第7回 質的分析と結果表示
- 公開日: 2009/10/7
質的分析とは
質的分析とは、数量によって客観的に評価できないデータ(質的データ)を扱う分析のことです。質的データには話言葉や書き言葉、映画やビデオなどの画像、音楽などが該当します。
これら質的なデータを分析するのは何でしょう。統計ソフトでしょうか。統計ソフトは数字で表せる量的なデータを扱うことはできますが、質的データを扱うことはできません。質的データを分析するのは、研究者自身なのです。
質的分析が用いられる研究テーマ
質的分析は、研究者自身が書き言葉や話し言葉、画像などをよく吟味し、意味付けをしてまとまりをつくり、さらに抽象化して概念をつくり、概念のあいだの関係を見出していく研究です。そのためテーマとして適しているのは、調べたい内容そのものが漠然としているもの、データの主観性が高いものなどです。具体的には相互作用、内的体験、態度、意味などを分析するのに適しています。
以下に研究テーマの具体例を示しておきました。
1.相互作用:例)化学療法を受ける患者同士のピアカウンセリングのプロセス 2.内的体験:例)日帰り手術を受ける患児の体験過程 3.態度:例)乳房切除患者の創部に対する態度 4.意味:例)障害児を養育することの意味
質的分析を構成する共通要素
質的分析には、グラウンデッドセオリーアプローチ、内容分析、KJ法など様々な技法があります。それぞれ得意とするテーマ・分野があり、技法もそれに基づいて工夫されています。 ここではそれらに共通した技法上の特徴を紹介します。
アイディアをもつ
1.テーマ・問題設定
質的な分析を行う研究のテーマは、「調べたい内容そのものが漠然としている」ため、最初の問題意識が漠然としているのが普通です。漠然としているから先行研究は検討しなくていいという人がいますが、それは全くの間違いです。
どうしてその内容を明らかにする必要性を感じたのか、研究の背景について詳述したり、他の研究者によってそれが明らかにされているのかを文献検討したり、また、内容が明らかになったら、看護にどのように役立てられそうかなどについても考え時記述していきます。
2.対象の選定
どんな対象者からどんな方法で情報収集をしたらいいのかできるだけ綿密に計画します。
3.研究方法
調べたい内容に関わる質的データを収集するには、どんな方法が適しているのかを考えます。よく用いられるのが、質問に沿って対象者に自由に話してもらう方法(非構造化・半構造化面接法)です。
面接した内容はあとで「テキスト化」といってすべて文章に書き直すので、あらかじめ対象者に面接内容を録音する許可をもらっておくとよいでしょう。面接法の他に観察法や質問紙法などを用いることもあります。
また補助的にビデオでの撮影を要することもありますが、これらは対象者の特徴や、明らかにしたい内容によって変わってきます。また、データを収集する前に特に気をつけてほしいのですが、皆さんのもつ「主観的な癖」や「価値観」をできるだけ自覚できるようにしておいてください。ちなみにわたしにも「癖」や「価値観」があります。
わたしは自身が仕事人間であるため、仕事に関する質問は得意ですが、専業主婦の方への質問はどうも掘り下げて聴くのが苦手なのです。しかし「癖」や「価値観」は自覚することによって収集するデータや分析の質がよくなります。気をつけるようになるからです。ぜひ誰かに「癖」や「価値観」を指摘してもらえるようにしておきましょう。