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【輸液製剤】誰もが経験する「コアリング」って?

  • 公開日: 2015/10/7

輸液製剤について、医療過誤につながるリスクのあるトピックスを2つ紹介します。


輸液容器の「コアリング」に注意!

輸液製剤は無菌性を保つために密封容器※1または気密容器に入っています。ゴム栓は、密封性を高めるために容器口部周縁部から圧縮される力を受けるように設計されており、そのため注射針をゴム栓に穿刺するとき、注射針のあご部※2によりゴム栓が削り取られることがあります。このゴム片を「コア」といい、この現象を「コアリング」といいます(図1)。

コアリング発⽣のメカニズム

図1 コアリング発⽣のメカニズム

※1:注射剤を充填したガラスバイアルなどが該当する。なお、固形または液状の異物が進⼊できず、内容医薬品の損失、⾵解、潮解または蒸発を防ぐことができる容器を「気密容器」といい、プラスチック製輸液容器が該当する(出典等:⽇本薬局⽅)

※2:図1参照

「コアリング」の発生には、

  1. ●ゴム栓の材質・形状
  2. ●注射針の径・形状
  3. ●穿刺方法

の3つが絡み合い、互いに関与しているとされています(図2)。

コアリングの発生要因

図2 コアリングの発生要因

「コアリング」が発生すると、「コア」が混入した薬液を患者さんに投与してしまうといったリスクになります。

「コアリング」の防止には、次の4つの方法が有効とされています。

1.注射針は指定位置に必ず刺入

注射針は、必ずゴム栓の指定位置(IN、◎印など)に刺入します(図3)。指定位置がない場合は、中央付近に刺入します。

ゴム栓の刺入位置

図3 ゴム栓の刺入位置

2.垂直にゆっくり刺入

針を刺すときには、ゴム栓に対して垂直にしてゆっくり刺入します。針の切り口は斜めになっていることから、さらに針を斜めにしてしまうと、あご部でゴム栓の一部を削り取ってしまいます(図1)。これを避けるためにも針は垂直に、できるだけゆっくりと刺入します(図4)。

垂直に刺入した針の模式図

図4 垂直に刺入した針の模式図

3.注射針は回転させない

2と同じ理由から、刺入の途中で針を回転させてはいけません。

4.再刺入では同一の場所を避ける

同じ容器に再度刺入する場合は、必ず違う位置に行います。同じ場所に針を刺してしまうと、前回の刺し穴の周囲をさらに切り取ってしまうことになり、「コアリング」が発生しやすくなります。

二槽バッグ(ダブルバッグ)製剤は隔壁の未開通に注意!

輸液バッグには、1種類の薬液だけを封入している単槽バッグ製剤と、隔壁によって2種類の薬液を封入している二槽バッグ(ダブルバッグ)があります。

ところが、二槽バッグ製剤を単槽バッグ製剤と勘違いしてしまい、隔壁を開通させずに使用することで、下室の液のみ投与されてしまう事例が報告されています※3

そこで、二槽バッグ製剤には単槽バッグ製剤と勘違いされることを防ぐために、隔壁部を目立たせ、二槽に分かれていることがひと目でわかるように、隔壁部やその上下付近に「赤色の太い点線」が入れられています。

また、「開通確認」と赤地に白抜き文字で表示したシールが、ハンガーに掛ける吊架孔(ちょうかこう)を塞ぐように貼付されています(図5)。

このような輸液バッグでは、使用時に隔壁を開通したことを必ず確認してから使用するように注意します。

二槽バッグ(ダブルバッグ)製剤の表示

図5 二槽バッグ(ダブルバッグ)製剤の表示※4

※3:公益財団法人日本医療機能評価機構がまとめたヒヤリ・ハット事例より
※4:「医薬品関連医療事故防止対策の強化・徹底について」(薬食発第0602009号)にて通知

このページの情報について

輸液製剤協議会

輸液の品質および安定供給の維持確立と輸液業界の健全なる発展に寄与することを通じ、医療に貢献することを目的とした業界団体。

このほかにも、輸液製剤の取り違え防止策など、さまざまな安全対策に取り組んでいる。詳細は輸液製剤協議会WEBサイトへ。

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