第17回 中心静脈カテーテル先端の適正位置
- 公開日: 2010/7/26
輸液・栄養管理を有効に実施するために重要なことの一つは、投与経路を安全に作成して維持し、目的とする輸液や栄養を確実に投与することです。輸液の場合は、血管内にカテーテルが確実に入っていればいいのですが、栄養輸液を投与する場合は、栄養輸液自体の血管壁への刺激が問題になります。そうなんです。中心静脈栄養(total parenteral nutrition:TPN)を実施するためには、カテーテル(中心静脈カテーテル:central venous catheter:CVC)の先端を適正位置、上大静脈(superior vena cava:SVC)や下大静脈(inferior vena cava:IVC)内に位置させなければならないのです(図1)。
TPN施行時には、なぜ、CVC先端を中心静脈内に位置させなければならない?
末梢静脈栄養を実施する際の問題点として、静脈炎が発生しやすいので、これに対する対策も講じる必要があることはすでに説明しました。実は、TPNでも同じことが起こる可能性があるのでCVCの先端位置は非常に重要なのです。
現在使用されているTPN輸液は、ほとんどがキット製品となっています。糖電解質液とアミノ酸液が隔壁を隔てて収納されていて、使用直前に隔壁を開通させて両輸液を混合させるダブルバッグ製剤、TPN用総合ビタミン剤が配合されているトリプルバッグ製剤、微量元素も配合されている製剤などがあります。私は個人個人に最も適正な輸液を投与したい、患者さんは一人ひとり栄養投与量も組成も違うはず、という考えで栄養管理を実施しています。そのため、簡便性が優先されていて、結果的に処方内容がある意味おざなりにされている、ビタミンや微量元素が配合されているキット製品には批判的なのですが、ま、それはここで問題として取り上げるのはやめます。とにかく、ここで説明しなければならないのは、これらのTPN輸液の浸透圧が非常に高く、末梢静脈内への投与が不可能であるということです。表に示しますように、浸透圧比(生理食塩水の浸透圧に対する比)は4から11と非常に高くなっています。この高い浸透圧の輸液を末梢静脈内に投与すると、末梢静脈は耐えられず、静脈炎を起こしてしまいます。上大静脈または下大静脈内は非常に血流が豊富なので、このような浸透圧の高い輸液を投与しても、すぐに希釈されるので静脈炎を起こさずに投与できる、ということなのです。逆に表現すれば、上大静脈や下大静脈にカテーテル先端を留置することができるようになったため、TPNが実施できるようになった、ということです。