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【連載】美容外科で必要な看護技術を学ぼう!

フェイスリフト(SMAS法)の基礎知識|メリット・デメリット、ダウンタイム、合併症・副作用など

  • 公開日: 2023/10/17


フェイスリフトには、高密度の超音波やラジオ波を照射して非侵襲的に行う方法、皮下組織に糸を挿入する方法、切開による手術などがあります。ここでは、フェイスリフトのなかでも代表的な切開による手術である「SMAS法」を中心に解説します。

※フェイスリフトの看護については、「フェイスリフト(SMAS法)の看護|手順、術前・術中・術後のケアのポイント」をご参照ください。
※医療処置の内容は、医療施設により異なる場合があります。


フェイスリフトとは

 フェイスリフトとは、顔面のたるみを矯正するための治療です。フェイスリフトと一言でいっても、さまざまな方法があります。以下に、主なフェイスリフトの方法について紹介します。

ヒアルロン酸注射、ボトックス注射

 ヒアルロン酸注射やボトックス注射は、シワの改善を目的としたものであり、いわゆるフェイスリフトに直結した治療法ではありません。しかし、フェイスリフトの効果を補う目的でしばしば行われるため、ここに説明を加えます。

 これらの治療法は、ヒアルロン酸やボトックス(ボツリヌス菌毒素製剤)を皮膚や筋肉に注入する方法で、シワの改善に直接的に作用しますが、軽度のたるみにも効果があります。注射での治療法であるため簡便ですが、効果を持続させるためには、定期的な治療が必要です。

HIFU(ハイフ)

 HIFUは、高密度焦点式超音波治療法のことです。高密度の超音波を照射して皮膚を引き締め、リフトアップを図ります。医師の管理下であれば、設備が整った施設でなくても実施できるため、広く施行されています。一度の治療効果は比較的弱く、定期的な照射が必要です。

RF(radio frequency)

 RFは、ラジオ波を照射して皮膚を引き締め、リフトアップを図る方法です。基本的な作用機序は前述のHIFUと類似したものです。低侵襲で安全に行えますが、効果を持続させるためには、定期的な照射が必要です。

スレッドリフト

 スレッドリフトは、特殊な糸を皮下組織に挿入してリフトアップを図る方法です。メスで切らないため低侵襲ですが、糸だけで牽引するため元に戻りやすく、その効果はそれほど大きいものではないとされています。

SMAS法

 最も効果が期待できるのは、切開によるフェイスリフト手術です。対象となる部位は、頬・フェイスライン、中顔面、こめかみ、前額、頸部で、部位によって手術方法が異なります。中でもよく行われるのが、SMAS法による頬・フェイスラインのフェイスリフトです。

 SMAS法は、皮下浅層を剥離して、表在筋腱膜群(Superficial Musculo-Aponeurotic System:SMAS)の皮弁を引き上げてリフトアップする方法です(図1)。たるみを大きく改善し、フェイスラインを整える効果があります。たるみが強くなる中高年者でより高い効果が期待でき、効果の程度には個人差がありますが、10年前の状態に戻るというイメージです。ただし、術後より、加齢とともに再度たるみが現れるため、恒久的にリフトアップされた状態が維持されるわけではありません。

 手術は顔面神経の走行に注意しながら慎重な剥離操作を行う必要があり、細かな縫合操作も要します。手術時間は片側約2時間、合計約4時間で、基本的に全身麻酔で行われますが、局所麻酔で行われることもあります(手術の流れについては、「フェイスリフト(SMAS法)の看護|手順、術前・術中・術後のケアのポイント」を参照)。また、疼痛のコントロールや出血に対するドレーン管理など術後管理を行うため入院が必要です。入院期間は剥離範囲により異なりますが、3~4日間です。

 なお、形成外科では保険診療として、顔面神経麻痺による頬部のたるみの改善を目的に、SMAS法によるフェイスリフトを行うことがあります。

図1 SMAS法

SMAS法
写真提供:杏林大学医学部 形成外科・美容外科 教授 尾﨑峰先生

フェイスリフト(SMAS法)のメリット・デメリット

 SMASを引き上げることで、皮下組織でのリフティングが可能となり、糸を用いたスレッドリフトや皮膚表面のみを引き上げる方法よりも効果が高いのがメリットです。しかし、広範囲に頬部を剥離するため、それに伴うデメリットもあります(表1)。

表1 フェイスリフト(SMAS法)のメリット・デメリット

メリットデメリット
●ほかのフェイスリフトの治療法に比べて効果が高い●ダウンタイムが長い
●合併症のリスクがある
●手術跡が残る

フェイスリフト(SMAS法)手術を受けられない・適していないケース

 SMAS法によるフェイスリフト手術が受けられないのは、全身麻酔のリスクが高い、出血傾向のあるケースです。抗凝固薬を服薬中の場合は、抗凝固薬を一時的に中止することが可能であれば、服薬中止後に凝固機能に問題がないことを確認したうえで手術を受けることができます。

 また、20代の若年者などでたるみの程度が軽度な場合は、治療効果が乏しいことが予測されるため、SMAS法は適していません。この場合、HIFUやRFなど侵襲の少ない治療を勧めています。

フェイスリフト(SMAS法)における手術時・手術後の痛み

 手術後は強い疼痛があるため、点滴による疼痛管理を行います。

フェイスリフト(SMAS法)のダウンタイム

 腫脹が2週間程度続きます。特に術後1週間は強く現れます。

フェイスリフト(SMAS法)の主な合併症・副作用

 SMAS法の主な合併症・副作用は次のとおりです。

●血腫
●腫脹
●剥離操作による顔面神経の損傷による神経麻痺
※眉毛の挙上にかかわる顔面神経側頭枝がダメージを受けやすい
●耳垂変形(耳垂が下方に引き伸ばされる)
●ケロイド(体質や手術操作による影響)
●知覚鈍麻
●感染

 SMAS法は剥離範囲が広いこと、顔面の血行は良好であることから、最も多い合併症は血腫となります。小さい血腫は吸収されますが、血腫による創縁の皮膚壊死を防ぐため、血腫除去が必要な場合もあります。血腫を生じさせないためには止血が重要で、術中はバイポーラによる止血、術後はフェイスバンドによる圧迫止血を行います。出血に対しては、術直後に、創部に主にペンローズドレーンを留置します。

 また、フェイスリフトの手術は、皮下の剥離やSMASの引き上げ、引き上げたあとの余った皮膚の切除、縫合など手術操作が多く、見た目の仕上がりだけではなく、常に合併症の発症に注意が必要です。例えば、剥離操作時に顔面神経を損傷してしまうと麻痺が生じます。ほとんどの場合、自然治癒しますが、神経が断裂している場合は麻痺が残ります。特に、眉毛の挙上にかかわる顔面神経側頭枝がダメージを受けると、眉毛が下がった状態になります。

 ほかにフェイスリフトで特徴的な合併症として、耳垂変形(耳垂が下方に引き伸ばされる)があります(図2)。主に耳垂部の固定の際、同部に緊張がかかるために生じます。

図2 耳垂変形

イラスト/早瀬あやき

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