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【連載】ケースで考えよう!看護倫理レッスン

【看護倫理・事例】第2回<解決編>体位変換したら「夜中に起こすな」と怒られたケース

  • 公開日: 2014/6/17
  • 更新日: 2020/10/22

ジレンマの原因がどこにあるのか、それらが倫理的にどのような問題を含んでいるかを見極めるためには、それぞれの行為が倫理的に正しいかどうかを点検してみる必要があります。

その方法にはいろいろありますが、このコーナーでは、フライの倫理原則に基づきチェックする方法を紹介します。

第1回で紹介したケース体位変換したら「夜中に起こすから眠れない」と怒られてしまった・・・について、5つのポイントを確認しながら、解決策を考えてみましょう。


5つのポイントでチェック

ポイント1 あなたの看護行為は、患者さんの害になっていませんか?

田中さんの不満を買った夜中の体位変換ですが、では、もし看護師が田中さんに体位変換を行わなかったとしたら、どうなるでしょうか。おそらく、入院中に褥瘡をつくったり、排痰が思うように進まず、呼吸状態の悪化や合併症、回復の遅れがみられたかもしれません。

これらを防ぐことができたという点では、体位変換を実施した看護師の行動は、患者さんへの害を十分に避ける行動になっていたといえるでしょう。

体位変換を行わなかったときの害と体位変換を行ったときの害の両面からみて、看護師は体位変換を行うことを選択しました。しかし田中さんの睡眠を妨げることになり、体位変換は、患者さんに害を与える行為になっていたとも考えられます。

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ポイント2 あなたは看護師としてきちんと役割を果たしていますか?

このケースでは、看護師はただ漠然と体位変換を行っていたわけではなく、ケアプランに基づき、決められたケアを決められた時間ごとに、懸命に実施していました。その結果、田中さんには褥瘡が発生せず、呼吸状態も改善しています。したがって、看護師としての役割をしっかり果たすことができていたといえるでしょう。

ただし、もう一歩踏み込んで考えるならば、呼吸困難が強く、体動も難しい入院当初に設定したケアプランを、回復がみられた時期になっても、そのまま実行することが果たしてよかったのかを再考する必要があったでしょう。田中さんにとっては、そろそろ再評価を行い、ケアプランの立て直しを図る時期であった可能性が高いといえます。

常に患者さんの状態に合わせた目標の設定を行い、評価を繰り返すことが看護師の責務ともいえますから、この視点において看護師は、自分の役割を果たしきれていたとはいえません。

ポイント3 患者さんに情報は正しく伝わっていますか?

確かに、このケースでは「体位変換の必要性」が、患者さんにしっかり伝えられていなかったかもしれません。入院当初の田中さんは、強い呼吸困難を示しており、とても看護師からの説明を聞けるような状態ではありませんでした。そこでおそらく、詳しい説明をされないまま、ケアプランが立てられ、実施されてきたことでしょう。

しかし、たとえ当初は会話ができない状態であっても、田中さんの熱が下がり、呼吸が楽になった入院4日目からは、看護師の説明を聞くことができたのではないでしょうか。そこで、この時期に及んでも説明がなされていないことは、患者さんに正しい情報を伝える努力がなされていなかったと判断できます。

ポイント4 患者さんは自分のことを自分で決められますか?

患者さんが自分で選択したり、行動を決定するためには、「ポイント3」で示したとおり、患者さんに十分な情報が伝えられていることが前提になります。

例えば、なぜ夜間に体位変換が必要なのか、あるいは体位変換以外に方法はあるのかないのか、体位交換に対して患者さんの希望を取り入れる余地はあるのか、などの情報が与えられていれば、患者さんの判断の材料になります。

しかしこのケースでは、田中さんに体位変換に関する目的や効果は伝えられていなかったようです。そこで田中さんは、ケアの選択をすることができず、「眠れない」という不満とともに、看護師のケアを否定し、言葉かけを拒絶することしかできなかったのでしょう。

ポイント5 あなたはどの患者さんに対しても、公平で平等でいますか?

看護師として、一人の患者さんだけにケアが集中してしまったり、一生懸命になってはいけません。医療者は、常にすべての患者さんに対し、公平で平等に接することが求められているためです。特に複数の患者さんの権利にかかわるようなケースでは、この5つめのポイントのチェックも欠かせません。

ただし今回のケースでは、田中さんは個室にいて、周囲の患者さんへの直接の影響はありませんでした。そこで、この項目は今回は省略します。

どのように対応をすればよかったのか

このケースでは、体位変換そのものには問題がないことがわかりました。

ただ、ケアプランの評価の時期に問題があったようです。つまり、田中さんが回復してきた時点で、入院当初に立案されたケアプランを再評価し、現在の田中さんの状態に合わせたプランを練り直す必要がありました。

なぜならケアプランは、刻々と変化する患者さんの状態に合わせて展開されるべきものだからです。そのためには、適宜、患者さんの変化に合わせて再評価を繰り返す必要があります。

また、患者さんにもっと十分な情報が提供されていれば、ケアを受け入れるか、あるいは違うケアがあればそれを望むのかなどの選択もできたでしょう。

入院当初の田中さんは、呼吸困難が強く、体位変換の必要性を説明することはできなかったかもしれません。

しかし、回復して会話ができるようになった時点で、体位変換の目的と効果を伝えていれば、田中さんは自分の意思に基づき、体位変換を納得して受け入れるか、あるいはリスクを選んで断ることもできたでしょう。

そうすれば、田中さんが不満を表出する前に、体位変換をどう思っているのかを看護師は聞くことができたはずです。

そして、「肺炎にならないように、夜中の体位変換を1回だけはさせてください」や「痰が出るように、ご自分でも離床を頑張りましょう」などの提案をしたり、話し合うこともできた可能性が高くなります。

日々の看護実践のなかでは、患者さんの状態の変化にケアプランの評価が追いつかないことがあります。

その意味でも、もしも田中さんと体位変換について話し合うことができていたら、看護師自身も自信をもって体位変換の中止や回数を減らす検討ができたのではないでしょうか。

結論としては、看護師は、田中さんの状態に合わせてケアプランの再評価を行い、体位変換の意味や必要性をしっかり検討するべきでした。

また、継続の必要があれば体位変換に関する説明を十分したうえで、最終的な判断は田中さんの意思にゆだねるべきだったといえるでしょう。

次ページでは「結果と応用レッスン」について解説します。

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