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【連載】大切な人を亡くす子どもへのケア

最終回 子どもと患者さんが触れ合える環境をつくる(後編)

  • 公開日: 2011/12/16

前編に続き、これまでの内容を踏まえ、あらためて看護師が期待される役割について考えていきます。


[3]環境をつくること──患者さんと子どもの距離を縮める

(1)来院しやすい環境づくり

病院といえば、大人だけでなく子どもも、「怖い」「痛い」などといったマイナスのイメージを抱きやすいと思います。治療中の患者さんが多い病棟では、面会時間が限られていることもあり、子どもが訪室する機会もどうしても減ってしまいます。

調査において看護師は、緩和ケア病棟に入院するまで、子どもは病院を訪れづらい環境に置かれていたことが多いため、子どもが病院に来るのが楽しくなるような、来院しやすい環境をつくることが大切であると考えていました。

そのため、看護師は少しでも来院しやすいようにいろいろと工夫をしていました。

例えば、子どもと看護師の距離を縮め、子どもの警戒心を取り払うために、「子どもの名前を覚える」「子どもと一緒に遊ぶ」「子どもの興味のあることを話す」などを通して子どもとのかかわりを行っていました。

ある看護師は、時間があるときには子どもが好きな絵本を読み聞かせることもある、と話していました。このように、子どもが「また病院に行きたい」と思うような環境づくりを少しずつでも行っていくことが大切といえるでしょう。

(2)患者さんと過ごす場づくり

緩和ケア病棟に入院するまではお見舞いなどの機会が少なく、患者さんと子どもの間に距離ができていることが多いため、その距離を縮めることが大切だと、看護師はとらえていました。

看護師は、子どもに「今までで楽しかったことなどをお話しするとお父さんが喜ぶよ、どんどんお話ししてあげてね」というように、「患者さんと話をしても大丈夫であること」「話をすると患者さんが喜ぶこと」などを伝え、子どもが声をかけるように促したり、また、側にいることの大切さを説明していました。

このほか、ある看護師は、子どもが患者さんとかかわれるように、「お父さんが夕べ何食べたかと、朝何を食べたか、それをお母さんや看護師に教えるのは○○ちゃんの宿題ね」と子どもに説明し、子どもと患者さんがかかわれる機会をつくっていました。

看護師はこのほか、子どもがケアに参加できるよう、足や手などのマッサージ、食事を運ぶことなど、子どもができるお手伝いを見つけ、伝えていました。

このようなかかわりを通じて、看護師は、患者さんと子どもの距離を縮めるよう働きかけていました。ただ、子どものお手伝いは、子どもの年齢からも考慮して、決して無理強いしないように配慮することも必要です。

また、ケアを行っている子どもに対しては、「お母さん、○○ちゃんにマッサージしてもらって喜んでるよ」というように、患者さんの様子を子どもにもフィードバックを行っていました。

大人でも頑張っている物事を、ほめられるとうれしいものです。「子どもが一生懸命行っていることを認めたり、ほめたりすることは大事だ」と、看護師たちは、考えて行動しているのです。

[4]子どもに説明すること──親の症状を怖れないように

患者さんの病状の進行に伴って、るい痩が著明になったり、呼吸状態が変化します。そのような変化によって、子どもが患者さんを怖がることがあり、子どもは、「部屋に入れない」「部屋にいても患者さんを遠くから見ている」ことが多くなります。

そのような子どもが患者さんにかかわれるようにするために、看護師は、自らが患者さんに触れて、声をかけていくことが大切であると考えていました。

さらに、それを見る子どもたちに対して、「痩せてしまったけど、怖くないんだよ」「これまでと同じお父さん(お母さん)なんだよ」といった、身体変化の説明を行っていました。

また、今後予想される変化についても、「心臓が頑張っているけれど、疲れてくること」「もうすぐお別れをしなければならないこと」を説明していました。

死にゆく患者さんをケアしたことのある看護師にとっては、身体変化はそのプロセスの一つとして知っていますが、これまでと様子の違う親の姿は、子どもにとっては衝撃の大きいものになるでしょう。

久しぶりの面会で会う場合は特に、子どものショックを和らげ、これまでのお父さんやお母さんと変わりないことをきちんと伝えていくことも大切になります。

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