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【連載】美容外科で必要な看護技術を学ぼう!

重瞼術の基礎知識|目的、種類(埋没法・切開法)、メリット・デメリット、合併症・副作用など

  • 公開日: 2023/10/11


※重瞼術の看護については、「重瞼術の看護|埋没法・切開法の手順、術前・術中・術後のケアのポイント」をご参照ください。
※医療処置の内容は、医療施設により異なる場合があります。


重瞼術とは

 重瞼術とは、一般に眼瞼を二重(ふたえ)にする手術のことです。 局所麻酔による手術で日帰りで済み、その気軽さからニーズの高い美容医療です。手技自体は容易ですが、患者さんの希望どおりの結果に導くには、術者にある程度の経験が必要となります。

 重瞼術を受ける年齢層で多いのは、若年層から中年層です。高齢でも手術は受けられますが、加齢に伴う眼瞼のたるみや眼瞼下垂により、理想どおりの二重をつくることが難しくなります。たるみが強いケースでは、切開法に加えて、上眼瞼や下眼瞼のたるみを除去する手術も併せて行うことがあります。

MEMO 眼瞼下垂の治療
 眼瞼下垂では、見た目の問題だけではなく、眼が開けにくくなるなど日常生活に支障を来します。眼瞼下垂の治療では、挙筋前転術や筋膜移植術があり、形成外科ではよく行われている手術です。これらの手術に加え、二重の形成やラインを整える手術が行われることがあります。眼瞼下垂の程度が重度であれば、保険診療が適応になります。

重瞼術の目的

 重瞼術の主な目的は次のとおりです。

●一重を二重にする(末広型、平行型など、患者さんが希望するデザインも重要になる)
●左右で異なる二重の幅をそろえる
●二重の幅を広げる(奥二重、加齢によるたるみによって幅がせまくなった二重など)
●のりやテープなどで二重をつくる手間や時間を省く
●のりやテープかぶれなど皮膚トラブルを防ぐ

 二重まぶたの形成のために手術を受けるケースがほとんどですが、対象は一重の患者さんとは限りません。左右の二重の幅を揃えたいなど、二重の患者さんもいます。

重瞼術の種類

 重瞼術には、メスを使わない埋没法と、メスで切開する切開法があります。どちらも局所麻酔による手術で、日帰りで済みます。

埋没法

 埋没法は、基本的にはメスを使わず、非吸収性の糸を眼瞼に埋没させて二重のライン(重瞼線)をつくる手術です。瞼板と皮下組織の間に糸で四角形のループをつくり固定することによって、眼を開けたときに、皮膚が折り込まれて人工的に二重がつくられます(図1)。

 固定する数により2点法、3点法、4点法があり、多いほうが固定力は強くなりますが、少ないほうが、その人の眼の形状に合った自然なラインが作成できます。さらに、固定した糸同士を連結させて強度を高める連結法もあります。

 埋没法は原則、局所麻酔で行います。手術中と手術後に、患者さんに眼の開け閉めをしてもらい、二重の仕上がりや左右差の有無などを確認します。手術時間は術式によりますが、通常の2点法で20分程度です(手術の流れについては、「重瞼術の看護|埋没法・切開法の手順、術前・術中・術後のケアのポイント」を参照)。

図1 埋没法のイメージ

 

埋没法のメリット・デメリット

 メスを使わないため、その人の眼に合った自然な二重ができるのが、埋没法の大きなメリットです。一方で、糸の使用によって生じるデメリットもあります(表1)。再手術も可能ですが、糸は残存しているため、糸周囲の組織が硬くなるなどのリスクがあります。

表1 埋没法のメリット・デメリット

メリットデメリット
●その人の眼に合った自然な二重ができる
●傷が目立たず、ダウンタイムも短い
●手術時間が短い
●眼輪筋から糸の結び目が外れる、もしくは糸が切れて、二重のラインが保てなくなることがある

埋没法を受けられない・適していないケース

 基本的に、埋没法を受けられないケースはあまりありません。ただし、眼瞼下垂やたるみの強いケースでは効果が期待できません。また、アトピー性皮膚炎など眼瞼皮膚に症状がある場合は、避けたほうがよいでしょう。

埋没法における手術時・手術後の痛み

 手術時は、局所麻酔薬の注射時の痛み、点眼麻酔液により眼がしみるなど眼への刺激があります。手術後は、麻酔の効果が切れてから痛みが現れ、1~2日間程度続きます。

埋没法のダウンタイム

 腫脹のピークは2~3日です。それ以降は腫脹が残っているものの、徐々に落ち着いていきます。ただし、3点法のほうが2点法より腫れるなど、手術方法により異なります。また、皮下出血(あざ)が生じた場合は消失するまでに1~2週間を要します。最終的に二重のラインが定着するまでには、これも術式によりますが約1~3カ月かかります。

埋没法の主な合併症・副作用

 基本的に、埋没法で合併症や副作用が発生する頻度は少なく、まれに以下のような合併症が生じることがあります。糸が原因の場合は、埋没させた糸を除去する手術を行うこともあります。

●糸による異物反応(ダウンタイム後も続く皮膚の腫脹・炎症・肉芽形成によるしこりなど)
●結膜・角膜の傷(埋没した糸が結膜側に出て、結膜・角膜を刺激する)

切開法

 切開法は、上眼瞼の皮膚を切開し、皮膚を瞼板に縫い付けて二重のラインをつくる手術です(図2)。理想とする二重や眼瞼の状態によって、切開の方法(部分切開、全切開)が異なったり、眼輪筋や脂肪の一部を切除したりすることもあります。現在は、埋没法で対応できるケースが増え、実施例は減少していますが、埋没法では希望のラインができない、元に戻ってしまうといった場合に行われます。

 切開法は原則、局所麻酔で行います。手術中と手術後に、患者さんに眼の開け閉めをしてもらい、二重の仕上がりや左右差の有無などを確認します。手術時間は術式によりますが、1時間程度です(手術の流れについては、「重瞼術の看護|埋没法・切開法の手順、術前・術中・術後のケアのポイント」を参照)。

図2 切開法のイメージ(全切開の場合)

①二重のデザインに合わせて、上眼瞼の皮膚を切開します。

切開法1

②必要であれば、眼輪筋や余分な脂肪を取り除きます。また、多くの場合、瞼板と眼瞼皮膚を縫着します。

切開法2

③縫合します。

切開法3

切開法のメリット・デメリット

 切開法では、埋没法のように埋没した糸が外れることがなく、確実に二重のラインができるなど多くのメリットがありますが、皮膚を切開することにより生じるデメリットもあります(表2)。

表2 切開法のメリット・デメリット

メリットデメリット
●確実に二重のラインができる 
●埋没法では不可能な、患者さんが希望するラインを形成できる 
●二重のラインをつくるだけではなく、眼輪筋や脂肪を取り除くことで眼瞼の厚みを減らすこともできる
●手術の瘢痕が残る
●埋没法に比べてダウンタイムが長い

切開法を受けられない・適していないケース

 基本的に、切開法を受けられないケースはあまりありません。ただし、手術の瘢痕を受容できない場合は避けたほうがよいでしょう。瘢痕は時間の経過とともにほとんど目立たなくなりますが、個人差があるため、その程度は予測できないことを患者さんによく説明する必要があります。

 切開法では、上眼瞼を切開するものの出血量は比較的少ないため、抗凝固薬を服用している患者さんでも受けられる場合がありますが、術後出血に注意する必要があります。

切開法における手術時・手術後の痛み

 手術時は、局所麻酔薬の注射時の痛み、点眼麻酔液により眼がしみるなどの眼への刺激があります。手術後は、麻酔の効果が切れてから痛みが現れ、2~3日間程度続きます。

切開法のダウンタイム

 腫脹や内出血は1~2週間程度で落ち着いてきます。皮下出血(あざ)が生じた場合は消失するまでに1~2週間を要します。約5~7日後に再度来院してもらい、抜糸が行われます。二重のラインが定着するまでには、約2~3カ月かかります。

切開法の主な合併症・副作用

 切開法の主な合併用・副作用は次のとおりです。出血はわずかなことがほとんどですが、腫脹は埋没法に比べると強く現れます。

●腫脹
●出血
●瘢痕 ※個人差がある

イラスト/早瀬あやき

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