チーム医療で支える在宅自己注射(喘息)【PR】
- 公開日: 2022/6/15
ひたちなか総合病院呼吸器内科では、デュピクセントによる治療を行う場合、在宅自己注射の導入を基本としています。
デュピクセントによる治療が決まると、医師、看護師、薬剤師などの多職種を含むチーム医療体制で、治療内容の説明~自己注射の導入~導入後のフォローまでを行っています。なかでも看護師は患者さんとの接点が多く、チーム医療体制の中で大きな役割を担っています。
そこで今回は、ひたちなか総合病院呼吸器内科の山田英恵先生、外来看護師の戸辺幸江先生、中央処置室看護師の清水洋子先生にお話を伺い、自己注射によるデュピクセントの導入~フォローの流れとそのポイントについて、ご解説いただきました。
自己注射によるデュピクセントの導入~フォローの流れ

デュピクセントを用いた喘息治療の方針、通院及び自己注射による治療の進め方について簡単に説明する。
デュピクセントを使用される患者さん向け冊子を用いて説明を行う。特に金銭的な問題や自己注射への不安など、生活面を中心に患者さんの話を聞きながら答えていく。

患者さんの気持ちがかたまり、自己注射の導入が決定すると、薬剤師と処置室看護師に連絡を行う。

自己注射に関わる資材一式(スターターキットなど)を患者さんに渡し、注射製剤や資材についての説明を行う。説明が終わると、処置室看護師に連絡する。
医師・看護師から見た自己注射の患者さんにとってのメリット

趣味や仕事の充実
通院頻度の減少により、「新たな趣味を始めた」、「仕事への影響が少なくなった」といった声を聞くことがある。「何十年か前に同じような薬があったら人生が変わったかも」という声や「諦めていた妊娠にチャレンジしたい」といった声を聞くこともあり、患者さんの様々な悩みが解決されていっていると感じる[山田・戸辺・清水]。
喘息治療に対する自己参加感
患者さんにとって治療は、基本的に受け身であり、医師の診断や指導に合わせて行うケースが多い。 自己注射により、自己参加感が芽生え、喘息を自分でコントロールしているという自信にもつながる。医療従事者と一緒になって、喘息を克服しようという感情が芽生えやすくなっている[山田]。
医療従事者との交流のきっかけ
患者さんとの交流の機会が増えた。外来では都度患者さんに声掛けをし、患者さんから院内の廊下などで話しかけられる機会も多くなった。アンケートに回答してもらいながら、世間話をすることもある。患者さんも看護師に対して、自身のことを話しやすくなったのではないかと感じる[戸辺]。
ペン型製剤で操作が簡単に
デュピクセントの剤型はこれまでシリンジのみであったが、 2020年11月にペンが発売となった。 ペンは操作がより簡単であり、特に自己注射においてはペンが主流となっていくと考えている[山田]。

スターターキットの中身を一つ一つ出して説明し、自己注射手技の指導を行う。
デュピクセントは初回2本注射するため、1本目は看護師が注射し、2本目に患者さんに自己注射を行ってもらう。
▼スターターキットを活用
導入時は、スターターキットを活用している(図1)。薬剤師からも説明はしているが、処置室でも中身を一つ一つ出し、さらに詳細な説明をするようにしている。特に準備マットの使用頻度は高い[清水]。

▼手技指導時のポイント
清潔操作の重要性を伝え、最初に手洗いを徹底させており、注射器を押し付けることに躊躇する方には、一気に刺すようにと指導を行う。ペンの場合、確認窓の色が変わった後、5~10数えてから皮膚から離すよう指導している。シリンジの場合、補助具の使用は患者さんの判断に任せている[清水]。
▼看護師同士で模擬指導
全ての看護師が一定の内容を説明できるよう、時間がある時に看護師同士で集まり、一人が看護師役、一人が患者さん役になり、模擬指導を行っている[清水]。
▼患者さんに合わせたコミュニケーション
緊張している方が多いので、雑談をしたり、話し方も使い分けるようにしている。注射というと痛い、怖い、というイメージをもちやすいため、針が細いのでそこまで痛みや出血は強くないと伝え、不安げな患者さんには、デモ機で何度も練習して励ましたりと、その人に合わせた指導を心掛けている。人によって感じ方や行動が異なるので、それぞれの反応や表情を見ながら指導するのが重要で、型にはめず患者さんに合わせた指導をしている[清水]。
▼家族を交えた指導では、主導権を把握
家族を交えた指導では、患者さん本人の意志ややる気を確認したうえで会話の中から家族内での主導権を把握する。本人に打つ意志がある場合は本人、家族が主導権を握っている場合は家族を中心に指導している[清水]。


自己注射導入チェックリストを用いて、手技評価を行う。手技取得ができると、自己注射導入となる。
チェックリストで手技評価
自己注射指導チェックリストは、処置室看護師が作成したもので、電子カルテに保管している。自己注射の流れを細分化し、各ポイントについて評価できる形となっているため、どの看護師も同じポイントをおさえて評価を行うことができる。気付いた点はチェックリストに記入し、次回指導時の参考にしている[戸辺]。
2回目以降も同じ看護師が指導
導入には少なくとも2回、必要であれば3回以上指導を行っているが、できるだけ毎回同じ看護師が担当するようにしている。特に初回導入には30分程度かかり、患者さんも看護師を覚えていることが多いため、2回目も同じ看護師が携わることで「同じ看護師さんでよかった」「、安心します」といった意見をもらうことがある[清水]。


導入後、初回の外来で、自己注射に関するアンケートを行う。半年後、1年後にも再度アンケートに記入してもらい、フォローを行う。内科から月に数回フィードバックがあるので、特に注意すべき患者さんに対してはより慎重に指導を行う。
▼アンケートで状況確認
困っていることや、副作用の確認のため、導入後の初回の外来、半年後、1年後にアンケートを行っている(図2)。その後、注射部位を見たり、実際に触ってしこりがないかを確認したり、副作用についても改めて確認し、アンケート結果は電子カルテに取り込み、医師、看護師、薬剤師で共有している[戸辺]。

▼定期的に声掛け
慣れてくると、消毒をしなかったり、服の上から注射したり、毎回同じ部位に注射したりと、自己流で注射をするケースが出てくる。こうしたことを防ぐには、定期的に声掛けを行うことが重要だと考えている[戸辺]。
医師・看護師から見たチーム医療

左から、清水 洋子 先生、山田 英恵 先生、戸部 幸江 先生
主役は看護師
治療や病態に関しては医師から説明を行うが、それ以外はほとんど看護師、薬剤師にサポートしてもらっている。皆さんがいなければ当院の喘息治療の現状はない。特に重症喘息では、看護師が主役ではないかと考えている。チーム医療には様々な職種を巻き込むため、病院側の協力が必須だが、自己注射は、在宅自己注射指導管理料の算定対象となるため、病院への交渉はしやすかった[山田]。
医師からのバトンを引き継ぎ、チームで患者さんを見る
自己注射導入時はまず医師から説明を行い「では、次は」とバトンを渡してくれるので、それを引き継ぎ、さらに薬剤師やソーシャルワーカーとも連携し、チームで患者さんを見ている[戸辺]。特に薬剤師とは、以前はカルテの記録からしか情報を得られなかったが、今では直接話す機会があり、患者さんの反応を聞けるようになった[清水]。山田先生の声掛けから、上司を通じてチームへの参加を引き受けたが、色々な体験をさせてもらっていると感じている[戸辺]。

ひたちなか総合病院




MAT-JP-2203900-1.0-2022.6月作成