地域包括ケア病棟で働く際に知っておきたいこと
- 公開日: 2021/10/28
1.地域包括ケア病棟ってどのような病棟?
地域包括ケア病棟で勤務するにあたっては、「施設基準」を知っておく必要があります。それは、「地域包括」という名のとおり病院の病床機能の一つでありながら、「地域のための」必要な役割を担うことが求められているからです。
それでは、ご自分が勤務する病院の地域での役割を思い浮かべてみてください。看護職員配置7:1の急性期病院でしょうか ?それとも看護職員配置10:1急性期病棟を有し、回復期リハビリテーション病棟や、医療療養病床を併せ持ったケアミックス病院でしょうか? ご自分の勤務する病院は、2次救急を担う病院でしょうか? 同じ地域の中に第3次救急を担う基幹病院は存在しているでしょうか? 実はこの地域全体の医療提供体制によって、勤務している「地域包括ケア病棟」に求められる役割が違ってくるのです。
地域包括ケア病棟には、主に①急性期治療を終えた患者さんの受け入れ、②自宅や介護施設等からの緊急時受け入れ、③在宅・生活復帰支援の3つ役割が期待されています。
そして、それらの役割の比重は地域の医療体制によって異なってきます。たとえば、急性期を経過した患者さんの受け入れが自院患者さんに集中している急性期ケアミックス型、連携病院からの転院受け入れが大半を占めるサテライト型、在宅や介護施設等地域の緊急時受け入れを主とする地域密着型などです。
2.地域包括ケア病棟の特徴
地域包括ケア病棟は平成26年度診療報酬改定の際に新設されました。その施設基準については適宜見直しが行われています。以下は、令和2年度診療報酬改定時の施設基準になります(表1)。
下記1~7が大きな特徴です(表2)。
1 | 在院日数60日以内 |
2 | リハビリテーションの一日平均2単位以上の提供 |
3 | 重症度、医療・看護必要度Ⅰが14%以上または重症度、医療・看護必要度Ⅱが11%以上 |
4 | 在宅復帰率7割以上(病院の規模や許可病床数によって違いがある) |
5 | 自宅等からの入院した患者割合、自宅等からの緊急搬送患者の受け入れ割合(入院基本料による違いがある) |
6 | 入他院支援の仕組みが病院内にある |
7 | 適切な意思決定支援に関わる指針が定められている |
回復期病棟等と区別することは急性期病棟や地域の基幹病院からの転入による患者さんだけではなく、「自宅からの入院」「自宅からの緊急入院」受け入れ割合を施設基準として新たに設けました。これにより、外来通院中の患者さんや在宅医療サービス(訪問診療、訪問看護、デイケア等)を利用している方の慢性疾患の急性増悪を急性期病棟や基幹病院を介さずとも直接受け入れられるようになっています。治療からリハビリテーションまでの提供を行い、また住み慣れた地域へ戻っていただくための病床機能であると言えます。
3.地域包括ケア病棟で求められる看護
患者さんが地域に戻るための看護
地域包括ケア病棟で患者さんを受け入れる目的は、簡単に言うと「病状が改善したら元の生活に戻る」ことです。そのため、「その方が、今までどこで、どのように生活していたのか?」を知ることがとても重要です。また、退院するにあたって元の生活レベルで可能かをアセスメントし、入院してきたその日から、どのようにどこに退院するかを見越して、ケアとリハビリと環境調整をすることがとても重要になります。そして、患者さんが工夫して生活されてきたセルフケアについては、維持できるようサポートすること。新しく獲得が必要な生活様式については、「どうしたらできるだろうか?」という視点で共に考え工夫し、支援することがとても重要です。この視点がないと、在宅復帰は難しいと医療従事者の側が決めつけてしまうことで、患者さんの在宅復帰を阻害してしまう可能性があります。
また、在宅で療養生活をするうえで必要な社会資源についてソーシャルワーカーと相談します。継続的な医療提供が必要な場合の、訪問診療・訪問看護・訪問リハビリを導入する必要がある場合は、入院中から、担当のケアマネージャーと準備を進めていくことも必要です。
入院可能な日数は60日ありますが、病状の改善と生活状況の改善の目処や環境調整ができたら可能なかぎり早めに退院調整を行い、元の生活に戻れるようにすることが大切です。
患者さんを総合的に捉えた看護
地域包括ケア病棟に入院している患者さんの病状は、慢性疾患の急性増悪等の亜急性期から、慢性期、回復期、終末期まで大変幅が広く、さまざまな疾患の患者さんが入院しています。求められる看護技術として大切なことは、正確なフィジカルアセスメントと基礎看護技術が正しく提供できることであると私は考えています。
慢性期疾患の急性増悪やコントロール期は急性期ほど顕著な症状がなく、じわじわと悪化していることもあります。皆さんが日々ケアするなかで、フィジカルイグザミネーション、フィジカルアセスメントをしっかりとできているでしょうか? 皆さんが日々丁寧に観察し、ケアしていることが、異常の早期発見につながり、さらなる病状の悪化を防ぐことや、身体機能の低下を予防することに繋がります。急性期ほど大きな変化や治療行為がなくても、丁寧に観察し、アセスメントし、回復をサポートしていただくことが大切です。
参考文献
●厚生労働省:令和2年度診療報酬改定の概要(入院医療)(2021年9月6日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000638365.pdf
イラスト/こさかいずみ