第5回 パパやママの病気を 子どもに知らせる方法(前編)
- 公開日: 2011/8/16
がんなどの死に至る深刻な病気を発症した場合、その事実を子どもに伝えるべきか、あるいは伝えないでいるべきかは、重大な問題の一つです。迷いをもつ患者さんが、医師や看護師などの医療者にアドバイスを求めることも少なくありません。子どもに親の病気を伝えるときには、何に配慮し、どのように伝えたらいいのか、今回はその具体的な方法について紹介します。
伝える? 伝えない? 迷う親の気持ち
多くの専門家は、子どもには親の病気のことを知らせるべきだといいます。子どもは、大人が考える以上に、「強い心」と「理解する力」をもっていて、家族の闘病という状況で自らの力を発揮するには、まず何が起こっているのかを知る必要があるからです。
一方で、「子どもを不安にさせる」「理解できないから」「悩ませたくない」として、病気のことを知らせないでおこうと考える親もいます。
しかし、正しい情報を知らされていない子どもは、いつもとは違う親の様子や生活を敏感に感じ取り、大きな不安を抱えることになるのです。しかも、事態を悪いほうに捉え、原因は自分にあると考えてしまうことも少なくありません。
子どもに伝えたほうがよいとされる理由
実際、私のところには、「子どものころ、親ががんだと教えてもらえないまま、亡くなったことが、とてもつらかった。その思いは今も残っています」というような声が、メールや電話などで多く寄せられています。中には、事実を隠していた親や親族に対して、成人した今もなお悪感情を抱いているという人もいます。
「子どもを守るため」として優しい情報だけを伝えている場合、ある日突然に親の死を迎えることになった子どもは、大きく動揺します。事実を伝えないことは、子どもを守ることとは真逆のことになるのです。
それは、治癒する可能性の高い病気であっても同様です。治療の時期が過ぎれば、それ以前と変わらない生活を送れるとしても、子どもは不安を抱えます。むしろ治療が可能な病状であればなおさら、子どもに伝えて安心させることが大切です。
ただし、精神疾患やHIVなどの感染症、子どもが原因となった事故などの場合は、問題が複雑になるため、前述とは異なる個別的で慎重な対応が求められます。
子どもに話したいという親の準備が整うことが前提
子どもに情報を伝えるには、患者さん自身が病気を受け入れていることが前提です。深刻な病状であるほど受容は困難かもしれませんが、親の動揺が大きい状態では配慮が行き届かず、逆に子どもを混乱させてしまうことにもなりかねません。
また、患者さんの中には、子どもの口から他人に病気のことが漏れるのではないかと危惧する人もいます。病気のことは、できれば早いうちに子どもに伝えたほうがよいのですが、子どもに口外を禁じることはできません。病気のことが人に知られたくないという気持ちがあるうちは、無理に話すことはないと思います。
患者さん自身が話をしようと思えたとき、そのときが心の準備ができたときです。心の準備が整うまで、時間をおくことは少しも問題ではありません。患者さんにとっても子どもにとってもよい状態で伝えられることが、一番大事なことであり、遅すぎるということはないのですから。
(『ナース専科マガジン』2010年8月号より転載)
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