フェイスリフト(SMAS法)の看護|手順、術前・術中・術後のケアのポイント
- 公開日: 2023/10/17
ここでは、フェイスリフトのなかでも代表的な「SMAS法」による頬のフェイスラインのフェイスリフトのケアについて解説します。
※フェイスリフトの治療概要については、「フェイスリフト(SMAS法)の基礎知識|メリット・デメリット、ダウインタイム、合併症・副作用など」をご参照ください。
※医療処置の内容は、医療施設により異なる場合があります。
術前のケア(病棟)
入院時
当院の場合、多くは3泊4日の入院で行います。疾患による入院と同じく、アナムネにより情報を収集します。全身麻酔で行うため、術前の絶飲食などの説明を行い、止血に必要なフェイスバンドなど患者さんが持参した物品を確認します。説明後は、入院や手術に対する疑問点、不安に思っていることなどがないかを聞きます。
事前に説明を受けていてもいざ入院となると、「どのくらい効果があるのか」といった不安をもつ患者さんが少なくありません。こうした効果に対する質問は看護師から答えるのが難しいため、不安な気持ちを受け止め、医師にフィードバックすることが大切です。
手術当日
手術室まで患者さんに付き添います。移動中は、体調や睡眠の状況などの情報収集を行いながら、患者さんの緊張を和らげるように心がけます。手術室に到着後は、手術室看護師に申し送りを行います。
術中のケア(手術室)
通常、器械出し看護師、外回り看護師の2名で手術をサポートします。患者さんとの会話が可能なうちは、不安な点や体調に変化がないかどうかを確認し、患者さんの心情に配慮します。
手術が開始されたら、外回り看護師は、バイタルサインのモニタリング、加温、体位固定・頭位変換、輸液量・出血量のチェック、ガーゼ・針類のカウントなどを行います。手術時間が約4時間と長いため、特に、定期的な体温チェックと加温、手術操作に影響しない範囲で除圧を行うことが大切です。
手術後は、病棟看護師に引き継ぐため、申し送りを行います。
フェイスリフト(SMAS法)の手順
術後のケア(病棟)
術後当日(入院2日目)
術直後は、手術や麻酔の侵襲による影響を考慮し、全身状態を注意して観察します。病棟では、バイタルサインのモニタリング、酸素マスクによる呼吸管理のほかに、制吐剤、鎮痛薬、体液調整などの点滴管理を行います。
強い痛みと嘔気が現れることが多いため、薬剤の効果を確認し投与量を調整するなど、できる限り苦痛を緩和できるように努めます。また、麻酔の影響で寒気やシバリングを起こしている場合は、電気毛布などで加温します。
創部は包帯とフェイスバンドで固定され、挿入されたペンローズドレーンはドレッシング材で覆われている状態です。見える範囲で出血の有無を確認し、わかるほどの出血がみられたら医師に報告します。
術後1日目(入院3日目)
術後翌日から食事と離床が可能です。医師の診察後、異常がなければペンローズドレーンが抜去されます。フェイスバンドによる固定は引き続き行いますが、可能な範囲で創部の状態を確認し、血腫や発赤、腫脹、熱感、疼痛、発熱などの異常所見がみられたら、直ちに医師に報告します。
腫脹については、手術当日よりも強く現れるようになります。術後すぐに効果が確認できると期待している患者さんもいるため、手術から1週間は腫脹が強いことを伝え、治まってくるとフェイスラインが確認できるようになることを心情に配慮しながら説明します。
術後の看護自体は、目的が疾患の治療でも美容であっても変わりませんが、言葉の使い方に配慮が必要です。例えば、創部に異常所見などがみられない場合、「きれいな傷口ですね」といった声かけをすることがあるかと思います。しかし、美容目的の手術の場合、患者さんは「きれい」など見た目にかかわる表現に敏感で、「こんなに腫れているのにきれいなの?」と戸惑う可能性があります。
術後2日目 (退院)
退院時には、フェイスバンドによる止血、鎮痛薬・抗菌薬などの処方薬の服用、生活上の注意点など、抜糸が行われる約1週間後まで注意してほしいことを伝えます。
説明のポイント
【止血・フェイスバンドについて】止血のため、フェイスバンドの装着方法を患者さんに説明し、抜糸を行う次の外来受診まで装着してもらいます。出血がみられたら、連絡してもらうように伝えます。
【感染について】処方される抗菌薬は指示どおりに服薬し、残さず飲み切るように説明します。痛みや腫脹が徐々に強くなったり、発熱が続いたりする場合は、連絡してもらうように伝えます。
【日常生活上の注意】入浴は血流がよくなり、腫脹が助長されてしまうため、シャワー浴にすること、洗顔はやさしく行い、抜糸まではメイクを控えることを説明します。また、激しい運動、飲酒、喫煙なども腫脹の悪化や出血の原因になるため、抜糸まで控えてもらいます。