第2回 がん化学療法中の口腔合併症対策 ~経口摂取支援としてできること~
- 公開日: 2014/5/30
がんの化学療法では 、抗がん剤の副作用が口腔粘膜に及びやすく、高頻度で口腔粘膜炎などの口腔合併症が起こります。その結果、食事や水分摂取、会話などが困難になり、患者さんのQOLが著しく阻害されます。
外来でのがん化学療法がますます増える中で、どんなケアや支援が求められるのか。看護師に求められる口腔ケアのスキルを身につけるセミナーが開催されました。
がん治療における口腔管理は治療の完遂にまで影響するテーマ
「がん患者さんのお口の問題は、何でも引き受けます!」のキャッチフレーズによる自己紹介で講義が始まったのは、静岡がんセンター、国立がん研究センターと、がん専門病院の歯科治療を担ってきた上野尚雄さんです。がん治療中に生じる口腔内の多様な諸問題に対し、「痛い」「食べられない」のシンプルな視点から、歯科的なサポートを行ってきました。
口腔合併症により疼痛が生じることで経口摂取が低下すると、低栄養や脱水が起こって、がん治療の完遂を妨げ、治療の効果を下げることにもなりかねません。実際、口腔粘膜炎によって抗がん剤の投与量が減量されるリスクは2倍、骨髄抑制期の感染リスクも2倍になるそうです。
「生命にかかわる治療をしているのだから、口腔合併症で経口摂取ができなくても仕方ない」という、従来の考え方では済まされない問題であることが浮き彫りになりました。
具体的な治療・ケア戦略として、口腔内アセスメント、患者教育、疼痛緩和、感染制御、乾燥対策(保湿)などに取り組み、経口摂取を支援することが、これからのがん治療に求められていると説明しました。
看護師だからできる口腔管理を そして医科と歯科の架け橋に
そんな歯科医師の立場から、看護師に行ってほしいこととして挙げられたのは、
- ●患者教育(指導)
- ●口腔内のアセスメント
- ●口腔ケア(セルフケア)支援
- ●医科と歯科の架け橋
の4点です。
がん対策情報センターの情報検索サイトでは、検索件数のトップが口内炎だったこともあるそうです。患者さんが欲しているのは「戦う道具」だと、上野さんは力説します。
化学療法中の口腔合併症はゼロにはなりません。でも、予期される口腔の副作用に関してあらかじめ適切な情報が提供されていれば、いざ起こっても安心して対応できると指摘。患者さんにそんな「戦う道具」を手渡すのが、「患者教育」です。
そして「ケアしきれない口腔トラブルに気づいたとき、ケアの方法がわからない場合には、歯科との連携を考えてください。ケア方法や対処方法の指導や情報提供などが可能です」と、講演は結ばれました。
講義の様子