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【連載】初歩からわかる看護研究

Step23【看護研究】推測統計の手法(その1)

  • 公開日: 2012/8/18
  • 更新日: 2020/10/21

データを収集したら最初に記述統計(Step34~36)により、1項目ずつ度数、平均値、標準偏差、中央値などを算出し、データの傾向をつかみます。統計手法には、このような集団全体の特徴を表す「記述統計」と、得られたデータから母集団を推測する「推測統計」があります。今回からは、推測統計について説明します。


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推測統計には母集団を代表するデータ収集が必須

得られたデータを統計学では「標本」といいますが、推測統計では標本から母集団を推測し、標本の結果を母集団に適用できる可能性を示します。研究対象者の特徴をもった人全てが、母集団です。

例えば「糖尿病で自己管理が必要な患者さん」だったら、該当する人は無数にいるでしょう。あなたの標本(データ)は、この無数にいる母集団から抽出されたものです。無数にいる対象者全員からデータを得ることは不可能なので、その中から標本を無作為に抽出し、もとの集団全員(母集団)を推測します。それによってあなたの対象者だけではなく、研究対象となる特徴をもった全ての人に適応できる可能性を示します(図)。

標本と母集団説明図

あなたの標本(データ)から全集団を推測するので、標本は母集団を代表するデータでなければなりません。例えば地域住民の運動能力について調査するのに、運動に自信のある人ばかりに偏っていたら、その偏った標本から母集団である地域住民全員を推測したとき誤った結果を生じます。偏った標本(データ)を元に母集団を推測することは意味がありません。母集団から標本を無作為に抽出することが推測統計の前提になります。

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病棟で行う看護研究では、無作為抽出をすることはなかなか難しい場合が多いですが、できるだけ偶然に選ばれ、研究者が故意に選ぶことができないようにします。推測統計を行う場合は、自分の集めた標本(データ)が母集団を代表しているのか、それとも偏っているのかを十分に吟味して、結果を解釈することが重要です。

何を知りたいかやデータの種類等で統計手法が異なる

推測統計の手法は、研究目的、データの分布や数、尺度の種類(回答の種類)、対応のあるデータか独立のデータかを、手がかりに選択していきます。これらについて以下に説明しましょう。

研究目的

研究目的に沿って、分析によって知りたいことは何かをはっきりさせましょう。研究目的が何であれ、度数や平均値、標準偏差などの記述統計は必須です。さらにType3関係探索研究では、質問項目間の関係をみるクロス集計やχ(2 カイ二乗)検定(いずれも後の回で説明)、相関係数(【Step36】データの集計方法(その3))などを行います。Type4比較研究などで、どこが違うかを比較する場合やType5準実験研究で効果を比較する場合は差の検定などがあります(表1)。

研究目的にあった統計手法の選択

データの分布や数

推測統計を行うにはデータが正規分布を示すことを仮定できるか、偏りがあるのかが統計手法選びの重要な選択ポイントになります(表2)。

統計選びの基準

度数分布が、平均値を中心として左右対称に釣り鐘型をした正規分布をパラメトリック、正規分布ではないものをノンパラメトリックと称します。正規分布かどうかは、度数分布グラフ(【Step35】データの集計方法(その2))を描いてデータの傾向を見ます。エクセル関数を使って尖度(正規分布より尖っている)と歪度(分布の山が右や左に偏っている)を目安にする方法や、統計ソフトを使って正規性の検定を行うなどの方法もあります。

また、データ数が増えれば増えるほど、正規分布に近づくという性質(中心極限定理)があります。そこでデータ数が十分かどうかも正規分布の判断基準になります。データ数については明確な基準はありません。あくまで目安ですが、概ねデータ数が50以上、少なくても30以上でなければパラメトリックの手法には向いていません。

尺度(回答)の種類

回答の種類(測定値の種類)が名義尺度、順序尺度、連続尺度(間隔・比尺度)のいずれであるかも統計手法の選択基準です。

名義尺度とは性別や職種など数値的な意味がない回答を指します。統計手法を選ぶ上では「良い・悪い」や「あり・なし」など2択の回答も名義尺度と同じ扱いをします。順序尺度は、「1.そうではない 2.ややそうではない~」のような順序で回答をするものです。連続尺度は血圧など連続した数値で回答(あるいは測定)したものです。

通常、名義尺度や順序尺度はノンパラメトリックの統計手法、連続尺度はパラメトリックの統計手法を使います。うつ尺度やQ O L尺度、不安尺度など既存の尺度は、連続尺度として扱います。順序尺度でも7段階順序尺度など間隔が狭くなるほど間隔の誤差が少なくなり、連続尺度に近づいていきます。

順序尺度でも間隔が狭く、かつ十分なデータ数があり、分布に偏りがなければパラメトリックの統計手法を用いてもよいでしょう。逆に連続尺度でもデータ数が少ない場合や、度数分布に明らかな偏りが見られる場合は、ノンパラメトリックの統計手法を用いた方がよい場合があります。

対応か独立か

同じ人に繰り返し同じ測定を行っている場合は「対応」、全く別々の人は「独立」といいます。看護介入の前後を比較するときなど、前後で同じ人に同じ測定を行った場合、「対応」のあるデータとしてペアで分析します。この場合、前後の差を一人ずつ計算します。

例えば、看護介入の前にAさんの収縮期血圧が140だったのが介入後に130になったとしたら、Aさんのデータは「-10」です。前後のデータが両方揃っていないと、「-10」という値が算出できませんので、前後のデータがマッチしなければなりません。

対して、男性と女性を比較するような場合は「独立」です。対応と独立では計算方法が違うので(後の回で説明)、間違えないように注意してください。

次回からは「推測統計の手順」について解説します。

(「ナース専科マガジン」2010年12月号より転載)