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【連載】排尿自立指導料導入で増える!変わる!排尿ケアでできること

第1回 “排尿自立指導料” って何?

  • 公開日: 2018/7/29

 2016年4月の診療報酬改定で、排尿自立指導料が新設されました。しかし、新設された背景や診療報酬を受けるための条件などについては、よく理解できていないという人も多いのではないでしょうか。ここでは、排尿自立指導料に関する基礎的な知識を解説します。


排尿自立指導料ができた理由

人としての尊厳を守る!

 排尿自立指導料は、日本創傷・オストミー・失禁管理学会と日本老年泌尿器科学会が共同して厚生労働省に申請していた医療技術「下部尿路機能療法」が基本となっています。新設に伴い、名称は「排尿自立指導料」と変更されましたが、趣旨に変わりはなく、原案よりも広く臨床現場に適用される内容になりました。

 排尿自立とは、「排尿管理方法は問わず、自力で排尿管理が完結できること」です。体制づくりやスタッフの育成など、排尿自立指導料の導入にはある程度の時間を要するものの、患者さんの状態をアセスメントして評価を行い、計画に沿ったケアを実施することにより、早期退院やQOL向上に確実につなげることが可能になります。さらに、寝たきり患者さんの減少や、人としての尊厳が守られようになることも期待されています。

算定を受けるための条件は?

 排尿自立指導料は、保険医療機関に入院している患者さんに対して、下部尿路機能の回復のための「包括的な排尿ケア」を行った場合に、週1回200点を6回まで算定できます。

 具体的には、排尿ケアに関する専門的知識(指定の研修を終了するなど)を有した医師と看護師、そして、特に研修は必要としませんが排尿ケアに関して経験のある、理学療法士(PT)または作業療法士(OT)からなる「排尿ケアチーム(図1-1)」を立ち上げます。この排尿ケアチームと、対象患者さんのケアを担う病棟看護師などが連携して、排尿自立の可能性と下部尿路機能を週1回、評価します。

排尿ケアチームの編成

 さらに、排尿ケアチームと病棟看護師などが協同して排尿自立を促すための環境整備、下部尿路機能の維持、リハビリテーション、薬物療法などを組み合わせた包括的排尿ケアを実施します。

 なお、排尿ケアチーム、病棟看護師などのどちらか一方しかかかわらなかった場合は、算定の対象外となるので注意が必要です。

対象となる施設・患者さんは?

施設基準を満たすには?

 排尿自立指導料の算定を受けるには、施設基準(一定の人員や設備)を満たす必要があります。排尿自立指導料の施設基準は大きく3つ挙げられます(表1-1)。また、施設基準の1つである院内研修は、①院内全職員を対象としたもの、②病院看護師全体を対象としたもの、③病棟リンクナースおよび「排尿自立指導料」を実施する病棟看護師を対象としたもの、の3種類を排尿ケアチームが行うことが推奨されています。

排尿自立指導料算定の施設基準

対象となる患者さんは?

 排尿自立指導料の算定対象となる患者さんは、該当する医療機関に入院中の患者さんです。ただし、該当する医療機関であったとしても、回復期リハビリテーション病棟や包括ケア病棟はあてはまりません。

 また、「①尿道カテーテル抜去後に、尿失禁、尿閉等の下部尿路機能障害の症状を有する患者さん」「②尿道カテーテル留置中であって、尿道カテーテル抜去後に下部尿路機能障害を生ずると見込まれる患者さん」のどちらかに該当することも条件とされています。②の下部尿路機能障害を生ずると見込まれる患者さんは、尿道カテーテルを入れる前から下部尿路機能障害の症状があった患者さんや、手術などによって下部尿路機能障害が起こることが予測される患者さんを指します。前立腺摘出術を行ったことによる尿失禁や、高齢者で人工骨頭置換術などによりトイレに行くことができず、オムツを使用している患者さんも含まれます。

下部尿路機能障害とは?

 前述のように、対象となるのは、下部尿路機能障害の症状を有する、あるいは下部尿路機能障害を生ずると見込まれる患者さんです。そのため、下部尿路機能障害についても理解しておく必要があります。

下部尿路機能は、腎臓でつくられた尿を膀胱に溜める蓄尿機能と、溜まった尿を体外に排出する排尿機能の2つに大きく分かれます。下部尿路機能障害では、これらの機能が障害され、蓄尿や排尿に関するさまざまな症状、つまり下部尿路症状が現れます。下部尿路症状は「蓄尿症状」「排尿症状」に加え、「排尿後症状」の3つに分類されます(表1-2)。

下部尿路症状の分類

蓄尿症状
 膀胱に尿を溜めておくことができなくなることで起こります。突然の強い尿意に我慢しきれずに漏れてしまったり、咳やくしゃみをして腹圧がかかったときなどに起こります。蓄尿症状は、膀胱が過敏になり少しの刺激にも過剰に反応してしまうこと、尿道が緩いことに起因しています。膀胱が過敏となる原因は、膀胱炎など膀胱内の炎症や脳血管障害の後遺症、過活動膀胱などが挙げられます。尿道が緩くなるのは骨盤底筋の緩みが主な原因です。女性の場合は出産後、男性では前立腺摘出後などによくみられます。

排尿症状
 尿が出にくい、尿の勢いが弱いなど、排尿時に何らかの問題がみられ、膀胱の収縮力低下や尿道が弛緩できないことに起因しています。膀胱の収縮力が低下する原因は、膀胱の収縮を司る骨盤神経の損傷や、尿意の低下により膀胱内に尿が溜まりすぎたことで過伸展が起こるためです。尿道が弛緩できない原因は前立腺肥大症や尿道狭窄のほか、神経の障害(糖尿病性末梢神経障害、腰部椎間板ヘルニア、腰部脊椎管狭窄症など)によるものと考えられます。

排尿後症状
 排尿直後にみられます。排尿したにもかかわらず、尿が膀胱に残っている感じがするほか、男性の場合は、実際に尿道に尿が残ってしまうことで起こります。


参考文献
日本創傷・オストミー・失禁管理学会,編:平成28年度診療報酬改定「排尿自立指導料」に関する手引き,照林社,2016


この記事はナース専科2017年6月号より転載しています。

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