【連載】第53回日本小児外科学会学術集会ランチョンセミナー レポート
第2回 在宅胃瘻栄養管理における問題点の検討ーこども病院・患者家族団体・医療機器メーカーが協同して行う小児在宅医療へのアプローチ【PR】
- 公開日: 2016/10/3
共催:第53 回日本小児外科学会学術集会/第24 回アジア小児外科学会/ハリヤード・ヘルスケア・インク
2016 年5月24~26日、第53回日本小児外科学会学術集会・第24 回アジア小児外科学会が開催されました。「『わ』をもって尊しとなす―小児外科医療の和・輪・倭―」というテーマのもと、24日に行われたランチョンセミナー「こども病院・患者家族団体・医療機器メーカーが協同して行う小児在宅医療へのアプローチ」では、在宅での胃瘻栄養管理をスムーズに行うためのエッセンスが紹介されました。
※本記事における製品に関する記載内容につきましては、講師の個人的見解に基づくものです。ご使用の際は、該当する添付文書をお読みください。
在宅胃瘻栄養管理における問題点の検討
日本静脈経腸栄養学会の「栄養療法の実施状況に関するアンケート調査結果」 (引用文献2参照)では、半固形状流動食のメリットとして、“使いやすさ”が挙げられています。
これに対し、「シリンジによる投与が多く、注入している間、介護者がついている必要があるため、家族、患者さんに負担がかかるのではないか」という疑問が、高見澤先生より提示されました。栄養の形状(液体と半固形状流動食)による介護時間の変化を調べたアンケート調査によると、準備時間を除くすべての項目(介護時間、投与時間、片づけ時間、目が離せない時間)で、半固形状流動食のほうが液体よりも時間は短いという結果(引用文献3参照)となっていました。この調査では半固形状流動食は投与がしやすく、介護者の負担を軽減することが示されています。
しかし、半固形状流動食は内容によっては粘度が高く、シリンジに圧がかかり介護者の負担につながることが考えられます。そこで高見澤先生は、シリンジで胃瘻ボタンに半固形状流動食を流したときの「単位時間に流れる栄養剤の流量」と「シリンジ押し荷重」の測定実験を行いました。
その結果、1分間に30mL投与する場合、MIC-KEY*(ハリヤード・ヘルスケア・インク)で押し荷重は5~6ニュートン(1ニュートン≒100g)ほどで、倍の60mLを投与しても、それほど高圧にはならないことがわかりました。
さらに、もう1つの問題点として高見澤先生は胃瘻ボタンのバルーン内の水の確認についても触れました。在宅胃瘻栄養管理では、安全で簡便な管理を行うために、胃瘻ボタンの水の確認はできるだけしないほうが望ましいとされています。MIC-KEYの添付文書ではバルーン内の水の交換は1週間ごとに設定されており、他社製品と比べて短くなっています。
高見澤先生は、この期間に疑問をもち、MIC-KEYの水の交換間隔を再検証するため、胃瘻外来の導入例を対象に、30日間バルーン内の水の確認を行わなかった場合にどのくらいの量の水が減るのか調査しました。
30日間のバルーン内の水の減少量の中央値は0.5mLにとどまり(図2)、バルーンの直径の縮小幅は、減少量がもっとも多い例でも約1mmと小さく、バルーン抜去のリスクはほとんど変わりませんでした。
この結果を受け、高見澤先生は「在宅におけるMIC-KEYのバルーン内の水の確認は不要であり、来院時に確認すればよいのではないか」という一考察を示しました。
*販売名:MIC* 栄引用文献養チューブ | 医療機器認証番号:226ADBZX00194000
次回は、病院・患者家族団体・医療機器メーカー3者協同の取り組みについて解説します。
【引用文献】
2)井上善文,他:栄養療法の実施状況に関するアンケート調査結果報告(3).日本静脈経腸栄養学会雑誌2015;30(6):1315‐23.
3)岡田晋吾,他:半固形化慶弔栄養の投与が介護負担に及ぼす影響.静脈経腸栄養 2011;26(6):1399-406.