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千葉市、千葉大学及びノボ ノルディスク ファーマ株式会社 「肥満及び肥満症対策に関する連携協定」締結式

  • 公開日: 2024/11/27

2024年10月9日、千葉市役所庁舎の会場とオンラインのハイブリッド形式にて、千葉市、千葉大学及びノボ ノルディスク ファーマ株式会社による「肥満及び肥満症対策に関する連携協定」締結式が行われました。
当日は、千葉市長の神谷俊一さんから千葉市が抱える健康課題と今回の連携の概要を、千葉大学学長の横手幸太郎先生から肥満症に関する解説と千葉大学の役割と期待について、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社代表取締役社長キャスパー ブッカ マイルヴァンさんから、国内外における官民学連携の今までの取り組みと本連携への貢献についての講演がありました。今回はその様子についてレポートします。


千葉市を取り巻く健康課題・本連携の概要

千葉市 市長 神谷 俊一 さん

千葉市 市長 神谷 俊一 さん

千葉市の健康・医療に関する取り組みと課題

 千葉市では、令和5~14年度の千葉市基本計画の柱の1つに、健やかに暮らせる社会づくりの推進を掲げています。そのなかには、特定健康診査・特定保健指導の推進、個人の検診結果や服薬履歴などの健康情報が記録されたパーソナルヘルスレコードの活用による健康施策の推進、生活習慣の改善のため食育の推進など、健康・医療分野でさまざまな取り組みを進めています。

一方、令和4年度に実施した「健やか未来都市ちばプラン」(第2次健康増進計画)の最終評価では、肥満傾向にある子ども、成人の肥満者、高血圧、脂質異常症、メタボ該当者の割合において改善が見られませんでした。市民の健康を推進するためには、生活習慣の改善に繋がる取り組みのほかに、健診受診率の向上なども課題として考えられます。

本連携の目的と概要

肥満症に対して高い専門性と医療提供体制をもち、肥満症に関する研究を推進する千葉大学と、予防から治療まで幅広い領域で肥満症患者さんを支援し、国内外で官民学連携の実績のあるノボ ノルディスク ファーマ株式会社と連携し、肥満及び肥満症の理解向上や生活習慣の改善などの環境整備を行うことで、千葉市がより健康な社会を実現するモデル都市になることを目指します。

 本連携事項は以下のとおりです。
1.地域住民、保健医療関係者の肥満及び肥満症に関する理解向上に資する事項
2.千葉市国民健康保険被保険者の肥満及びその関連疾患の分析に関する事項
3.特定健康診査・特定保健指導における肥満及び肥満症に関する事項
4.子どもの健康応援に関する事項
5.その他、肥満及び肥満症対策に資する事項

1では、世界肥満デー(3月4日)に合わせて、千葉市の広報チャネル等により、市民に対し、肥満の予防や対策、肥満症に関する正しい疾患認識について啓発し、理解の向上を目指します。2では、国民健康保険のデータや特定健康診査データをもとに肥満者、高度肥満者、非肥満者の状況を把握することで、今後の施策に繋げることを目指します。

3については、特定健康診査や特定保健指導の検討を図ります。また4に記載したとおり、子どもとその保護者を対象に生活習慣の改善に繋げる取り組みや、3歳児健診についても検討される予定です。

本連携により、千葉市が健康をリードするモデル都市となり、得られた好事例を国内外に発信することで、最終的に健康に関する取り組みが全国・世界へ広がることを目指します。

肥満症 疾患解説・千葉大学の本連携における役割と期待

千葉大学 学長 横手 幸太郎 先生

千葉大学 学長 横手 幸太郎 先生

肥満・肥満症・メタボリックシンドロームの違い

肥満は余分な脂肪が身体に過剰に蓄積した状態で、日本では体格指数(BMI)≧25と定義されています。

一方、肥満症はBMI≧25かつ、以下に示した11の健康障害のうち1つ以上当てはまる場合に診断されます。

1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2)脂質異常症
3)高血圧
4)高尿酸血症・痛風
5)冠動脈疾患
6)脳梗塞・一過性脳虚血発作
7)非アルコール性脂肪性肝疾患
8)月経異常・女性不妊
9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
11)肥満関連腎臓病

日本肥満学会:第1章 肥満症治療と日本肥満学会が目指すもの.肥満症診療ガイドライン2022.ライフサイエンス出版,2022,p.1(2024年10月29日閲覧)http://www.jasso.or.jp/data/magazine/pdf/medicareguide2022_05.pdfより引用

なお、メタボリックシンドロームの場合は、ウエスト周囲長が男性≧85cm,女性≧90cm(内臓脂肪面積男女とも≧10cm2に相当)と定められており、かつ動脈硬化を引き起こす可能性が高くなるといわれている以下の条件のうち、2つ以上当てはまる人といった基準が設けられています。

1)脂質異常
トリグリセライド値 ≧150mg/dL かつ/または
HDLコレステロール値 <40mg/dL(男女とも)

2)血圧高値
収縮期血圧 ≧130mmHg かつ/または
拡張期血圧 ≧ 85mmHg

3)高血糖
空腹時血糖値 ≧110mg/dL

日本肥満学会:第3章 メタボリックシンドロームの概念と診断基準.肥満症診療ガイドライン2022.ライフサイエンス出版,2022,p.18(2024年10月29日閲覧)http://www.jasso.or.jp/data/magazine/pdf/medicareguide2022_07.pdfより引用

最近では特定健診(メタボ健診)が徐々に浸透してきていますが、肥満症の診断基準となる疾患のうち5)~11)については特定健診でフォーカスされていないため、治療が必要である肥満症を見逃すことが懸念されます。

日本における肥満・肥満症の現状と課題

日本の20歳以上の肥満者の割合は、男性31.7%、女性21.0%とさほど多くはありませんが、ここ30年で男性は増加傾向にあり、特にBMI30以上の人が増え男性全体の5%に上ります1)。さらに高度肥満とされるBMI35以上の割合は、男性1.5%、女性1.0%と男女ともこの30年間で最も高い結果です。

また、自己責任だと考えられがちな肥満・肥満症ですが、遺伝的要因、環境要因など自分ではどうしようもない要因も数多くあることから、肥満・肥満症に対して今よりも正しい理解が重要だといえます。

一方で、日本では先ほど述べたように肥満症を検出するための仕組みが不十分であることや肥満症や合併症についての実態が明らかでないこと、予防から合併症を含めた治療を提供する仕組みがないこと、肥満に対する差別や偏見があることなど、多くの課題を抱えているのが現状です。

本連携における千葉大学の役割と期待

日本での現状を踏まえて、千葉市が肥満症の課題に取り組むモデル都市を目指すべく本連携に至りました。

千葉大学は、長年肥満症とのかかわりと実績をもち、日本の肥満・肥満症の臨床と研究をリードしてきました。また、肥満症に関連する研究ではメカニズムの創出と新たなエビデンスを目指して進められています。さらに、千葉大学予防医学センターでは疾患の治療だけでなく予防にも着目し、産官学民連携を通じた健康まちづくりに貢献しています。

千葉大学の役割はこれらのさまざまな知見を活用することであり、本連携によって調査や研究の取り組みを強化することで、肥満症における医療連携体制の構築と肥満症予防の発展に繋げ、肥満症を取り巻く環境の改善と市民の健康に寄与することを期待しています。

ノボ ノルディスク ファーマ 日本と世界における官民学連携の取り組みと本連携への貢献

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 代表取締役社長
キャスパー ブッカ マイルヴァン さん

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 代表取締役社長 キャスパー ブッカ マイルヴァン さん

ノボ ノルディスク ファーマの国内外での取り組み

ノボ ノルディスク ファーマでは、変革を推進し世界中で問題視されている慢性疾患を克服するというパーパスを掲げています。その実現には薬だけではなく、予防から治療までの包括的なアプローチが必要であると捉えています。

これには官民学の連携が重要であり、ノボ ノルディスク ファーマでは以下のように国内でさまざまな自治体、大学との連携を実現し、疾患予防対策への取り組みを行ってきました。

取り組み 連携先
例1 糖尿病の発症・重症化予防の活動 千葉県旭市
千葉大学医学部附属病院
例2 糖尿病対策に関する共同研究 郡山市
福島県立医科大学

取り組み例1では、糖尿病対策地域連絡会を設立し、糖尿病の発症や重症化予防に取り組み強化に繋げられ、取り組み例2においては、研究により糖尿病合併症の発症・重症化予防の治療継続には、生活環境だけでなく疾患の正しい理解・認識が重要であることが明らかとなり、関係者への有益な情報共有に繋がりました。

また、国外では本連携にも関係する肥満症への取り組みも行われています。例えば、デンマークにおける健康的な体重実現への取り組みや、肥満症を含む慢性疾患の根本要因を対応するため世界の50以上の都市の学校、職場、医療機関と連携した取り組みなどの実績があります。また近年では子どもの肥満にも注目しており、子どもの健康促進を目指して世界6カ国での取り組みが進められています。

本連携への貢献とノボ ノルディスク ファーマが目指すこと

ノボ ノルディスク ファーマとして、これまでのさまざまな連携で得た経験や実績を生かし、健康的な地域社会の実現を目指したいと考えています。

特に、肥満症は世界中で増加している深刻な慢性疾患の1つですが、遺伝的要因や社会的要因も大きく、個人の問題として対処できるものではないといえます。これらを対処するためには、社会全体で取り組むことが重要です。

本連携において、国内外の連携実績や深刻な慢性疾患における取り組み実績の共有、肥満症患者さんを予防から治療まで支援してきた経験より、千葉市の肥満、肥満症の改善に向けた取り組みに貢献して成功事例を発信すること、さらに国内外へ普及させていくことが目指すべきことといえます。

引用文献

1)厚生労働省:令和4年 国民健康・栄養調査結果概要.(2024年10月29日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001296359.pdf

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