第9回 透析導入時・透析維持期の看護のポイント
- 公開日: 2015/10/21
透析導入の際には、患者さんへの精神的支援、セルフケアのサポートなど看護師に求められる役割は多岐にわたります。
ここでは、導入にあたってどのようなケアが必要となるのかを解説します。
透析方法を選択するときの注意点
わかりやすく説明する
血液透析と腹膜透析のどちらの方法を選択するのか、患者さんが自己決定するためには十分な情報と理解が必要です。
それぞれのメリットとデメリットをわかりやすく説明し、同時に患者さんの身体状況、理解力、生活状況などに照らし合わせて考え、選択できるように支援していくようにします。
最近では、「ネガティブ・セレクション」といって、その方法を選択したいわけではなく、何らかの理由でそうせざるを得ない選択をする人も少なくありません。
例えば、「患者さん自身は血液透析を望んでいるものの、通院ができないために腹膜透析を選択する」あるいは「腹膜透析を望んでいるが、手に障害があって1人での実施は難しく、しかも家族のサポートも期待できないために血液透析を選択する」といった具合です。
理解度を確認する
さらに、説明だけでは具体的なイメージをつかめないという患者さんもいます。
初めは社会生活を送るうえで、制約の少ない腹膜透析を希望していたものの、腹膜透析は腹部に腹膜カテーテルを造設することを知り、その実際を目にしたことで、血液透析に変更する患者さんもいます。
患者さんが、この2つの方法に関して、どこまで理解しているのかを確認しておくことも大切です。
セルフマネジメントを支援する
透析療法で、最も重要となるのが患者さんのセルフケアです。
透析治療さえ行えば、ほかの症状コントロールがいらないわけではありません。
合併症の予防、水分制限、体重管理、食事療法、薬物療法などを行うことが必要なのです。
つまり、患者さん自身のセルフケア能力を高めることも透析療法での患者さんサポートのポイントとなるのです。
そのためには、導入直前期、導入直後期、維持期とそれぞれに、患者さんのセルフマネジメントのための支援を実施していくことになります。
看護に連続性を持たせる
また、透析を受ける患者さんの治療の場は療養生活は病棟で、透析は透析センターで、退院後の受診は外来と、変化していきます。
例えば、入院中の透析は、看護師が透析センターまで送ることはあっても、透析を受けている患者さんの様子をみることはなく、逆に透析センターの看護師も病棟での療養の様子を知ることはありません。
1人の患者さんに対する看護に継続性がなく、場面ごとの看護になってしまうことも多々あるようです。
どこで治療を受けようとも継続した看護ができるようなシステムが、透析治療でも重要になります。
同院では、透析導入が予定されている患者さんについては、透析センターのスタッフが情報収集のため病棟に赴く際に、導入前に訪問をして顔見知りになるようにしています。
透析が開始されたとき、見知ったスタッフがいることは、患者さんにとって安心感につながっているようです。
図 透析導入の流れ