状がある人のうち約4割が「疾患の診断を受けていない」ことがわかりました(図)2)。原因疾患にあわせた治療法を選択するためにも、ふるえがみられる場合は神経内科(脳神経内科)を受診し、専門の医師のもとでしっかり調べることが重要です。


図 ふるえの症状で診断された疾患

ふるえの診断

InSightec Japan株式会社によるインターネット調査:期間2020年2月26日~27日、有効回答者数500名、グラフ単位=%)より引用

ふるえの薬物療法

 ふるえの治療は症状の程度にかかわらず、患者さんが望んだ段階で開始することが基本となります。本態性振戦の治療で一般的に使用されている薬剤は表2のとおりですが、本態性振戦の治療薬として承認されているのはアロチノロールのみです。


表2 本態性振戦の治療で使用される主な薬剤
第一選択薬第二選択薬
β遮断薬(アロチノロール、プロプラノロール)
抗てんかん薬(プリミドン、クロナゼパム)
抗不安薬
抗てんかん薬(ガバペンチン、トピラマート)

*本態性振戦の治療薬として本邦で承認


 これらの薬剤には、めまい、頭痛、嘔気・嘔吐、認知機能障害の悪化などの副作用があるほか、喘息、心疾患、糖尿病の患者さんに関しては、β遮断薬が使用できないといった制約もあります。


 薬剤を使用してもふるえがぴったり止まるとは限らず、特に強いふるえに対しては本態性振戦、パーキンソン病ともに薬自体効果がないため、治療薬の調整は難しいといえます。

ふるえの外科的療法

定位脳手術(高周波凝固術、脳深部刺激術)

 ふるえに対する手術療法は、ふるえのために日常生活や社会生活の維持が困難で、薬物療法などの非侵襲的治療の効果が不十分な場合に適応となります。


 治療ターゲットは知覚の中枢とされる視床であり、ここをうまく治療するとふるえを抑えることができます。方法としては、穿頭を行い、頭蓋内の目標とする場所に電極を正確に進めて治療をする定位脳手術が実施されます。


 定位脳手術には、電極を挿入し、70℃で60秒間加熱することで治療ターゲットを凝固(破壊)させる高周波凝固術(radiofrequency coagulation:RF)、電極を脳内に留置し、電気刺激によってふるえを抑制する脳深部刺激術(deep brain stimulation:DBS)があります。DBSに関しては、パーキンソン病の動きの改善についても効果を認めることから治療法が広まっています。


 しかし、侵襲的治療であるため、「手がふるえても手術は絶対しない」という患者さんが多いのも事実です。


MRガイド下集束超音波治療

 2016年、非侵襲的な手術として、MRガイド下集束超音波治療(focused ultrasound surgery:FUS)による視床破壊術が確立されました。FUSはMRガイド下で異常な信号を伝達している治療ターゲットを特定し、そこに超音波を集束させて熱凝固を行い、組織を破壊する治療法です。


 FUSの利点として、穿頭の必要がなく、手術に関連する合併症(感染症など)が少ないこと、他の手術法と比較して、入院期間が短いことが挙げられます。欠点は、完全剃髪が必要なことです。 また、低侵襲ではありますが組織を破壊するため、治療に伴う合併症(頭蓋内出血、頭痛、麻痺、感覚障害、構音障害など)のリスクがあります。


 FUSは、本態性振戦については2019年6月、パーキンソン病のふるえに対しては2020年9月に保険適用となり、安全性と有効性が確立されました。現在、日本においてFUSが可能な医療機関は12施設あり、多くの患者さんが治療を待っています。

引用文献

1) 日本神経治療学会治療指針作成委員会編. 標準的神経治療:本態性振戦.神経治療2011; 28(3).

2)InSightec Japan株式会社によるインターネット調査:期間2020年2月26日~27日、有効回答者数500名、グラフ単位=%)

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